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ShadowSraid  作者: 鬼子
愚者共の選択編
44/98

10

 ゆっくりと転がるローザの頭。

 映し出された顔は、恐怖より驚きの方が強いような、そんな感じだった。


 巨体の影はローザの頭を持ち、眺める。


「・・・・・・、・・・・・・・?」


 何かを呟き、こちらを見つめる。


「お前ら・・・一体なんなんだ⁉︎」


 俺が影に叫ぶと、影は少し考え口を開く。


「わ、・・・わした・・・いや、違う。私たちは魂を集めている」


 やはり俺たちの言語を理解できているのか?

 影はしっかりと会話をすることができる。


「この・・・女の名前は?」


 影がローザの頭を凝視しながらそう呟いた。


「教える義理があるか?」


 怒りを抑え・・・ゆっくりと呼吸をしながら会話を続ける。


「これが私の・・・魂か? 私に似ず綺麗な顔だ」


 そう呟いた影をにらみ、疑問が生まれる。

 私に似ず? そもそも、体型や声も全てが違うだろう。


 何を言っているんだ。


「ダリ・・・ア・・・」


 ガサガサと背後から血塗れのクロークスが現れる。

 あの一撃で身体のほとんどを故障させたか。


 だが、目の前に広がる惨劇を見てクロークスの目が開く。


「・・・ローザちゃん!」


 クロークスがローザの名前を呼ぶと影はローザの頭地面に放り投げて、足で簡単に潰した。


「何してんだ・・・おまえ・・・」


 クロークスが低く、ゆっくりと呟いた。

 影はこちらを見て、ニヤリと笑う。


「やはり・・・私の目的の魂・・・だ」


 話慣れていないのか、頭を描きながら少しずつ話す。

 だが、影はため息をつき、元の話し方に戻した。


「・・・・・・・。・・・・・。・・・・・・!」


 どこの言葉かわからない言語を口走り、森の中に姿を消す。

 目的の魂を入手したからか、もう俺たちに用はないのだろう。


「待てよ!」


 クロークスが叫ぶが、すでに姿は見えなくなっていた。


 日が登り朝日が差し込む。

 視界に飛び込んできたのは、赤く染まった地面だった。


「クロークス・・・一度戻るか・・・?」


 俺は赤く染まった地面を見つめながら言った。


 村に行く依頼が達成出来ない・・・

 俺たちは寄り道しなくてもいいわけだ。


 だから、クロークスが大丈夫と言うのならこのまま進みたい・・・


「俺は大丈夫だ・・・でも」


 クロークスはそう言いながら血の中をバチャバチャと歩き、原型のないローザの前で座り込み、服を漁る。


「・・・何してる・・・?」


 俺がそういうと、少し離れたところからフィーニスが歩いてきた。

 心配そうにクロークスを見つめている。


「あぁ、あった」


 クロークスがそう言って持ち上げたのは、血に塗れた紙だった。


「それは?」


「村までの地図だ。 ・・・ウィングロストの方向も描いてある。 多分、依頼が完了次第渡すつもりだったんだ。 報酬としてな」


 クロークスがため息を漏らしながら言った。

 

「そんなバカな・・・」


 依頼を受ける前のローザの態度はそんな感じではなかった。

 ありえない。


「馬鹿もなにも・・・ほら」


 そう言ってもう一つ出したのは、地図だ。

 地図が2枚。

 それも、この森とウィングロストが記載されている。


 片方を報酬に、片方は自分用にするためか。


「なぁ、ダリア。残った食料だけでも担いで村にいかねぇか」


 クロークスはそう呟いた。


「言うと思った・・・そうか」


 馬車ではなく担ぎながら・・・

 体力は消費するが、馬車よりは早い・・・


 残された地図を頼りに走ればいいだろうか。


 クロークスの背中は、まるで子供のように小さく見えた。


「分かった。行こう。だが今すぐだ。 クロークス、体が痛いとか騒ぐなよ」


 俺がそういうと、クロークスは勢いよく立ち上がった。

 まだ塞ぎ切ってない傷口から雫が流れ、地面に落ちる。


「任せろい!」


 そう言って動きだす。

 馬車に戻り、水や食料を担ぎ出す。

 たった3人だからか、あまり量は運び出せなかった。


「走るぞ」


「分かったわ」


「あいあいさー」


 俺の一言に全員が頷き、走り出す。


 早朝から動き出し、村についたのは太陽が真上になる頃だった。


「よし・・・ここが村・・・か。ついたぁ」


 重い荷物を持ちながら6時間ほど走ったか、もう少しだろうか。

 足が痛み、震える。


 村の前で座り込んでいると、子供がこちらを見ているのに気づいた。


 俺は何も言わずに手を振る。

 直後、大人が何人か現れた。


「おや、冒険者さんではないですか。こんなとこまで、何かありましたか」


 若い女性がはじめに話し始めた。


「はぁ・・・物資を届けにきた。 カバンに入ってる。悪いが、これで全部だ」


 俺は息を整えながらそういうと、村の住人は顔を合わせた。


「まぁ、そんな・・・ありがとうございます! 最近は村の周りに魔物が多くて・・・」


 そう言いながらワイワイと話す。

 だが、突然少年が呟いた。


「今日は髪がキンキンのお姉ちゃんじゃないの?」


 その瞬間、空気が凍りつく。

 誰のことだろう。


 その言葉を聞いた女性が話し出した。


「すいません・・・いつもならローザさんという方が物資を届けてくださるんです」


 子供が放った言葉をフォローするように女性は苦笑しながら言った。


「いつも?」


「はい、もう何ヶ月もです」


 アイツ・・・

 そんなこと言わなかっただろう。


 誰もいない。

 私しかいないって言ってたじゃんか。


「次に会う時はお泊まりして遊んでくれるって言ってたよ?」


「そうだねー。忙しいのかもしれないねー」


 少年の何気ない呟きが刺さる。

 そんなことは気にせずに女性は会話を繋げていた。


 聞いてないぞ、ローザ。

 周りの音が遠くなりめまいがする。


 あぁクソ。

 

 ローザ・・・・


 そしてまた一つ。

 自身の奥深くに黒い魂がゆらりと生まれた気がした。

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