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ShadowSraid  作者: 鬼子
炎砂の迷宮編
15/98

5

 〜View ???〜


 私はゆっくりと目を覚ました。

 さっきの攻撃で男の人が私を抱き寄せてくれなかったら・・・


 そう思うと全身が強張り固まってしまう。


 ーーそうだ・・・あの人・・・


 そう思いあの男を探すために周辺を確認する。

 すると視界に映るのは瓦礫の山ばかりだ。


 男の姿は見えない。

 どこに行ったのだろう。

 あの奇妙な黒い騎士の姿さえ見えない。


 倒した?

 あの男1人で?


 ーーありえない


 だとしたらもう死んだ?

 瞬間、嫌なことが頭をよぎる。


 ーー逃げた?


 次第に私の気持ちは沈み、過去の記憶が次々と蘇る。


 やっぱり冒険者ってそうなんだ。

 全く自分の事しか考えていないんだ。


 私のような異種族は迫害されてきた。

 もちろん、昔に比べればまだ良いと言われるが、昔は昔、今は今。


 昔の方が辛かったから、今は辛くないと言うことはない。


 石を投げられた、辱められた、心さえも弄ばれた。

 持つものは全て奪われ、次は正体不明の何かに居場所が壊された。


 確かにひどい場所だが、思い出がないわけではない。

 確かに、形にできない何かが、ここにはあったはずなのだ。


 私は視界に映る果物ナイフを手に取る。

 ギラリと光る冷たい刃は、私の寂しげな表情を写した。


 瓦礫・・・この果物ナイフは今私がいる場所に住んでいた誰かのものだろう。

 自身のためか、それとも帰ってくる誰かのためか・・・


 その人も思いも、もう瓦礫の下で潰れてしまっている。

 瓦礫の下から赤い液体がドロリと溢れ出し、視界を赤く染める。


 ナイフを首に当てる。

 皮膚が少し切れたのか、チクっとした痛みと温かい液体が少量流れる。


 冒険者は逃げた、または死んだ。

 なら、黒い騎士がこの場所を破壊し、人々を蹂躙するのは容易に想像できるだろう。


 なら・・・最後くらいは自分の意思で、自分の死に方で死にたい。

 自由が効かなかった人生。

 死に方くらいは自分で選ばれてくれたっていいじゃないか。


 ーーあぁ・・・本当に


「つまらない人生だった・・・」


 瞬間、はるか前方で爆発音がした。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 攻撃を回避し、地面を滑りながら着地する。

 外れた左肩をはめ、腕を回す。


「・・・え?」


 背後から少女の声が聞こえて視線を送る。

 かなり離れたつもりだったが、帰ってきてしまったようだ。


 首元にはナイフが当てられ、血が溢れている。


「逃げろ! まだ生きられる!」


 俺は叫ぶ。

 生きろ、ただそれだけだ。


 少女の体が一瞬跳ね。すぐに俺を睨む。


「無理だ! 銅級のアンタが・・・」


 その言葉を遮り俺は口を開く。


「その銅級がまだ生きてる! 皇都を襲った影と比べるとかなり弱い! コイツらに弱いやつと強い奴がいるのは驚いたがラッキーだった。 時間稼ぐから逃げちまえ!」


 少女は俺を睨み、牙を剥く。


「アンタに・・・!」


「死にたいのかぁ! 死んだら最後、何も出来なくなるんだぞ! 今まではゴミみたいな人生だったかもしれない! でも明日は最高にいい日かもしれない、まだ会った事ないだけで、心の底から愛せる人に出会える未来があるかもしれない! 立て!立って足を動かせ!」


