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ShadowSraid  作者: 鬼子
愚者共の選択編
43/98

9

 ゆっくりと歩きながら馬車に戻る。

 消えた火を再度点火し、暖をとる。


「あぁぁぁぁつがれたぁぁ」


 クロークスがそう言いながら地面に寝転んだ。


「汚いぞ」


 白い服が汚れるのはあまりに酷い。

 クロークス本人は気にしていないが、かなりいい材質なような気がした。


 すると、左側に広がる闇から草を踏む音が響き、顔を向ける。

 クロークスも起き上がり警戒体勢に入る。


「・・・終わった? こっちにゴブリンは来なかったけど」


 そう言いながら現れたのはフィーニスだった。

 ローザはその後ろを付いてくるように現れた。


「あぁ、終わった。かなりきつかったけどな」


 俺はそう呟き、ため息を漏らす。


「あ!」


 突如としてローザが大きな声を出す。

 何事かと驚いて確認すると馬車に目を向けていた。


「物資が・・・」


「仕方ない。一度きた道を戻って再度調達してから向かおう。 オーガも倒したし、数日は強い魔物が現れないはずだ」


 そう言いながら乾いた木を火の中に投げ入れてみる。


「そんな事してたら間に合わなくなっちゃうわ」


「だが、少量の物資じゃ生きられない。 それに、そいつらだって自分たちで生きる術はあるだろう、数日遅れるくらいなら問題ないはずだ」


 そういうと、彼女は悲しそうに馬車を見つめながら肩を落とした。


 あの襲撃があって、危険なことを理解しただろう。

 いや、知っていたのか。

 だから冒険者を護衛に雇い、危険で長い道のりを歩くのか。


「まぁそんなに落ち込むな。 それにしても、どうしてそんなに急ぐんだ?」


 少し気になっていた質問を投げる。

 危険を知っているのはわかったが、村を優先にする彼女の姿勢には少し疑問があった。


 自身が死んで仕舞えば物資は届かない。

 それでも突き進もうとする彼女には、何かしら大きな理由があるのだろうか。


「あぁ、それはね・・・私しか行かないからよ。誰だってこんな長い道のり嫌でしょ?」


 彼女は首を振りながらそう言った。

 だからって命をかけるものだろうか・・・


 いや、誰も引き受けないなら、この運搬依頼は独り占めができる。

 距離も長く過酷だからか、報酬もそれなりにいいのだろう。


 考えてみれば、別に難しい理由でもなかった。


「だからね・・・」


 彼女がさらに話を繋ごうと口を開いた瞬間、彼女達が現れた場所とは逆の方向から足音がした。

 ゆっくりと確かな足音。

 一歩一歩近づく足音に、俺とクロークスは立ち上がり闇を凝視する。


 短剣を抜き、構える。


「な、何?」


「わからない・・・暗すぎる」


 ローザが唾を飲み込み恐る恐る呟いたが、視界の悪い状況では判断ができないと、俺はそう答えた。


 星は綺麗に光るが、森だからだろうか。

 木に立派に生え揃う葉が、星々の光を遮り闇を作る。

 肉眼では見えない・・・

 魔物か、野生生物か。


 どちらでも脅威になるが、どうせなら後者の方がいい。

 そちらの方が何倍も楽だ。


 だが、姿を表したのはそのどちらでもない何かだった。

 人の形をしているが、丸々と太り、大槌を担いだ影だ。

 2メートル以上はある。


「影・・・⁉︎なんでここで・・・!街以外では見た事ないのに⁉︎」


 そう、皇都、帝都、オアシスグレイス、そして受付嬢の故郷があった場所。

 どれも人が大勢いる場所でしか見たことがないのだ。


「影か・・・任せな! 俺は数体を1人で追い払ってる!」


 クロークスは全身に雷を纏い、光の速さで影に近づく。

 見えない、目で追う事は不可能だ。

 だが、クロークスは何体も1人で相手した。今回の影は1人、容易にこの状況を打破できるだろうと、俺は考えた。


 影がゆっくりと大槌を掲げる。

 狭い場所で扱うからか、大槌が木に当たる。

 だが、動きが制御されるのではなく、ミシミシと音を立てて木が折れた。


 勢いはない。

 つまり、押しただけで木を折り、切断したことになる。

 

 何かが違う。

 やばい・・・そう思った時には遅かった。


 振り上げた速度より何十倍も早い速度で大槌が振られ、クロークスの体を捉え、打つ。


 バギっと異常な音がして、キラリと光るクロークスは数十メートルの距離を飛んだ。

 凄まじい衝撃と、圧で木が揺らぎ、細い枝は折れ、葉は舞った。


 奴は俺たちを睨み、指を差す。


「・・・・・・?・・・・・・」


 またわからない言語。

 だが、指を差しているからか、その方に目が引き寄せられる。


 後ろにはフィーニスとローザ

 俺からの距離や角度からではどちらを差しているのかわからない。


 瞬間。


「ローザ!逃げなさい! 今すぐにここから離れなさい!」


 森の中にフィーニスの声が響く。

 刹那、強く風が吹き、俺の黒い髪が視界で揺れ、フィーニスの茶色の髪がなびき、ローザの身体は原型が無いほどに潰れてしまう。


「なっ・・・・」


 あの巨体からは想像できないほどの俊足。

 赤い雫が宙を舞い、星々の光を反射する。


 キラリと光り、潰れた胴体から衝撃で切り離されたローザの頭部が地面を転がる。


 綺麗な金色の髪が土に汚れていくのを見つめながら、止まっていた呼吸を再開し、息を飲んだ。


 

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