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砂漠を駆ける。
「もう少し近づけ!」
「全力で走ってるよ!」
揺れる視界、舞う砂。 太陽にジリジリと照らされ、流れる汗が体力と共に落ちていく気がする。
「てか、魔術書ってどう扱うの⁉︎私知らないんだけど!」
フィーニスがそう叫んだ。
それはそうだ、魔術書なんて使ったことがない。
俺も知らない。
「イメージして唱えるんだよ! 海がイメージできるなら言葉にしなくてもいい!」
「でも、魔術師たちは何かを詠唱してたじゃない!」
そう、フィーニスの言っていることは間違いではない。
クロークスの言葉にフィーニスが言い返す。
「詠唱ってのは自分自身がイメージしやすいように言語化してるだけだ! 故郷が変われば伝承も変わるように、同じ魔法でも人によって詠唱に使う言葉が変わったりする! もっと言えば、詠唱なんか必要ないんだよ!」
クロークスは大きな声でそう叫んだ。
「だが、魔術書は魔力がない人間でも扱えるように出来てる! 海をイメージして本を開け! それだけでいい!」
「開くだけ⁉︎」
クロークスの言葉にフィーニスが叫ぶように言う。
「あぁ、開くだけだ! ダリアがさっき開いたが、海を知っていたらあそこで発動してたぞ! マジあぶね・・・あ、砂が口に入った!」
クロークスは俺の後ろで口に入った砂を吐き出そうと何かをしている。
それより、魔術書とはそんな仕組みだったのか、なら先程開いたのはかなり軽率だったかもしれない。
次からはきをつけよう。
グラウンドワールの体が徐々に近づき、迫力が増す。
「ダリア!フィーニスちゃん! どうやら、サンドワールを食い荒らし終わったみたいだぜ!」
「言わなくてもわかってるわよ!」
クロークスが楽しそうに話すなか、フィーニスが叫ぶ。
グラウンドワールは何かを探すように周りをキョロキョロと見た後、俺たちに照準を合わせる。
「見つかった!」
クパクパと口を開け閉めした後、槍のようにこちらに突進してくる。
「来てるきてる!」
口が開き、食べられそうになる瞬間、フィーニスは高く飛び上がり、グラウンドワールの体に飛び乗り走り出した。
「ナイス回避だフィーニスちゃん! これからどうすんよ⁉︎」
クロークスがフィーニスを褒めながら次を練る。
「取り敢えず・・・!」
俺はポーチの中から小さなナイフを取り出しグラウンドワールの体に投げつける。
カチンと音が響き簡単に弾かれてしまった。
「装甲が硬い!」
「となると・・・体内か⁉︎入った瞬間行き着く先は冥府じゃないよなぁ⁉︎ 冥府への扉はドールミストじゃなくてグラウンドワールかい⁉︎」
「ふざけてる場合か⁉︎」
どうにかしようと考えるが、やはり体内に直接というしかない・・・
「てか俺っている⁉︎」
魔術書を扱うのはフィーニスで、雷はクロークスだ。
なんとなくついてきたが・・・よく考えたら俺は必要ないのではないだろうか。
「馬鹿言えダリア! 俺たちは仲間だ! 死ぬ時も一緒だ!」
「死ぬこと前提じゃねぇかよ!」
次第にグラウンドワールの尾まで近づき、走り抜ける。
「フィーニスちゃん! 次は真正面から突っ走るぜぇ!!」
馬鹿かこいつ。そんなことしたら全滅するのは確実だ。
俺たちが死んだらグラウンドワールを倒す術がなくなる。
「取り敢えず頭を上げさせろ! ここで転移を発動させたら被害がどのくらい出るかわからない!」
海と言うものがどんなものかわからないが、適当なことを言ってみる。
「確かになぁ!」
クロークスは叫んだ。
コイツが馬鹿で良かった。
先程の情景を繰り返すように、グラウンドワールが正面から口を開き突撃してくる。
「今!」
俺の合図と共にフィーニスが高く飛び上がる。
高さが足りないと感じたのか、広げた口を踏み台のように扱い、さらに高く跳躍する。
「ナイス! フィーニスちゃん!」
瞬間、クロークスだけが更に高く飛ぶ。
俺たちはあと落ちるだけ、かなりまずいか?
「ノンノンノン終わらせないぜぇ!」
クロークスが懐から太い紐を出して俺たちをひっぱりあげる。
すごいコントロールだ。
圧巻の腕前だな。
高く上空に飛び上がる。
それを喰らおうと下には口を開いたグラウンドワールが待機している。
「フィーニス!」
そう呼ぶと、フィーニスは目を瞑り魔術書を開いた。
瞬間、大量の水が一気に放出され、フィーニスがさらに高く打ち上げられる。
「よくやった、クロークス!」
大量の海水が柱のように連なりながらグラウンドワールの口に入る、体内も体外も回数に濡れ、まだ繋がっている。
今なら・・・
「あいよ!任せんしゃい!」
ビリっとクロークスの体が光り、海水の柱全てに雷が伝達する。
その瞬間、多少体が濡れていたのが激痛と共に一瞬で目の前が暗くなった。




