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ShadowSraid  作者: 鬼子
炎砂の迷宮編
16/98

6

 少女は耳をピクピクと動かしている。


「奴隷・・・? お前、奴隷なのか?」


「いや、奴隷というか・・・まぁいいわ」


 少女はめんどくさそうにそう言った。


「で、仲間になりたいのか?」


「えぇ、オアシスグレイスに行くんでしょ? なら私を連れて行かない手はないわ」


 少女は腰に手を当て、薄い胸を張って自慢げに言って見せた。


「その自信はどこから湧いてくるんだ? ただ馬鹿なだけか?」


 そういうと少女はムッとして、不機嫌そうに話を始めた。


「私はオアシスグレイス出身よ」


 その言葉は意外だった。


「てか、この耳とか見たらわかるでしょ。私たちみたいな獣人はオアシスグレイス出身よ」


「初耳だ」


 そういうと呆れたと、溜息を吐かれてしまう。


「で、出身だからオアシスグレイスに帰りたいと・・・」


 その問いに少女は首を振る。

 そして、テーブルに肘をつき、気だるそうに話し始めた。

 

「今はどんなふうになってるのかなぁ・・・ってそれだけよ。 私を奴隷商に売ったのは両親だし」


 その言葉を聞いて、俺は驚いてしまう。

 俺の表情を見たのか、少し笑って話を続けた。


「珍しい話じゃないわ、オアシスグレイスは過酷な環境な故、普通に生活するのも厳しいの。 よく迷ったりするし、強い連中はうじゃうじゃいる。 現地の奴らは『炎砂の迷宮(えんさ めいきゅう)』って呼んでる。 そんな所は誰も踏み込まない。だからこそ、私たちはレア物として高く取引されるの」


「なるほど」


 聞いたところ、嫌な思い出しかないように聞こえるが・・・


「そんなとこに行きたい理由は?」


「生きていればいい事があるかもしれない。あの言葉はいいわ。 でも、きっと私1人じゃ探せないし、見つけ出すのはできない。 だから、アンタに着いていきたいの。 ダメなわけないよね?」


 満面の笑みを見せる少女だが、その笑顔の裏には何やら威圧感を感じる。

 連れて行かないと許さないぞ。そう言われている気分だ。


「・・・命の保証はしないぞ」


「知ってるわよ。 それに、私がいればオアシスグレイスまで1日で着くわ!」


 そうなのだろうか。

 嘘を言っている風には見えないが・・・

 アマンダは一直線に行けたとしても3日はかかると言っていた。


「なんでだ?」


 その質問に少女はまた大きな溜息を漏らす。


「本当に何も知らないのね・・・」


「悪かったな。何も知らなくて」


 そう言うと、少女は自身の耳を触りながら話す。


「私たちの種族は獣の姿になれるの、背中にあなたを乗せて走れば、すぐに着くわ」


「・・・ズルいじゃん、そんなの」


 そう言うと、少女はニヤリと笑い俺の手を引いてギルドを出た。


「あっちに着いたら服を買ってよね!」


「今来てるのじゃダメなのか?」


 そう言うと少女が俺を睨む、


「獣化したら服なんて弾け飛ぶに決まってるでしょ!」


 そう言う少女を見ながら、先に脱げば良くないか。 そう感じたが、言うのはやめた。


「早く行くわよ」


「え?すぐに?」


 そんなことをしている間にオアシスグレイスに続く道のゲートまで来てしまう。


「止まれ。ここから先は冒険者以外は通れない」


 門番に腕輪を見せる。


「そこの女。腕輪を・・・奴隷か?」


 門番の男は口を閉じ、少し考えた後に溜息を漏らした。

 ローブの下に見える汚らしい服が目に入ったのだろう。


「通っていいが・・・そんな装備で進むのは自殺行為だ。 耐火のポーションあたりを仕入れておけ」


 門番はそう言った。

 そんなに暑いのだろうか。


 炎砂というだけはある。

 俺は少女に視線を送る。

 少女は小さく首を振った。ポーションなど必要ない。そういうことだろう。


「あぁ、しっかり持ってるよ」


 俺はポーチを叩きながら言った。

 そんなものは要らない。そういえば簡単だが、もしかしたら通してくれないかも知れない。


 嘘でも着いておくのが得策だ。


「よし、いけ」


 俺たちは無事に通される。

 

「さぁ、行きましょうか。てか何しに行くの」


「影の情報集めだ、知り合い?の情報屋からオアシスグレイスに行けば何かわかるかも知れない。そう言われた」


 そう答えると。「あっそ」と冷たい返事が返ってきた。


「そういや、名前聞いてなかったな」


「そうだっけ? まぁ奴隷になった瞬間から名前なんて消えたみたいなもんだし、あなたが名前をつけてよ」


 と、少女に言われる。

 名前って大切じゃないか?

 そんな適当でいいんだろうか。


「・・・じゃぁ。 フィーニス」


「意味はわからないけど、響きは好きだわ。なら私は今日からフィーニスね」


 しっかり理由。由来はある。

 だが、ここで説明するのは、なんか違う気がした。

 

 そんな話をフィーニスとしてるうちに長い通路に終わりが見え、外に出る。


 出た瞬間に襲いかかるジリジリと肌を焼くような暑さに驚く。


「マジかよ」


「大マジよ。気を抜いたら死ぬわよ」


 吹雪のように砂が舞う。

 照りつける太陽が異常な暑さを感じさせ、赤く焼けたような赤茶の大地が視界には広がっていた。

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