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少女は耳をピクピクと動かしている。
「奴隷・・・? お前、奴隷なのか?」
「いや、奴隷というか・・・まぁいいわ」
少女はめんどくさそうにそう言った。
「で、仲間になりたいのか?」
「えぇ、オアシスグレイスに行くんでしょ? なら私を連れて行かない手はないわ」
少女は腰に手を当て、薄い胸を張って自慢げに言って見せた。
「その自信はどこから湧いてくるんだ? ただ馬鹿なだけか?」
そういうと少女はムッとして、不機嫌そうに話を始めた。
「私はオアシスグレイス出身よ」
その言葉は意外だった。
「てか、この耳とか見たらわかるでしょ。私たちみたいな獣人はオアシスグレイス出身よ」
「初耳だ」
そういうと呆れたと、溜息を吐かれてしまう。
「で、出身だからオアシスグレイスに帰りたいと・・・」
その問いに少女は首を振る。
そして、テーブルに肘をつき、気だるそうに話し始めた。
「今はどんなふうになってるのかなぁ・・・ってそれだけよ。 私を奴隷商に売ったのは両親だし」
その言葉を聞いて、俺は驚いてしまう。
俺の表情を見たのか、少し笑って話を続けた。
「珍しい話じゃないわ、オアシスグレイスは過酷な環境な故、普通に生活するのも厳しいの。 よく迷ったりするし、強い連中はうじゃうじゃいる。 現地の奴らは『炎砂の迷宮』って呼んでる。 そんな所は誰も踏み込まない。だからこそ、私たちはレア物として高く取引されるの」
「なるほど」
聞いたところ、嫌な思い出しかないように聞こえるが・・・
「そんなとこに行きたい理由は?」
「生きていればいい事があるかもしれない。あの言葉はいいわ。 でも、きっと私1人じゃ探せないし、見つけ出すのはできない。 だから、アンタに着いていきたいの。 ダメなわけないよね?」
満面の笑みを見せる少女だが、その笑顔の裏には何やら威圧感を感じる。
連れて行かないと許さないぞ。そう言われている気分だ。
「・・・命の保証はしないぞ」
「知ってるわよ。 それに、私がいればオアシスグレイスまで1日で着くわ!」
そうなのだろうか。
嘘を言っている風には見えないが・・・
アマンダは一直線に行けたとしても3日はかかると言っていた。
「なんでだ?」
その質問に少女はまた大きな溜息を漏らす。
「本当に何も知らないのね・・・」
「悪かったな。何も知らなくて」
そう言うと、少女は自身の耳を触りながら話す。
「私たちの種族は獣の姿になれるの、背中にあなたを乗せて走れば、すぐに着くわ」
「・・・ズルいじゃん、そんなの」
そう言うと、少女はニヤリと笑い俺の手を引いてギルドを出た。
「あっちに着いたら服を買ってよね!」
「今来てるのじゃダメなのか?」
そう言うと少女が俺を睨む、
「獣化したら服なんて弾け飛ぶに決まってるでしょ!」
そう言う少女を見ながら、先に脱げば良くないか。 そう感じたが、言うのはやめた。
「早く行くわよ」
「え?すぐに?」
そんなことをしている間にオアシスグレイスに続く道のゲートまで来てしまう。
「止まれ。ここから先は冒険者以外は通れない」
門番に腕輪を見せる。
「そこの女。腕輪を・・・奴隷か?」
門番の男は口を閉じ、少し考えた後に溜息を漏らした。
ローブの下に見える汚らしい服が目に入ったのだろう。
「通っていいが・・・そんな装備で進むのは自殺行為だ。 耐火のポーションあたりを仕入れておけ」
門番はそう言った。
そんなに暑いのだろうか。
炎砂というだけはある。
俺は少女に視線を送る。
少女は小さく首を振った。ポーションなど必要ない。そういうことだろう。
「あぁ、しっかり持ってるよ」
俺はポーチを叩きながら言った。
そんなものは要らない。そういえば簡単だが、もしかしたら通してくれないかも知れない。
嘘でも着いておくのが得策だ。
「よし、いけ」
俺たちは無事に通される。
「さぁ、行きましょうか。てか何しに行くの」
「影の情報集めだ、知り合い?の情報屋からオアシスグレイスに行けば何かわかるかも知れない。そう言われた」
そう答えると。「あっそ」と冷たい返事が返ってきた。
「そういや、名前聞いてなかったな」
「そうだっけ? まぁ奴隷になった瞬間から名前なんて消えたみたいなもんだし、あなたが名前をつけてよ」
と、少女に言われる。
名前って大切じゃないか?
そんな適当でいいんだろうか。
「・・・じゃぁ。 フィーニス」
「意味はわからないけど、響きは好きだわ。なら私は今日からフィーニスね」
しっかり理由。由来はある。
だが、ここで説明するのは、なんか違う気がした。
そんな話をフィーニスとしてるうちに長い通路に終わりが見え、外に出る。
出た瞬間に襲いかかるジリジリと肌を焼くような暑さに驚く。
「マジかよ」
「大マジよ。気を抜いたら死ぬわよ」
吹雪のように砂が舞う。
照りつける太陽が異常な暑さを感じさせ、赤く焼けたような赤茶の大地が視界には広がっていた。




