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ShadowSraid  作者: 鬼子
炎砂の迷宮編
26/98

16

<<view:クロークス>>


 俺はゆっくりと目を開く。

 地面に流れた血が身体を浸し、服が赤く染まる。

 暖かい・・・


 いつのまにか気を失っていたようだ。

 

 ぼやけた視界には倒れているダリアとフィーニスちゃんが映る。

 その周辺には何やら人が集まっていた。


「こっち治療してる!」


「銅級が2人? なんでこんなとこにいるんだこいつら!」


 神官だろうか・・・金色の腕輪をつけたヒーラーが何人かと、戦士などのアタッカーの姿も見える。


 パーティ・・・だろうか?


 大柄の男はキョロキョロと何かを探すように動いた後、俺を見つける。


「いた・・・クロークス!大丈夫か?」


 その大柄の男は俺を見るなり焦った様子で駆け寄ってくる。


「出血がひどい、ヒーラー! こっちの回復も頼む!」


 そう言いながら後方の人たちに手を振る。


「どう・・・して」


「どうもこうも、お前の姿が見えないからギルドの受付嬢に聞いたんだよ。 そしたら受付をしてから帰ってない。迷宮にいるんじゃないかって、探してたんだ。あんまり話すな!」


 そう言いながら男は俺の傷を見て顔を歪める。


「こりゃひでぇ・・・早く!まじで死んじまう! そいつらは死にはしねぇから、先にこっちを頼む!」


 俺を助けようと仲間に声をかける。

 だが、俺はコイツらを知らない・・・

 どこかで会っただろうか・・・


 ダリアとフィーニスちゃんは大丈夫だろうか。

 俺がしっかりしていれば・・・



「ダ・・・リア・・・フィーニス・・・」


「あそこで倒れてるのはお前の仲間か? 大丈夫だ、死ぬような傷じゃねぇ。 お前が一番ひどいよ」


 男はすこし苦笑しながらそう話した。


 神官の少女が駆け寄ってきて治療をする。

 緑色の光が体を包み、ゆっくりと傷が再生する。


 だが、次の瞬間、少女の顔が歪む。


「あれ?傷が塞がらない! 何これ!」


「あ?塞がらないわけないだろ!」


 少女と男が言い争いをする。


「確かに最初は効いたけど、これ以上傷が塞がらないの!」


「・・・魔道具とかの類か?」


 男が顎に手を当て、俺を見つめる。


「おい、クロークス。お前をこうしたのは何者だ。腐っても赤等級、これはおかしすぎる」


 俺の腹部の傷は塞がっていないが、取り敢えず傷口は小さくなったのか先程よりかはマシになった。


「スケルトン・・・でかい・・・スケルトンだ」


「スケルトン? 油断でもしたか?」


 そう話していると、他の神官や戦士が集まってくる。

 ダリアやフィーニスちゃんの治療を終えたのだろう。


「違う・・・」


「なら何者だ、詳しく話してくれ」


 俺は痛む傷を抑える。

 傷は激しく痛み、心拍数を上げ、呼吸を荒げる。

 それでも伝えなくてはならない。

 あれは・・・討伐隊を組むべきだ。


「討伐隊を・・・」


「討伐隊だな? わかった。すぐに地上に出て申請しよう。 で、何者かわからなきゃ申請も出来ない!」


 思考が定まらない。

 クソ、耳も少し聞こえづらいような気がする・・・


「スケルトン・・・パラディン・・・」


 そう呟いた瞬間、全員の顔が強張る。


「は? スケルトンパラディン? 赤等級だろ? いるわけない」


「でも、クロークスがこんな傷を負ってる。 深い傷を負ってまで嘘をつくメリットがない」


 冒険者同士での意見の交換が始まる。


 スケルトンパラディン・・・

 赤等級の魔物で、目撃例は極めて低い。

 夜間にしか姿を現さないとされ、人が住む街や村からはかなり離れた地域が生息地となる。


 また、生存競争を生き抜いてきた歴戦であり、スケルトンの群れを率いて軍の指揮を取る場合もあるとされる。


 スケルトンの中のトップと言っても過言ではないパラディンは、ここ、オアシスグレイスでは発見例がないのだ。


「ありえない話じゃないが・・・」


 全員が一度考える。


 瞬間、彼らの背後から足音がする。

 黒い髪に赤い瞳の少年が立ち上がったのだ。


「・・・ダリア?」


 俺がつぶやくと、ダリアはこちらを見つめ、歩いてくる。


「大丈夫か?クロークス」


 その問いに俺は頷いた。


「傷はどうしたら治る?」


 ダリアは神官に聞く。


「武器の破壊です。 クロークスさんが言っているのが本当だと仮定した場合、スケルトンパラディンは何らかの魔剣を扱うと推察されます。 武器を破壊すれば、付与された効果も消えます」


 そのセリフを聞き、ダリアは頷く。

 直後に短剣を取り出し、刀身を撫でた。


 握る力が徐々に強くなり、手が震え、短剣がカタカタと音を出す。


「ダリア・・・まさか・・・」


 俺の呟きにダリアは顔を上げ、俺の瞳を覗き込む。

 それはあまりにも鋭く、暗く、怒りに満ち、威圧を含み、身体が強張る。


 恩恵・・・?


 だが、威圧はありえない。


「クロークス、俺いくわ」


「ダメだ、ダリア! あれ見てただろ⁉︎」


 俺はダリアを止めるために声をかけるが、ダリアの瞳はもう俺を見ていなかった。


「そうだ、銅級が勝てるわけない! 一度帰って討伐隊を・・・!」


「そうして、クロークスが生きてる確率は?」


 瞬間、静寂が流れる。

 ダリアがした質問は、いわば誰も気にしないようにしていた部分なのだ。


「確率は?」


 ダリアは再度問いかける。

 その圧と、鋭い質問に誰も答えられない。


「なら今だ」


 そう言ってダリアはゆっくりと歩き出す。


「ダリア!」


「クロークス! 俺は馬鹿だからさ、大切な仲間傷つけられて冷静でいられるほど出来ちゃいないんだわ」


 ダリアはそう言いながらゆっくりと足を早め、次第に闇の中に姿を消した。

 

「・・・ダリア」


 俺の力なき声は、誰にも届かず、闇に吸い込まれた。

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