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時間を稼ぐだけ。
簡単だ、簡単なはずなんだ。
だが・・・これは・・・
「数が多すぎる! まずい・・」
視界に映るのはサンドワールの群れ。
グラウンドワールの姿は一ミリも見えないほどに視界は覆い尽くされていた。
「クロークス! どうにかならないのか!」
「無理無理ぃ!何かすれば全員巻き添えになる! 回避しながら一撃一撃、一体一体しっかり倒して行くしか方法はないっしょ!」
本来の口調に戻ったクロークスは、心底この戦いを楽しんでいる様子だった。
「ガチヤバだ!」
「ふざけてる場合か! くるぞ!」
俺の合図と共に左右に避け、短剣で身体を穿つ。
「クソっ、浅い!」
「それはノンノン! よいしょぉ!」
クロークスがサンドワールを蹴り上げ、一瞬で移動。
再度顔面と思わしき部位を蹴り、頭を剪断する。
「蹴りだけで頭ちぎれんのかよ!」
「それが雷纏よ!」
ワイワイとしながら攻撃を捌き、反撃をしていると、ある時点で場の空気が変わる。
「ダリア! フィーニスちゃんが来るみたいだ!」
そう言われ、フィーニスを見ると完全な獣化をしており、茶色い毛をした獣がこちらを睨む。
「準備出来たのか⁉︎」
「待たせたわね」
俺の問いに低い声のフィーニスが答える。
「全員、耳塞いでなさい! 騒がしいわよ!」
そう叫んだ瞬間、遠吠えのように天に向かってフィーニスは鳴いた。
直後、サンドワールの動きがぴたりと止まる。
「な、何が起きた?」
「これで終わりじゃないわ」
そう言って、フィーニスが高く飛び上がりグラウンドワールを睨みつける。
すると、サンドワールが一斉に動き出した。
「何した?」
「サンドワールにグラウンドワールを襲わせる」
「なんだと?」
フィーニスの言った事がわからずに俺は問いかけた。
すると、獣のままのフィーニスが近くに来て小声で話す。
「私の恩恵は『服従』。 私より階級、等級が低い魔物を自由自在に操る能力。 数に制限はない」
「すごいな」
グラウンドワールに集り貪るサンドワールを見て、勝ちを確信する。
「案外あっさり行くな」
「これで俺たちの勝ちダァァァァァァ!」
「宴だ!宴ぇ!」
後方で騒ぐ冒険者には目もくれずフィーニスは遠くのグラウンドワールを見つめる。
瞬間、ザッザッと砂を蹴る音がしてクロークスの姿が視界に入る。
「マズイなぁ〜?」
「何かあったのか、クロークス」
クロークスに問いかけると、彼はフィーニスを見つめた。
「サンドワールの等級は?」
フィーニスが独り言のように呟く。
「・・・銀か金」
それに苦い顔でクロークスが答えた。
「なら、グラウンドワールの等級は?」
「赤か・・・最悪黒に食い込む」
フィーニスはクロークスを睨む。
ため息を漏らし、ゆっくりと口を開いた。
「サンドワール数十体の群れがグラウンドワールに勝てる確率は?」
フィーニスのその問いに、クロークスの目は鋭くなる。 そして、口を開いた。
「0。0.01%も無い。 傷を与える事は出来るだろうが・・・勝つなら不可能だ」
その言葉にフィーニスは再度ため息を漏らす。
遠くのワール達を見つめる。
「俺たちが勝つ確率は?」
クロークスに問う。
「真正面からの戦闘なら・・・ゼロだな。でも俺たちには頭がある」
「ほう?」
「つまり、しっかり作戦を立て、戦うならワンチャンあるかもしれないって事だ」
クロークスが自身の頭を指で叩きながらそう言った。
「時間は?」
「わからない。長くて5分。 最悪数十秒」
絶望的な数字が提示される。
やるしかないか・・・
「やってみよう」
俺たちは再度、群れを見つめた。




