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ShadowSraid  作者: 鬼子
厄災の帰還編
3/98

3

 草原の間を通る長い道を歩き、村が見えてきた。

 夕日が赤く世界を照らし、影を伸ばす。


「目的地の村はここか・・・ここから東に小さな洞窟・・・あっちか」


 地図を開き方角を確かめる。

 夕方ならスライム動かないだろう。

 夜行性の個体も確認されているが、そのスライムがいたら銅級じゃ手に負えない。


「お兄ちゃん誰?」


 背後から声をかけられ振り返ると、少女が立っていた。

 村自体もあまり大きくないため、食料が少ないのだろうか。

 身体は細く、栄養が足りていないように見える。


「冒険者だ、村長はいるか?」


 俺がそういうと、元気に「うん!」と頷き、少女は案内を始める。

 ついてこい。そういうことだろう。

 少女の後を歩いていくと、何やら大きな建物が先に見える。

 周囲の家屋とは明らかに別格。

 やけに綺麗で手入れされている印象だ。


 少女が扉を叩くと、中から男性の声が漏れる。


「はい?」


「冒険者だ。依頼を受けてスライムの討伐にきた」


 俺がそう言うと村長と思わしき男性が扉を開けた。

 かなり若く見える。

 肉付きがよく、肌や髪にツヤもある。

 身につけている服も綺麗にされている。


「冒険者さん・・・ですか?」


 男は俺の姿を頭から足まで見る。

 確かに、俺はかけ出しと言うこともあり、冒険者と呼ぶには汚く、装備もしっかりとしていない。

 イメージと違う。なんてことは多々あることだ。


「そうだ」


 左手首につけた腕輪を男に見せると、表情を変えて中に招き入れてくれた。

 応接室のような場所に案内され、椅子に座る。


 天井から下がる灯りは綺麗で、机や椅子もしっかりとしている。

 綺麗な刺繍が施された花瓶なんかも目につく。


 ーーかなり、村の連中と生活の質が違うな。


 扉が開き、60代くらいの男性が入ってくる。


「冒険者・・・さんですかい?」


「そうだ」


 足が悪いのか、右手に持った杖に体重をかけ、危なげに移動する老人。

 服は多少汚く、この家に相応しいとはお世辞にもいえない。


「スライムの依頼を受けてきた。詳細を聞きたい。明日の朝には向かう」


 俺がそう言うと、老人は椅子をゆっくりと引き座る。

 一つ一つの所作が遅く。 時間を喰う。


 すると、扉が開き、先ほどの若い男がティーカップを二つ持って部屋に入る。

 老人と、俺の前にゆっくりと置いて退出した。


「スライムが現れたのはいつ頃だ?」


「おそらく、3日ほど前かと・・・」


 俺の質問に曖昧に返す。

 おそらく? 時期を把握していないのか。

 

