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<<view:ダリア>>
地面を蹴り、走る速度を徐々に上げていく。
視界が流れ、周囲の音が消える。
「スケルトンパラディン・・・」
俺は呟きながら周囲を漂う圧を追う。
耳がいいからか、先程の会話はほぼ全て聞いていた。
クロークスは、フィーニスはそれにやられたのだと。
「こっちか・・・」
感覚を頼りに見えない姿を追い続ける。
許せない。
怒りと共に鼓動が早くなる。
アドレナリンが血中に溶け出し、高揚感にすら似た昂りが身体を支配する。
ーー来た、恩恵の感覚だ
数分走り、たどり着いたのは少し開けた場所だ。
その中央に、「待っていた」と言わんばかりに立ち尽くす魔物がいる。
「見つけた。 スケルトンパラディン・・・!」
骨の騎士が顔を上げると、赤く光る瞳が俺を見据える。
自身と同等かそれ以上の大剣を軽々と持ち上げ、俺を睨む様は魔物ではなく、1人の騎士のようだ。
血に濡れた甲冑が音を立てる。
返り血が乾いたのか、赤茶に染まった鎧が、傷だらけの兜や武器が数多の戦場を切り抜けてきた事を物語る。
「お前・・・赤等級何だって?」
俺の問いにスケルトンは首を傾げる。
俺は一度、赤等級の影に一撃でやられている。
ここで勝てば、なにか変わるだろうか。
短剣をゆっくりと鞘から引き抜き、構える。
戦闘態勢に入ったのを確認し、警戒したのかスケルトンも大剣を構えた。
一騎打ち。
一対一の戦闘。邪魔者は居ない。
「いくぞ・・・スケルトンパラディンッ!」
姿勢をかがめ、地を砕きながら前進する。
速度は申し分ない、これなら火力も!
頭を捉える。
振り下ろせば攻撃が通る!まだ大剣は上げられていない! 今更反応したところですぐには上げられないはずだ!
短剣を握る右腕を振り下ろした瞬間、腹部に強烈な鈍痛が走る。
身体が飛び、迷宮の天井に打ち付けられ地面に落ちる。
「ぐっはぁ・・・」
ーー読みはあってた!武器での攻撃じゃない、なら!
スケルトンを見ると、左手を突き上げている。
拳での一撃か。
立ちあがろうとするが、呼吸が浅くなりフラフラする。
だが、そんなことは関係ないと、スケルトンは動き出す。
ガチャガチャと音を立てながら走り出し、大剣を振り上げる。
瞬間、叫びながら叩きつけてきた。
「あっぶねぇ!」
横に転がり、すぐに足払いをする。
バランスを崩したスケルトンは地面に倒れるかと思われた・・・
が、大剣を地面に突き刺し、そのまま大剣を軸に体を翻して着地したのだ。
「マジかよっ!」
反応をする暇さえない、スケルトンの前蹴りを上手く短剣で受け切るが、やはり衝撃は逃せない。
身体が弾かれ、壁に激突する。
衝撃で額が割れ、口内を切ったのか口から血が溢れる。
「次っ・・・」
瞬間、視界に大剣が映る。
クロークスのやられた投擲。
戦士は武器を手放すわけがないと、その先入観を利用したものだろうか。
身体を逸らし回避する。
だが視界に映ったのはスケルトンだ。
「早すぎるって!」
穿たれた拳を回避し、絡めとる。
「左腕貰い!」
左腕を捻じ切る為にしがみつき、全体重をかけるがなかなか折れない。
肉と筋肉がない状態で、なぜここまで力が出るのか。
スケルトンは左腕を掲げ、そのまま地面に振り下ろす。
俺は叩きつけられる前に回避し、スケルトンはただ地面を砕いた。
直後、恐ろしい速さで大剣を拾い、右腕で構える。
赤等級とは、自身で考えて行動する魔物が多いのだろうか。
スケルトンの赤い瞳がさらに強く瞬く。
瞬間、大剣がゆっくりと光り始め、白い粒子のようなものがまとわりつく。
「魔剣か?」
その粒子はスケルトンの身体さえも包み、パラディンとして相応しい姿に変化を遂げる。
スケルトンがゆっくりと姿勢を低くする。
現在の奴は、先程のインパクトで左腕が砕かれて無い状態だ。
片腕がない状態で戦意を失わずに戦おうとする姿勢は、冒険者としては見習うべき点だろう。
瞬間、スケルトンの姿が消える。
直後、足の肉が裂ける。
「・・・は?」
ドロリと生暖かい鮮血が溢れ出す。
バックリと切れた傷は焼けるような痛みがあり、それに加え傷口に白い粒子が虫のように集る。
瞬間、ズキっと痛みが走り、傷口がさらに開く。
「なんだこれ⁉︎」
スケルトンは先程より身体能力が向上している。
おそらく、魔剣の力だろう。
再度姿勢を低く下げ、大剣を背負う。
瞬間、姿が消える。
直後、背後からの足音につられて振り返ろうとすると右腕が切れ鮮血が溢れ出す。
「・・・っ! またか!」
足音・・・
透明化か?
ーーてことは、姿勢を低くするのはフェイク。
俺が勘づいたのを理解したのか、スケルトンはその場で透明になる。
インパクトの瞬間だけはなぜか見える。
さっきは警戒すらしていなかったが、音を頼りに・・・
すると、足音がなる。
「後ろだ!」
短剣を構えたまま振り向くとガキンッと何かがあまり火花が散る。
一瞬だけスケルトンの全身が見え、再度消える。
「連発で使えるとか聞いてないぞクソッタレ!!」
感覚を最大まで研ぎ澄まし、音を聞き、気配を探る。
背後、横、前、下から上、斜め、また後ろ、下。
ありとあらゆる方向からの攻撃を捌き、戦い続ける。
いくらやろうと疲労はたまり、反応が鈍り皮膚が切れ体がズタズタに裂かれる。
血が溢れ、地面が赤く染まる。
スケルトンが持つ大剣から血が滴り、地面をうつ。
捌ききれなくなる。
腕が痛い、足が痛い、身体が痛い。
傷口がさらに開き、血が溢れる。
体が徐々に動かなくなり、視界が霞む。
ーー血を流しすぎたかもしれない。あぁ、ここまでか
スケルトンが右腕を振り上げる、握られた大剣は俺の血で赤く染まっている。
ーーこれが振られれば身体が両断され即死する。
俺は目を瞑り、諦めの理由を探す。
勝てない、仕方ない。相手が強かった、相手が悪かった。
討伐隊が編成され、後に倒される。
わざわざ俺が倒す理由はない。
なら、俺はどうしてここに立っているんだ・・・
瞬間、複数の足音が耳を刺す。
それと同時に大剣が風を切る音が響いた。
「「ダリア!」」
クロークスとフィーニスの声が響いた瞬間、自身がここにきた理由を思い出す。
ーーここにはコイツを倒す為にきたんだ!
目を開き、大剣を握った腕を受け止める。
左脇で挟むように腕を捉え、右腕のインパクトで骨を砕く。
スケルトンは右腕を粉砕され、大剣を手放す。
落下する前に体を回しながら大剣を広いあげ、遠心力はそのままにスケルトンの身体目掛け振りぬく。
「堕ちろぉぉぉぉぉ!」
スケルトンに当たった瞬間鎧が裂け、骨を砕く。
骨が撒き散らされ、地面に頭が転がる。
数秒後、赤い瞳が消え、絶命を知らせる。
「や・・・やっ・・・た・・・」
安心で力が抜けたか、気が抜けたか。
その場で視界が揺れ、意識を手放した。




