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馬車がガタンッと揺れる。
「少年! やるぞ!」
「ここからどうする!まさか、追われたまま戦うんじゃないだろ!」
追われたのはいいが、このままじゃ戦えない。
武器は届かないし、届く場所まで近づいた瞬間喰われるのが目に見えてる。
「大丈夫だ、オアシスグレイスからかなり離れた、全員動き出せ!」
男が空に叫んだ瞬間、魔術師が動き出す。
「飄々たる氷の精よ。 焼け焦げた大地に癒しを求む。 太陽すらも凍りつくす術を与え、地の底まで埋め尽くせ!」
「勇敢なる氷の精よ。 君が穿つは大地の嘆き、焼け焦げた大地に一本の矢を穿て」
「親愛なる氷の精よ。降り出した雨粒は凍り弾となる、癒しを与えるとともに破滅をもたらす。 あぁ、我らを守りたまえ!」
「「「ブリザード・・・」」」
魔術師がそれぞれ違う呪文を詠唱する。
氷の塊がいくつも生成される。
大気を吸い込むように徐々に大きくなっていく。
炎天下の中で人間より遥かに大きい氷の塊が存在するのはなんか変な気分だ。
一つは空に、二つは地面に。
「黒髪!伏せろ!」
魔術師が叫んだ直後、魔法が発動する。
「フロア・・・」
「アロー・・・」
「スコール・・・」
魔術師がそうつぶやく。
まだ何も起こらない。
ーー不発か?
「「「「シュートッ!!」」」
直後同時に魔法が発動した。
大地は広範囲に凍りつき、氷の槍が大地から襲い、氷の矢か弾丸が降り注ぐ。
サンドワールが完全に凍りつく。
「少年! 足滑らせるなよ!」
大柄の男が馬車から飛び降り、氷の大地に足をつける。
「おっとっと・・・」
地に足をつけた男が少し滑りながら体制を立て直す。
担いでいた自身ほどにでかい斧の柄を地面に突き刺し、前を向く。
「戦だぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
瞬間、馬車から大量の冒険者が飛び出す。
戦士、斥候、 多種多様な属性をもっと冒険者が走り出す。
「遅れんなよ少年!」
そう言って男は先陣を切り先頭を走る。
「俺たちも行くぞ!」
そう言って馬車から飛び降り、凍りついたサンドワールの上を走る。
「ここからの作戦は⁉︎」
そういうと男は大きな斧を振るい、サンドワールの首を落とす。
氷の塊を両断とは、筋肉バカか?
「魔法の氷の構造は特殊でな! よくわからんがサクサク切れる! だが、同時に溶けやすい・・・!あと40秒もしないうちに溶けてコイツらが動き出す! タイムリミットまでに沢山倒せ!」
そう指示を受けた・・・
だが、そんな簡単に言えるような数ではない、群れと言うより軍隊だ。
ふざけやがって。
「クロークス!フィーニス! 後数十秒・・・やれるだけやれ!」
走りながら話し、氷の肌に短剣を這わせる。
ガリガリと削るような音と共に出血が確認でき、案外サクサクと倒せてしまう。
拍子抜けもいいとこだ。
瞬間、数十体を倒したところで凍結が解除され地面に着地する。
吹雪は止み、赤茶の大地が広がる。
氷の槍も無くなってしまった。
それよりも異常なのは、干上がっていることだ、普通濡らした部分は蒸発までに時間がかかるが、すでにない。
あり得るのだろうか。
「ダリア! 下がれ、数がやばい!」
クロークスが叫ぶ。
多少倒せたとはいえ、まだ50体ほどは残っている。
俺たち冒険者は囲まれ、身動きが取れない。
「どうすんだ!オッサン!」
男に話しかけ、指示を仰ぐ。
「俺の恩恵で全員のパワーが上がっている! しっかり見て、しっかり倒せ!」
「無茶言うな!」
身動きが取れない相手を倒すのなら難しくはない。
だが、動く魔物相手だとどうだろう。
「じゃあ、例えばこいつらを倒し切ったとして、グラウンドワールに勝てる確率は⁉︎」
その問いには誰も答えなかった。
「クソッタレ!」
瞬間、視界にいた冒険者が1人姿を消す。
1人、また1人と食われていった。
「どうすんだ! このまま死ぬぞ!全員死んじまうぞ!」
ジリジリと円が狭くなり、俺たちは中央に集められる。
「ダリア、恩恵・・・使って大丈夫?」
瞬間、背後から小さな声でフィーニスが話す。
「恩恵? この状況覆せるのか?」
「正直わからない・・・時間さえ稼いでくれればもしかしたら・・・」
フィーニスの言葉に俺は少し考える。
もし覆せるのだとしたらありがたいが・・・この場にいる冒険者全員に恩恵がバレる。
「ダリア、早く! 本当に死ぬよ⁉︎」
「あぁ、クソっ! 許可する!許可するよ!」
そういうと、フィーニスは笑いながら少し離れた。
「獣化するから、少し時間を稼いで!」
そういうと、手を地面につけ、犬や猫のようなポーズをとる。
「時間稼ぎ・・・わかった!」
フィーニスの覚悟を受け取り、俺は叫ぶ。
「全員時間を稼ぐことを考えろ! 死にたくはないだろう⁉︎」
そう叫ぶと、全員の顔つきが変わる。
頼むぞ、フィーニス。




