19
腕輪を見つめ、自分に足りないものは何かを考える。
経験だろうか。
火力。思考力。情報力。 何が足りないのだろう。
いくら考えたところで思考が纏まらずにぐるぐると回る。
瞬間、ギルドの扉が勢いよく開かれる。
「た・・・助けてくれ⁉︎ グラウンドワールが動き始めやがった!」
そう言って床に倒れ込む男。
よく見れば左腕がない。
喰われたか。
「・・・っ! すぐに動きます!動ける冒険者は外に移動してください! クロークスさん!ダリアさん!フィーニスさんも、お疲れかもしれませんが、お願いします!」
そう言って受付嬢はギルドを飛び出す。
それを見た冒険者は子供のようにはしゃぎ、後を追うように動き出す。
「ダリア、動けるか?」
クロークスが心配するような表情で俺を見つめる。
傷こそ全員塞がっているが、スケルトンパラディンとの戦闘で消耗しているのは間違いない。
俺もその1人だ。
自身は大きな傷を負っていたのに、他人の心配をするクロークスを見つめる。
「大丈夫だ。行こう」
俺はクロークスにそう呟いた。
ゆっくりとギルドを出て、都の外に出る。
すると視界に映った。
「あれがそうか? かなりやばそうだが・・・」
サンドワールの群れが数個。
一個だけでも20体前後で構成された群れが7つほど。 それを率いるのはグラウンドワールだ。
一際大きい個体が砂漠の海を泳ぐ。
群れを全て合わせてもグラウンドワールの方がデカそうだ。
「数も多いな、速度もある。 どう戦う?」
そう呟いた。
「俺1人なら雷纏があるかから戦えるが・・・」
クロークスが顎に手を当てて考える。
瞬間、重い音と共に数台の馬車が現れる。
馬車・・・だろうか。
帝都や皇都は馬を使った馬車があったが、どうやらこの生き物は馬に見えない・・・
「あんな魔物いたか? なんだあれ」
目を細めながら俺は言う。
「・・・なんだあれ。わからない」
クロークスも首を振りながら奇妙な生き物を見つめる。
かなり大きなトカゲのようだ。
「リザードマン?」
「いや、リザードマンはもう少し小さい」
砂漠と同化するような赤茶の鱗がびっしりと生え、馬より大きい体をもつ。
舌をシュルシュルと出しながらこちらを睨む。
「俺睨まれてる?」
そういうと、クロークスが苦笑した。
「合わないのかもな」
俺は肩を落とす。
「みなさん! これに乗ってください! ギルドからの提供です、自由に扱っていいですが、なるべく、なるべく!壊さないように!」
受付嬢が汗を垂らしながらそういう。
「黒髪の少年! お前らも馬車に乗れ!」
スキンヘッドの大柄の男に呼ばれる。
俺たちはすぐに馬車に飛び乗り、座り込む。
「勝てる見込みはあるのか?」
俺は男に問う。
男はため息を漏らし、首を振った。
「いいや、わからん。 サンドワールだけなら勝てなくはない。 だが、それも数が少ない場合だ。今回は異常。数もだが、グラウンドワールも現れたら厳しい・・・。 まぁ魔術師が今回は多い、それでやっとトントン・・・半々ってとこだな」
男は険しい顔でそう言った。
「さぁ、馬車が動くぞ!」
直後、馬車が勢いよく走り出し群れに近づく。
溶けてしまいそうな暑さの中、グラウンドワールをしっかりと目視する。
「・・・まて、デカすぎないか?」
そう言いながら近づく。
危険だから近くで見れないが、少し近づいただけでわかる。
デカすぎる。
一度、オアシスグレイスに入る前に見たが、あの時は焦っていて見る余裕がなかった。
だが、今一度、再度見てみると・・・デカすぎる。
これを倒す。 出来るのだろうか。
瞬間、魔術師が立ち上がる。
数人いる魔術師が同じ魔法を詠唱する。
「何してるんだ?」
「サウンドフォース。音を凝縮し、発射する。 対象にぶつけて注意を惹く事を目的にした魔法だ。 並行で移動しながらじゃ戦闘は出来ない。 だから俺たちを追ってもらう状況を作る。 そこから戦闘開始。 さぁ、武器を抜け」
俺の問いに男がそう言った。
俺は短剣を引き抜き、準備をする。
「さぁ、くるぞ!」
男がそう叫んだ。
「・・・・・シュートッ!!」
魔法を放つ声がひびき、サウンドフォースが直撃する。
弾けた音が反射し、耳鳴りが響き、何も聞こえなくなる。
そんな中でも馬車はサンドワールから逃げるように立ち回り、注意を惹いた。
「・・・年! ・・・少年・・・! ・・・来るぞ! 戦闘態勢!!」
男が叫ぶ。
こうして、炎天下の中での激戦が開始された。