「子供でも襲われたか?」


 俺がそう言うと、老人はゆっくりと頷いた。

 老人はティーカップを持ち、紅茶を啜る。


 そうだ・・・

 紅茶はかなり高価な嗜好品だ。

 村の連中は裕福ではない。必要最低限の暮らしを強いられている。


「どうしてスライムの動向に気づいた?」


 俺がそう問うと、老人はティーカップを起き、話始める。


「2日ほど前の朝。突然村のものが戸を叩き、スライムが出た。子供が襲われたと報告があったんです」


「なぜすぐにギルドに依頼を出さなかった?」


 老人は少し考え、口を開く。


「子供の手当が優先です。ギルドへの依頼はその後に・・・」


「子供の容態は?」


 俺の質問に老人は顔を苦く、眉間に皺を寄せた。

 あまり良くないのか。


「左腕が腐っております。 助けに行った大人も軽症ではありますが怪我を・・・」


 アシッドスライムか。ギリギリ銅級の範囲と言うことか・・・

 生半可な武器や防具じゃ太刀打ちできない。

 知識がない村人がどうこう出来る相手じゃない。


「アンタはスライムを直接見たのか?」


 老人は首を振る。

 確認はしていないか、まぁその足じゃ難しいな。


「冒険者さんは・・・仲間は?」


「いない。ソロだ。何か問題が?」


 確かに、依頼の達成難易度は変わるが、別にソロだから問題があるわけではない。 話を続けよう。


「なら、子供の容態は自分の目で確かめたのか?」


 老人はその質問に対しても首を振る。

 やっぱり・・・今この村を仕切ってるのはコイツじゃない。


「アンタ、ティーカップを持ってきた男は息子か?」


 その質問には、ハッキリと頷く。


「どんな理由があるかはわからないが、アイツに村を仕切らせるのはやめておけ。 言ってる意味がわからないなら、その足で無理してでも外に行って現状を把握しろ」


 俺はそう言って席を立つ。

 ティーカップに入った紅茶を一気に飲み干すが、あまり美味しいとは感じなかった。


「襲われた子供の家はどこだ」


「この家を出て、右側。手間から三番目と聞いています」


 聞いています。 確実に操られている証拠だ。


「そうか」


 応接室を出て、玄関に向かう。

 先ほどは気づかなかったが、窓には全てカーテンがかかっていた。外が見えないようにだろう。

 現状を把握していないと、解消は難しいな。


 まぁ、忠告はした。


 言われた家の前に行き、扉を叩く。

 扉がすぐに開き、赤髪の綺麗な女性が出てきた。


「どちら様ですか?」


「冒険者だ。子供の容態を見にきた」


 腕輪を見せながら話すと、彼女は慌てて扉を開けた。

 案内されて行った部屋にはベッドに男の子が寝転んでいる。

 父親と思わしき男性がそばでタオルを水に浸していた。


「あなた・・・」


 彼女が呼ぶと、男性は振り返る。


「その方は?」


「冒険者さんが来てくれたわ」


 男性は安心したような顔をして、俺を見る。


「あなたたちは、この子の両親か?」


 俺の質問に両者とも深く頷いた。


「少し傷を見るぞ」


 俺はベッドに横たわる男に近づき、横に膝をつく。

 布団を剥ぎ、左腕を見ると、見るには堪えるほどドロリと皮膚が溶けていた。


 アシッドスライムは触れたものを腐らせる。

 身体は紫色で、かなりわかりやすいと思うが。教えてなかったのか。


「・・・だれ?」


 男の子が目を覚まし、話す。


「冒険者だ」


「僕死ぬの?」


 そう言った男の子の声には力強さはなかった。

 

「死なない。すぐによくなる」


 ポーチからポーションを取り出し、男の子に飲ませる。

 ゆっくりと目を閉じ、再度眠りにつく。


「もう大丈夫なんですか?」


 父親がそう話す。

 俺は首をふり、新たなポーションを2つ手渡した。


「いや、まだ。だが、ポーション一つで1日侵蝕を遅らせることは出来る。 すぐにギルドに指示を送るか、馬車を雇って皇都に向かえ、このくらいの傷なら銅級の神官でも簡単に治せる。 そのポーションは明日、明後日と飲ませろ。時間稼ぎにはなる」


「ですがこんな高価なもの⁉︎」


 受け取ったポーションを返そうとする父親を止める。


「確かに高価ではあるが、また補充が出来る。 子供は死んだら補充できないぞ。 受け取っておけ。 見返りは求めない」


 そういうと、父親は頭を下げた。

 母親も頭を下げ、何かを思い出したかのように姿を消す。


 数分後、母親は息を切らしながら帰ってきた。


「あ、あの! これ・・・」


 そう言って母親が手渡してきたのは一つの鍵だった。


「これは?」


「私たちは夫婦で小さな宿を営んでいます。一部屋空きがありますので、ご自由にお使いください」


 なるほど、これはラッキーだ。


「助かる。明日の朝には討伐に出る。 明日からは安全だ」


 俺はそう言って玄関の扉を開ける。

 両親は最後まで頭を下げ続けていた。


 早めに解決してやらないとな。


 指定された宿にはいり、鍵を開ける。

 冒険者用の宿というだけあって、ベッドもかなり上質なものだ。


 すぐに横になり、一眠りする。

 目が覚めたら、すでに日が登っていた。

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