13
乾いた木を地面に放り投げ、手についた土をパンパンと払う。
「ふぅ・・・」
地図を開き、道のりを確認する。
「長いな。この距離なら・・・後10時間・・・もう少しかかるか?」
俺は地図を見ながらウィングロストへの道のりを逆算する。
竜人にあえば・・・影が俺の名前をもう理由もわかるだろうか。
クロークスの姉貴のこともある。
ドールミストを満たす。包む螺旋の霧と言うのはなんなのか。
何か大切なことを忘れている気がする。
「ん・・・」
すると背後から声がした。
「なんだこれ・・・紐?」
声の主はクロークスだ。
「目、覚ましたか。悪いが縛らせてもらってる」
俺の言葉にクロークスは目を細めた。
「・・・そうかよ」
なんとも不服そうな声がクロークスから漏れ出す。
だが、彼は自分の体を確認した。
手当された傷に、フィーニスの側で眠っていたのだ。
普通に考えたらこの状況は異常だ。
「一度殺そうとした人間をそばに置くのか?」
クロークスはそう呟いた。
赤等級の冒険者の彼は、いまの状態でもきっとフィーニスを殺せる。
俺はクロークスのそばにしゃがみ込み、顔を見る。
「フィーニスを殺せば、俺がお前を殺す」
「・・・出来るのか?」
クロークスはそう呟いた。
「あぁ。・・・確実に殺せる」
俺は立ち上がり、乾いた木を指差す。
「落ち着いたら紐を解いてやる。 そしたら最初にお前がやることは謝罪じゃなく着火だ」
俺が指差す方向を見て、クロークスの口角があがる。
「そうか・・・。落ち着いた。 紐を解いてくれ」
もう少し時間が経ったら言い出すかと思ったが、クロークスはあっさりと言った。
ため息を漏らしながら短剣で紐を切り裂く。
クロークスは手首を凝視しながら、小さく舌打ちをした。
「で、恩恵は?」
クロークスがそう言った。
「まだ気になるのか?」
「赤等級を凌駕するまでの恩恵は見たことがない。別に知ったからってどうこうするわけじゃねぇよ」
クロークスはそう言って、俺を睨む。
まだ教えられない・・・
だが、彼らを信用していないわけでもない。
俺は意識を失っているフィーニスを見つめた。
「彼女が目を覚ましたら話してやる」
「次は本当なんだろうな?」
次は本当。
真実の恩恵を教えてくれるのかと、そう言っているのだろう。
「・・・・・」
俺は何も言わないでいると、クロークスが歩き出し、背後でパチパチっと音がして暖かい火が生まれる。
「・・・姉貴だ」
「姉貴?」
クロークスが火を見つけながらそう言った。
俺はその言葉に、まるで繰り返すように返答する。
「姉貴を見つけたら・・・俺はこのパーティを抜ける・・・」
クロークスは静かにそう呟いた。
「・・・・ん・・・いった・・・」
その時、フィーニスがゆっくりと目を覚ます。
「フィーニス。目が覚めたか」
「ダリア・・・そうだ! クロークスは⁉︎」
勢いよく起きあがろうとするフィーニスを制止し、クロークスを指差す。
フィーニスは安堵のため息をした後、口を開いた。
「クロークス! アンタちゃんと謝罪はしたの⁉︎ ダリアはアンタのためにウィングロストを目指してる!アンタのためにドールミストを目指してる!アンタのために螺旋の霧を超える手法を探してる!それをこんな・・・!」
すると、クロークスは深く頭を下げた。
「悪かった。すまない」
「・・・それだけ?」
フィーニスが何か嫌なものを見るような冷たい目でクロークスを見つめる。
「私は・・・もうアンタを信用しないから」
そう言ってフィーニスはクロークスから視線を逸らした。
ギスギスとした空気が流れ、重くまとわりつくような静寂が身を包む。
そこで、俺は口を開いた。
「・・・俺の恩恵の話をしよう」
その言葉に、クロークスが驚いた顔をする。
「マジでいいのか?」
「お前が知りたいって言ったんだろ。 条件通り、フィーニスも目を覚ました」
そういうと、クロークスは真剣な顔になる。
「お前らから見て、俺は強いか?」
俺のその問に、クロークスとフィーニスは強く頷いた。
「俺がいうことじゃないが、俺は赤等級。銅のダリアに負けるのは異常だ」
クロークスはため息を漏らした。
パチパチと木が鳴き、あたりに小さな火の粉が舞う。
「銅級ってのは間違ってない。多分どんな場面も恩恵の力を借りているから、俺は等級が上がらないんだと思う」
俺は自身の腕輪を見つめながら言った。
「俺の恩恵は『激昂』」
「激昂・・・」
俺が言った名前にクロークスは首を傾げ、フィーニスは小さく復唱した。
「簡単な話、怒ったら強くなる」
「それだけか?」
クロークスがまた何かを疑うような眼を向けてきた。
「それだけだ。 身体能力の全てが飛躍的に向上する。だが、通常時は銅級となんら変わらない」
俺の言葉に、クロークスは少し考え頷いた。
「・・・あぁ・・・わかった。そう言うことにしといてやる」
クロークスがそう言いながらフィーニスに近づく。
「ダリア。もう出よう。すぐに夜があける。 フィーニスちゃんは俺が担ぐから」
そう言ってフィーニスに手を伸ばす。
直後、パシッと音がしてフィーニスが立ち上がる。
「・・・1人で歩けるからお構いなく」
そう言ってフィーニスが歩いてきた。
クロークスはため息を漏らし、ゆっくりと立ち上がる。
「・・・行こうか」
遠くの空が白くなってきた頃、俺たちは歩き出した。
嫌悪と疑いが生まれ、ギスギスした空気が纏いつき、ついてくる。
ゆっくりと歩き出したクロークスは、まだ火が付いていた焚き火を強く踏み潰し、火を消した。
まるで、何かが終わることを告げているようにも見えた。
初めてましての方は初めまして!
いつもご覧くださっている方はお世話になっています鬼子です(^^)
初めての長編と言うことで試行錯誤しながら執筆させていただいています。
まだ日が浅く、誤字脱字があるなかも根気よく見ていただいてる読者様には頭が上がりません( ; ; )
最近はブックマークをしてくれる方もいてくださって、確認するたびに歓喜しています。
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