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ShadowSraid  作者: 鬼子
愚者共の選択編
41/98

7

 狼に跨ったゴブリン達が数体現れる。


「ゴブリンライダー・・・」


「ゴブリンライダー? ただのゴブリンじゃないのか?」


 俺の呟きに、クロークスが質問を返してくる。


 そう。

 正解だ、ただのゴブリンで、ただの狼だ。

 コイツらは個体でも銅級で、ライダーになっても銅級。

 正直弱くて脅威にもならない。


 報酬は安く、駆け出しなら必ず通る道だ。


 だが、問題はそこじゃない。


「あぁ、ただのゴブリンだよ。でもな・・・問題はそこじゃない。 ゴブリンだけじゃ狼を使役できない。 手引きしたやつが必ずいる。」


 俺はそう呟いた。

 でも、別にこれも普通なのだ。

 勉強をすれば扱いが上手くなる。

 学習したゴブリンは他のゴブリンに知識を伝え、簡単に伝染していく。


 だから、普通のことでありえない話じゃない。

 そこまでは。


「なら普通じゃん」


 クロークスは雷を纏いながら軽く呟いた。


「あぁ、ゴブリンがライダーになるのは当たり前だが、ここまで徒党を組めるのはありえないんだよ!」


 俺がそう言った瞬間、ゴブリンたちの背後から大きな影がゆっくりと現れる。


 体は大きく、2メートル弱だろうか。

 茶色い毛並みで、筋肉質の大きな体に、口から溢れてしまうほどの唾液が地面に滴る。


「・・・オーガ・・・」


 オーガはフィーニスを視界に入れた瞬間、激しく興奮して地面の草を掴み腰を振り始める。

 だが、腰を振りながらもローザを視界に入れる。


 女が2人。

 大好物の獲物を見つけ、軽くステップを踏みながら地面を叩く。


 手だけでも130センチほどはあるだろうか、握力が強く人間くらいなら片手でミンチにできるのだ。


「オーガ・・・銀等級だぞ・・・」


 俺のその呟きにクロークスはニヤリと笑う。


「ダリア、お忘れかな?俺は赤等級だぜ? 任せなって」


 自信満々にいうが、オーガは特殊な等級の持ち主なのだ。


「一撃で殺せるか?」


 クロークスに問う。


「え?一撃?」


「あぁ、真剣な話だ」


 オーガを睨みながら、クロークスに投げかけた。


「・・・いや、一撃って言われると・・・」


「なら無理な可能性がある。 あいつは珍しい変級型でな。怒り状態に入ると、皮膚が赤く変色する。

筋力が上がり、皮膚はあらゆる武器を弾くようになる・・・その状態のオーガは赤等級に相当するらしい」


 できる事なら逃げたい・・・

 だが、フィーニスとローザがいる。

 特にローザ・・・冒険者のように素早く走り、身を隠す術は持ち合わせていないだろう。


「・・・フィーニスとローザを逃がしたい」


「オーガは俺たちで?ゴブリンライダーはどうする?」


 俺の提案にクロークスが小さく話す。


「ゴブリンライダー数体ならフィーニス1人でもローザを守り切れる。 オーガは俺たちで止める。 できるなら、彼女達が逃げ次第俺たちも撤退だ」


 その提案に、クロークスはゆっくりと頷き、足から徐々に雷を纏う。

 バチバチと音を立て、徐々に出力をあげているのか、綺麗な白髪がふわふわと浮き出した。


 赤等級と聞いて、最初から練り上げてるのか


 俺もゆっくりと短剣を抜き、構える。

 クロークスと目を合わせ、ゆっくりと頷く。


 瞬間、アオーンと狼の声が戦闘の合図のように夜空に響いた。


「フィーニス! ローザを連れて出来るだけ離れろ!」


「・・・わかった!」


 フィーニスは戸惑いながらも承諾し、ローザを連れて走り出す。


「積荷が!」


「積荷と命、どっちが大事⁉︎」


 彼女たちの姿が暗い森の中に消える頃、オーガは怒りで興奮し、外皮が徐々に赤く光り始める。


「女が逃げただけでブチギレかよ・・・短気すぎんだろ・・・」


 クロークスがそう呟きながらオーガを見つめた。


 外皮が赤くなり、体表に現れていた汗などが一瞬で蒸発したのか、多量の煙がオーガから溢れる。

 地面を強く叩き、よだれをたらし、こちらを睨む。


「逃げれると思うか? クロークス」


「・・・いや、あの顔は逃してくれないっしょ・・・」


 瞬間、オーガが腕を振り、木を破壊する。

 破壊された数本の木がそのままの勢いで射出された。


「回避!」


 俺の合図と共に回避するが、瓦礫でオーガの姿が見えない。

 デカい図体の割に素早く重い一撃は、赤等級にふさわしい。


 視界に赤く光る拳が見える。

 足が地面から離れている俺は回避が間に合わない、振り抜かれる大きな拳に手を触れ、衝撃を体に移すように回避する。


 だが、俺を空振った拳はクロークスに直撃した。

 

 オーガは確実に俺を狙っていた。

 だが、回避された瞬間にターゲットを変更したのだろう、確実に知能があることの現しだった。


 重い音を立てながらクロークスの身体が浮き、弾き飛ばされる。


 数メートル、木を破壊しながら森の中を飛んだ。

 物体は普通、何かに当たればそれだけ勢いが弱くなるが、それでも数メートル・・・


「・・・大丈夫かクロークス!」


 瞬間、視界にパチパチと雷が入る。

 それは線のようになり、オーガの顎蹴り上げた。


「あいよ、大丈夫ぅ!!」


「良かった!」


 流石に光の速度にはついてこれないか!


 頭を蹴り上げ、攻撃を躱しながらもクロークスは技を叩き込んでいく。


 ドムドムと、まるでゴムを叩くような音が響いていた。

 生物の体から出るような音じゃない。

 なんなんだこいつ。


 数発、数十発は確実に叩き込んでる。


「マジかよこいつ・・・」


 息を荒げたクロークスが攻撃をやめ、呼吸を整えながら呟いた。


「・・・無傷か?」


 無傷。あれだけの猛攻をしっかりと受け切ったのだ。

 打撃に強いのか?


「クソッタレ!」


 俺はそう叫びながらナイフを素早く投げる。

 オーガの方に当たったナイフはカキンッと音を立てて地面に落ちる。


 オーガは地面に落ちたナイフを踏みつけにして、粉々に砕いた。

 

 直後、俺たちを静かに睨み、ニヤリと笑って見せたのだ。

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