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俺たちは病院に戻り、フィーニスのベッドの横に座る。
「コイツのことも助けてくれたんだろ?感謝する」
「いやいや、いいって! まぁ、目のやり場には困ったけどな! そんなことより、影の話聞きたいんだろ?」
クロークスはそう言って笑った。
「あぁ、頼む」
「任せてちょんまげ!」
「ちょんまげ?」
俺の問いを無視し、クロークスは目を閉じ腕を組んで思い出す仕草をする。
「あん時はな・・・」
<<view:クロークス>>
「今日のパトロールは終わりっと・・・さてさて、ちゃちゃっと帰りますかぁ!」
太陽が照りつけ、熱い砂漠のど真ん中で背を伸ばす。
「最近は魔物も増えてきたな・・・なんでだ?」
魔物は増え、凶暴化している。
地下の迷宮の中の魔物は等級は高いがあそこまで攻撃的じゃない。
砂漠の魔物もかなり激しく行動するようになっているし、行動範囲も広がっている。
パトロールの回数も増やした方がいいだろうか。
汗を流し、周りを見る。
あたり一面砂の海。
遠くの方にはサンドワールの群れ。
「また動き始めてるのか・・・」
瞬間、背後から爆発音が響いた。
かなり大きい。
俺は振り返り、音の出所を探る。
「なんだ、今の音⁉︎ 方向的に・・・都の方か⁉︎」
身体に瞬時に雷を纏い、走り出す。
高速。いや、光速で大地を掛ける。
これなら、パトロールにも時間がかからないと編み出した技だ。
都が近づく。
「見えた! オアシスグレイス!」
俺はここの出身じゃない。
だが、冒険者をやっていて、道に迷った時にここの都の人間に拾われた。
あれから数年。
帰る場所もないから住まわせてもらってる恩もある。
だから駆けつけた。
「なんだ・・・あれ⁉︎」
視界に映るのは影の団体。
見ただけも10体以上。
全員人の形をしている。
身長は様々だが、全員2メートルは超えているんじゃないのか?
属性は・・・剣士を中心に魔術師がチラホラ。
典型的なパーティの構図だが・・・
あれだけ揃えばかなり・・・
駆け寄り、さらに近づく。
瞬間、剣士が剣を掲げた。
この位置からは見えない! 何を斬ろうとしているんだ!
グルっと影達の背後を周り、前に出る。
影の前に捉えたのは子供だった。
「お前ら、何してんだぁ!」
子供を抱え、文字通り即行で距離を取る。
子供を下ろし、頭を撫でる。
「クロークスにいちゃん・・・!」
「いい、下がってろ! 家に帰ってママを守ってやれ! 家から出るな! 帰る途中でも「クロークスが家から出るな」って、そう教えてやれ! 早く行け!」
子供は走り出し、姿を消す。
影の集団は俺をじっと見つめ、何やら相談をしているようだ。
「・・・・・・?」
「え? なんて?」
「・・・・・・、・・・・・?」
「何言ってるかわかんねぇよ!」
「・・・・・・!・・・・・・・」
わからない。
どこの言語だ? 何もわからないが一つだけ分かることがある。
コイツらは子供に剣を振おうとしたと言うことだ。
「・・・・・・・?・・・・・!」
「何も話からねぇよ、何もわからねぇけど・・・お前らが敵だって事はわかったぜ!」
ダンッと地面を踏み締め、全身に雷を纏う。
バチバチと音がひびき、髪が逆立つ。
「覚悟出来てるよなぁ?」
「・・・・・!」
瞬間、影の1人が叫ぶ。
それを合図に他の影が液体のように蕩け、地面に吸収された。
「・・・!消えた⁉︎」
視線を巡らせるが、影は現れない。
ドプンッ
水が籠り、跳ねるような音が耳を刺し、同時に正面に複数体現れる。
「地面・・・違う。影か⁉︎・・・お前ら、ガチの影なんだな⁉︎」
瞬間、背後からハンマーのような大きな武器で殴られ、体が飛ぶ。
空中で受け身を取り、着地。
地面を見つめる視界を正面に向けた瞬間、下から剣の切先が迫る。
世界がスローになるような感覚と共に回避し、体を翻しながら距離を取る。
「まずい・・・都の中での戦闘はまずい・・・引き剥がさないと! でも分断されたら終わり・・・なら!」
俺は駆け出し、1人の身体を薙ぎ払うように蹴り飛ばす。
地面から体が浮き、影が飛ぶ。
光の速さで放たれる一撃は、凄まじい衝撃と、スピードを叩き出す。
弾き出されるように飛んだ影の1人が都から離れる。
「これなら上手くいく!」
俺は再度駆け出し、蹴り飛ばす。
これを十数回繰り返し、奴らを都から遠ざけることに成功する。
「お前ら何者なんだ⁉︎」
「・・・・? ・・・・・・・?」
やはり何を言っているかわからない。
俺は彼らを睨む。
彼らは瞬時に剣と杖を構え、攻撃態勢に移り変わった。
「・・・・・、・・・・・・、・・・・!」
魔術師が何やら呪文を唱え火球を生み出す。
詠唱があるってことは、ちゃんとした言語なのか!
火球を打ち出した瞬間、合わせるように剣士が動き出す。
俺は雷を纏い、走り出した。
目にも留まらぬスピードなら捌けない。
そう思ったからだ。
案の定それは当てはまり、次々と、難なく剣士を倒す。
残った魔術師はそれより簡単に討伐が可能だった。
威圧感とは裏腹に、あっさりと終わった戦闘に拍子抜けする。
「取り敢えず・・・帰るか・・・・」
そう言って俺は都に帰った。
<<view:ダリア>>
「て、感じだ」
「あっさりしすぎじゃね?」
自身の影との戦闘を語ったクロークスはニヤリと笑っていた。
だが、実際弱かったのだろう。
皇都を襲った奴は恐ろしく強かったが、帝都のなかに出現した影は少しだけ弱くなっていた。
場所か・・・
何かしら理由があるのだろう。
これが情報だろうか。 情報屋から依頼は受けたが、詳しい依頼内容や、人物ってのも聞いてこなかった。
かなり難しいかもしれないな。
何はともあれ、影の強襲が世界的にあったのは間違いない。
もうすこし、オアシスグレイスに残って調査を進めるとしよう。
俺自身、まだ知りたいことはある。




