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ShadowSraid  作者: 鬼子
愚者共の選択編
40/98

6

 赤かった空が徐々に暗くなる頃。


「そろそろ野営の準備をするか」


 そう言いながら近くの枝を適当に拾いながら歩く。


「野営かぁ。初めてだな」


 そう呟いたのは意外にもクロークスだった。


「初?本当に言ってるのか?」


「まぁ俺は速度が早いし」


 あぁ、雷纏の効果か。

 実際、野営はしたことがなくても、夜を駆け回ってはいそうだな。


「そうか、ならいい経験になる。 ローザ、野営をする。お前は馬車の中にスペースを作って、そこで眠れ。俺たちは交代で監視をする」


 歩きながら段取りを軽く説明する。

 ローザが頷き、前を向いた。 ふわりと金色の髪がなびき、顔を出してきた月の光に照らされキラキラと光る。


 気にしていなかったが・・・

 綺麗な髪だな。


 周りが暗くなり、野営の準備を整える。

 木や葉を一点に集め、ポーチに手を入れてある道具を探す。


「・・・えっと」


 あれ。なかなか見当たらない。


「やべ・・・火打石忘れたかな」


 と、野営には欠かせない道具を忘れてきてしまったらしい。

 どうしたもんか・・・


 ふと、クロークスが目に入る。

 雷・・・使えたりしないかな。


 生物の命を瞬間的に奪える雷・・・まぁ、炎と関係あるのかはわからないけど


「クロークス、指先で雷生み出せる?」


「うぇ? まぁ出来るけど、どしたの」


 暗くなり、チラホラと星が出てきた空を見ていたクロークスが間抜けな声を出しながらこちらを向く。


「いや、火をつける道具を忘れたみたいで。ちょっとね、出力絞って、ちょーと」


「うぃ、任せんしゃい。 ちょっとなちょっと。 ちょーちょちょ・・・」


 変な鳴き声を出しながらクロークスが指先を木に近づける。


 バチンと、おおよそ人体から鳴ってはいけない音を奏でながらも薪に火をつけた。


 赤い炎が徐々に広がり、周囲を暖かくする。


「おーついたついた」


「だから俺なんよなぁ」


 意味がわからん。

 言葉として成立しているのかよくわからない話をしながら、時間を過ごす。


 軽く話をしながら、腹に物を入れ、各自交代制で睡眠を取る。


 あれから数時間。

 完全に世界が闇に包まれ、ローザもフィーニスもクロークスも寝息を立てる。


 炎を絶やさぬように乾いた枝を定期的に焚べ続け、朝日を待つ。

 あと何時間ほどだろうか。


「・・・ふぁー」


 炎を見つめ、ぼーっとしていた意識に気の抜けた声が突き刺さる。

 音がなった方を見ると、クロークスが目を擦って歩いてきていた。


「どうした?交代にはまだ早いぞ」


「いや、地面じゃなかなか寝られなくてなぁ」


 そう言って、炎を挟むようにクロークスは向かい側に座った。

 静寂が流れ、パチパチと木が鳴く。


 先に口を開いたのは、クロークスだった。


「ダリアは、なんでこの冒険を始めたんだ?」


「・・・奪われたものがある。その犯人を探して、復讐するためかな」


 そういうとクロークスは目を細めた。


「そこが終点?」


「多分な・・・まぁわからん」


 乾いた木を焚べながらクロークスの質問に答えながら過ごす。


 また静寂が流れた。

 俺は続きを話すように口を開く。


「影を追ってる。 突然現れて皇都を壊滅させた。知り合いの故郷に現れ、その場所を地図から消した。知り合いを殺された。だから・・・影を追ってる。 失うまでは、そんなに大切な人だとは微塵も思わなかった、ただ一緒にいて、仕事仲間で、たまに飲みに行く。そんな関係だって・・・」


 そこで俺の言葉は止まってしまう。

 それ以上は何も浮かばなかった。


「あぁ、わかるよ。姉貴もそんな感じだ。いつまでもそばにいて、これから先もずっと一緒にいるんじゃないかって」


 クロークスは何度も小さく頷きながら話し始めた。


「行方がわからなくなった理由すら知らない。どこにいるのかも」


 クロークスは溜息を漏らす。


「お姉さん、見つかるといいな」


「あぁ、そうだな」


 また静寂が流れてしまう。

 気まずい空気が流れ、たまらず話を続ける。


「お姉さんはどんな人だったんだ?」


「優しい人だった、よく笑ってた気がする。それで・・・強かった」


 俺は首を傾げる。

 強かった・・・とは、精神的に、ということだろうか。


「俺に武術を叩き込んだのは姉貴だ。昔は冒険者だったらしい。俺が生まれて少ししてやめたって聞いた。 でも、それ以外は冒険者の話はしてくれなかった」


 そう言って、クロークスは拳を作る。


 瞬間、フィーニスが飛び起きる。

 俺たちは突然目を覚ましたフィーニスに驚き体が跳ねた。


「フィーニス?」


「フィーニスちゃん?」


 俺たちの声には反応がない。

 フィーニスは頭を動かし、何かを探るように鼻を使い匂いを嗅ぐ。


「何してるんだ?」


 クロークスと顔を合わせ、首を傾げる。

 直後だ。


「・・・おっ・・・おぇぇぇぇぇ」


 フィーニスが吐いた。

 俺はフィーニスの近くに駆け寄り、背中をさする。


「だ、大丈夫か?」


 獣人には合わない食べ物でもあったか?

 そんな物あるのか?


 毒? 何かに刺されたとか、噛まれた?


 可能性がありすぎて潰しきれない・・・

 

「ね・・・寝ゲロ?」


 クロークスが若干引き気味で小さく呟いた。

 俺は背中をさすりながらクロークスを睨む。


 冒険者で精神力があるからとは言え、女の子だ。

 そんな言葉を使うんじゃない。


 全てを吐ききったフィーニスがゆっくりと顔をあげ、息も絶え絶えに言った。


「く・・・くざい・・・臭いー」


「え? 臭い・・・何が?」


 俺が問い返した瞬間、アオーンと狼の遠吠えらしき声が響く。


「クロークス。ローザを叩き起こせ」


 俺が指示すると、すぐに頷いて馬車に近寄る。


「フィーニス。臭いのは間違いないか?匂いの方向は?」


 そう問うと、フィーニスは視線すら動かさず、後ろを指差す。


 そっちは、狼の遠吠えが響いた方向だ。

 クロークスが駆け寄ってきて、不思議そうに俺たちを見つめる。


「なになに、何が起こるの?」


「魔物だ」


 クロークスは俺が見つめる方角を見つめる。


「魔物?」


 クロークスがそう呟いた瞬間に、ガサガサと森の中から魔物の群れが姿を現す。


「ウッ・・・くっさぁ・・・・!!!」


 半ば怒り気味のフィーニスが口に含んだ水を行儀悪く勢いよく吐き出し、睨みつける。


 狼が唸り、こちらを睨む。

 あぁ・・・やっぱりコイツらか・・・


「ゴブリンライダー・・・」


 ゴブリンの体臭は酷く、鼻がいいフィーニスは寝ていてもそれに気づいたのだろう。

 狭い森の中。大多数のゴブリンと戦えるか?


 唸り声が響き、悪臭が漂う暗闇の中、さらに別の大きな足音が響いた。

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