 俺がそういうと少女は口を閉じ、ゆっくりと立ち上がる。

 ザッと砂を蹴る音が鳴り、その音は徐々に間隔を狭めた。


 黒い騎士は少女を見つめ、細剣を構える。

 貫くための姿勢か・・・腰をかがめ、穿つように構えた。


「お前らのそういう所がムカつくんだよ・・・逃げる人間最優先で殺そうとするところとか・・・人の命舐め腐りやがって・・・」


 瞬間、影の姿が消える。

 方向は少女。

 だが、狙いがわかっていれば防ぐことは簡単だ。


 俺は走り出し、影を追いかける。

 細剣が少女を捉え、突き刺さる瞬間に、剣を蹴り合げた。


 切先は少女に届く事なく、天に向けられる。


「・・・・・!・・・・・、・・・・?・・・・・!」


 奴は何かを話すが、俺に言葉は通じない。


「悪い、お前らが何言ってるかわからないわ」


 振られた細剣を回避し、身体に蹴りを一発。

 身体にはしっかりと芯が入っているように体幹がしっかりとしていた。


「硬い・・・それ、ガチの鎧かよ」


 俺はそう言いながら思い切り押すように足を振り切った。


 影の身体が浮き、数十メートル勢いよく滑る。


 その光景を少女はしっかりと観ていた。


「銅・・・級?コレが? 嘘でしょ?」


「嘘じゃないよ」


 少女の呟きにしっかりと腕輪を見せる。

 瞬間、瓦礫が舞い上がり、土煙の中から影が姿を表す。


 速度は申し分ない。

 普通の冒険者ならすぐに殺せる。


 細剣を突き出し、突撃の構え。

 勢いよく飛び出した影はまるで弾丸のように迷いねない攻撃を見せた。


 俺を貫くために出された剣を左手で砕く。

 腕を絡め取り、背負い投げのように地面に叩きつけた。

 影の身体が跳ね、苦しそうに咳き込む。


「小さくうずくまれ!」


 少女に指示を出すと、驚いた様子を見せたつつも体を小さくし、視線を逸らした。


 それを確認した直後、右手を握り、引き絞る。


 身動きが取れない影の騎士の頭部に一発叩き込んだ。

 鎧が潰れ、黒い液体が飛び散る。

 地面に亀裂がはいり、衝撃が伝わった。


 殴る。殴る。殴る。


 今までの怒りを、あの日の怒りを、全てぶつけるように。

 コイツらがいなければあの人は死ななかった。

 コイツらがいなければこの街は綺麗なままだった。


 ーーお前らがいなければ・・・・


「皆殺しだ」


 そう呟き、放った一撃は地面を抉り小さなクレーターが生まれる。


 血か、墨か。よくわからない液体に塗れた右手を開き、天を仰ぐ。


「倒・・・した?」


 少女が口を押さえながら俺を見つめる。


「あぁ、倒した」


「そんな・・・だって・・・銅・・・え?」


 かなり動転した少女を見つめ、ため息を漏らす。


「銅級とか関係ねぇよ・・・俺は・・・冒険者だ」


 そう言って少女の頭に手を置く。

 パシッと手を叩かれ、嫌がられてしまった。


「流石にこれだけ暴れたんだ。 帝都の衛兵がくるだろ。 俺は帰るわ、まだ宿とってねぇし」


 そう言い、俺は歩き出す。

 あ、そうだそうだ。


「なぁ、オアシスグレイスに行きたいんだけど、仲間集められるところ知らない?」


「仲間? アンタ1人なの?」


 少女は怪訝そうな顔をした。

 疑いか?


「悪いか? ずっとソロだよ」


「ふーん・・・ソロねぇ。 知らないけど、仲間になってくれそうな人なら知ってるわ。 明日の朝帝都のギルドに顔を出しなさい。 呼んでおいてあげる」


 それは助かる。

 かなりツンケンした態度だが、やはり何かしらの信念があるのだろう。

 過去を聞く気にはならないが、色々な経験をしている反面、顔が聞くのだろうか。


「ありがとう。じゃ」


 俺はそう言って貧困地域から上に上がる。

 下ではひどい争いがあったのに、あまり気にしていない様子だ。


 それに小さく舌打ちをして俺は宿を探し、休む。


 日差しが眩しく、目を覚ます。

 昨日の少女に言われたようにギルドに行き、4人掛けの小さなテーブルの一つに座る。


 頬杖を付き、待機する。


 すると、ギルドの扉を開けて入ってきたのは深い赤色のローブをした人物だ。

 顔も、体のラインすら見えない。


 その人物はキョロキョロと周りを見渡し、俺を見つけて近づいてきた。


 念の為短剣に手をかけ、相手を睨む。


 その人物向かいの椅子に座り、話し始めた。


「お兄さん。まだパーティは空いてる?」


 この人物が、あの少女が言っていた誰かだろうか。


 女性の声で聞かれ、俺は警戒をする。


「空いてる・・・が。人を待ってる、すまないが・・・」


 話そうとした瞬間、手を突き出し俺の話を遮る。


「アンタ馬鹿ね。察しが悪いの?」


 そう言って人物がフードを外す。


 現れたのは大きな耳と、金色の瞳。


「お前・・・」


「奴隷は嫌い? 売り込みに来たんだけど」


 現れたのは、昨日の少女だった。

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