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俺は馬車に乗っている積荷を調べる。
「特に大事な物とかなんだ。食料以外には何もないのか?」
「ないわ、食料だけ。だから、最悪激しく襲われても損失は少ないかな。 まぁ襲われないことが1番だけどね」
ローザはそう言った。
馬車の荷台から降り、クロークスとフィーニスに合図を送る。
「さぁ、進もう」
すると、馬車はゆっくりと動き出した。
草を踏み締めながら森の中を歩く。
森とは魔物の棲み家だ、だが、昼間の内は夜に比べると活発化しない。
今のうちに進みたいな。
「フィーニス。どうだ?」
「今のところは大丈夫そう」
フィーニスは荷台の屋根の上に座らせている。
理由は、彼女は俺より耳がよく、鼻がきく。
獣人だからだろう。索敵には向いている。
馬車を挟むように俺とクロークスは歩き、周りを警戒する。
静寂の中にガラガラと車輪の音が混じる。
乾いた土、草を踏み締めながら、視界の悪い森の中を進む。
少し進むと、フィーニスの雰囲気が変わる。
「ん?」
「フィーニス、どうした?」
フィーニスの耳がピクピクと震え、目は上空を捉える。
「かなり多い、群れ・・・」
「群れ?空の群れなら・・・ハーピーか?」
瞬間、バサバサと翼の音が耳に入る。
女性らしい叫び声と、女体に翼が生えた茶色い姿が視界に入る。
「ハーピーだ!」
全員戦闘態勢に移行する。
だが、遠距離武器を持ち合わせていない上、狭い場所では獣化ができない。
そのせいでフィーニスの恩恵。『服従』は利用できない。
空中にいるハーピーをどう引き摺り下ろすか・・・
「ダリア! どうする、戦うのか⁉︎」
クロークスが俺に指示を仰ぐ。
狭い空間、雷は扱えるのだろうか。
「クロークス!雷でどうにかできたりしないのか⁉︎」
俺がそういうと、クロークスは顎に手を当て考える。
やはり上空に対しての攻撃手段はないのか?
瞬間、クロークスの身体に雷が纏われる。
バチバチと音が鳴り、空気中に光が舞った。
ゾクリと悪寒が身を包み、何かを感じ取る。
見たことのない風景、現象だが、本能が離れろと脳に電波を送る。
「フィーニス!馬車に乗れ!」
俺はフィーニスにそう指示しながら馬車に乗り込む。
「ローザ! 馬車を全力で走らせろ!」
合図と共に馬車が動き出し、クロークスから離れる。
ハーピーは肉食。特に人肉を好む。
1人きりになったクロークスを捉え、こちらには一体も追って来なかった。
狭い森を数十メートル。
クロークスの姿が視界から外れた瞬間、バリバリと大きな音がなり、大気を揺らした。
鳥が飛び立ち、静寂が流れる。
数秒後、クロークスが姿を現した。
「おまたー」
「何かするなら事前に言え!」
軽く、何事もなかったように現れたクロークスに俺は言った。
「いやぁ、失敬失敬。 思いつきだし、成功するかわからないから別にーって感じ」
「それでもだ!ローザ!馬車の速度を緩めていい!」
馬車の速度を落とし、ゆったりと歩き始める。
「で?結局何したんだ?」
「ん?あぁ。オアシスグレイスでダリアが失神してたのを見て、ピンっとね。 奴らの身体にも雷が映らないかなぁって。 接触する瞬間に放出して、一網打尽よ」
と、得意げに言ったクロークス。
俺の本能が叫ばなかったら、巻き添えを喰らっていたかもしれない。
馬車から降り、また警戒に戻る。
赤く染まる夕空を見上げながら溜息を漏らした。




