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無事に帝都に着き、長い通路を歩く。
「ねぇ、変じゃない?」
「大丈夫だ」
獣化を解除し、人の形に戻ったフィーニスは自身の身なりを気にしていた。
「そう?それならいいけど」
帝都と砂漠を繋ぐ一本の通路を歩き数分・・・
やっと出口が見える。
外は暗いのか、出口の先はよく見えない。
出口に近づき、冷たい風が頬を撫でる。
「よし、帝都に到着!」
そう言って帝都の敷地に足を踏み入れた瞬間、誰かの気配を感じる。
街灯はある。
外は暗いが、見えないわけじゃない。
深くフードを被ったローブの男。
そいつはまさしく、俺に依頼をしてきた人物だった。
「兄ちゃん・・・生きてたのか⁉︎」
「あぁ、かなり厳しい旅だったけどな」
情報屋の男は俺の姿を見るなり驚いた表情を浮かべた。
それはそうだ、オアシスグレイス。
フィーニスとクロークスがいなかったら確実に死んでいただろう。
そして、情報屋の男もそう思っていたはずだ。
「依頼の調査。やってきたぜ」
「まさか、銅級が生きてるなんて・・・」
驚きすぎて話を聞いていないのか
「驚いてるとこ悪いんだが、死ぬ事が容易に想像出来る所に行かせたのか? わざわざ情報を拾いに・・・」
「あぁ、いや。期待はしていたさ、ちょっぴりな・・・だが、まさか本当に帰ってくるとは・・・もし帰って来なかったら別のやつに同じ手法で・・・だが、兄ちゃんのあの目はできるような匂いがしてたんだ」
なんとも胡散臭い事を並べながら苦笑いで話す男を睨む。
それに気づいたのか、話を逸らそうと男は口を開いた。
「で、結局。影を退けられた理由はなんだったんだ?」
「あぁ、コイツが撃退したんだ」
俺はクロークスを指差しながら告げる。
「赤等級・・・の冒険者? だが、皇都じゃあ赤も瞬殺だったって聞くぞ?」
「オアシスグレイスに現れた影は弱かったらしい」
そう言うと、男は首を傾げた。
「それだけか?」
「あぁ、それだけだ。詳しくは知らない」
すると、男は少し考えた後にフードを外した。
ため息を漏らしながらもこちらを睨む。
「なら、まだまだ調べなきゃいけないことがありそうだな?。銅級とはいえ、オアシスグレイスを抜けてる。赤等級と金等級の冒険者を率いるのが銅級・・・面白いパーティじゃねぇか」
ニヤリと笑う男はこちらを見つめた。
目は鋭く、目の下の隈が目立つ。
髪は波打っていて、方まである。
お世辞でも清潔感があるとは表現しにくい見なりだ。
「私の名前はルーカス・・・今後もよろしく頼むぜ。兄ちゃん」
胡散臭いが、他に情報屋を探すのも難しいだろう。
「俺はダリア、あとは・・・クロークスとフィーニスだ」
「ダリア・・・ね。 これからの目的地は?」
ルーカスは視線を回しながら聞いてくる。
「取り敢えず、ウィングロストに行こうと思ってる」
「ウィングロスト? あの空から落ちた島か。竜の住む町。 竜人の島か」
「何か知っているか?多少でも情報が欲しい」
俺がそういうと、ルーカスは少し考える。
「そうだな。教えてやる・・・と、言いたいところなんだが、実際は何も知らない。 魔法に長けていることくらいだな」
「・・・まぁ、知らないもんは仕方ない。だが、情報屋が知らないってのはどういうことなんだ?」
俺が不思議そうにルーカスに問いかける。
すると、彼は首を振りながら溜息を漏らした。
「奴ら、外には情報が漏れないように徹底してるんだ。姿形も知らない。 だが、昔にあいつらが調べた一部の情報が漏れ出した。 その情報を最後に、何もない。 噂では、魔法で姿を変えてこちらに来ているのではないかとも言われているがな」
なるほど。
竜人の記述というのは、漏れ出した情報の一部なのか。
「悪いな。力になれそうにない」
「いや、ありがとう。助かった」
ルーカスは申し訳なさそうな顔をした後、何かを思い出したように口を開いた。
「ウィングロストはかなりの距離がある。いくつかポーションや食料を携帯していけ」
「無償で教えていいのか?」
「仕事仲間だ。死なれちゃ困る。情報は武器だ。武器ってのは誰かを傷つけるためだけの道具じゃない。仲間を守るためにも使える」
そう言ったルーカスは俺たちを見つめた。
「さぁ、いけ。もう遅い。宿も埋まっちまうぞ」
「宿が埋まる?」
「影の襲撃のせいで避難する人間が増えてる。 帝都はほぼ無傷だったからな。泊まれる場所を探してる人間が多い」
なるほど。
確かに、それは早めに探した方がいいな。
「ありがとう、じゃあな」
「あぁ、何かあればまた。そこらへんにいるさ」
そう言って俺たちはその場を後にした。




