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女を見つめながら話していると背後から声が響く。
「早く歩けよ! 日が暮れちまうぞ!」
「す・・・すいません!」
怒声にも似たそれに驚きつつも確認すると、男の冒険者3人くらいのパーティがいた。
その後ろには装備は着ているものの、お世辞にも戦えるとはいえない、そんな装備をした男の冒険者が1人地面に膝をつき、溢れ出た荷物も拾っていた。
「なんだ?」
「あんまり見るんじゃないよ・・・趣味の悪い」
女はそう言って、視線を逸らす。
「あれはなんなんだ?」
俺が問うと、ため息を漏らしながら鋭い目つきで話し始める。
腕を組んだ女は、ひどく機嫌が悪く見えた。
「・・・いわゆる荷物持ちさ」
「荷物持ち?」
そう言われ、再度見つめる。
「あまり見るんじゃないって言っているだろう?」
そう言われるが、気になってしまうものは仕方がない・・・
すると、違和感に気づく。
「後ろの1人・・・冒険者じゃないのか?」
なぜそう思ったのか。
違和感の正体には案外早く気づいた。
腕輪がないのだ。
冒険者には必ず腕輪がつく。
それは、腕輪がないと恩恵、寵愛を受けられないからだ。
「あれは冒険者じゃない。 奴隷兵士よ」
女は俺の腕を引っ張り、話す。
これ以上見るな。 そういうことだろう。
「なんで帝都がこんなに栄えてるか知ってる?」
「いや、知らない」
問いに答えると、女は人差し指を下に向けた。
「帝都の下には馬鹿でかい迷宮があるの。 帝都にいる冒険者は下で稼ぎ、上で暮らす。そんなことを繰り返しているうちに等級の高い冒険者が揃うってわけ」
俺は地面を見つめながら話を聞く。
「あいつらも今から迷宮に潜るのか」
俺がそういうと、女はゆっくりと小さく頷いた。
「奴隷戦士ってのはなんなんだ?」
そういうと、女は目を一度瞑り、開く。
開かれた目はナイフの様に鋭く、氷の様に冷たかった。
「帝都は広い。 アンタは何も知らないけど、帝都は二つの地域に分かれてる。 今いるのは普通地域。一般の人間と、冒険者が暮らす地域ね。 二つ目は貧困地域、冒険者になれずに、またはなんらかの理由で冒険者を引退。お金がなくて済む場所もない人間が集まる地域。 奴隷兵士は二つ目の地域、貧困地域からも見捨てられた奴が奴隷になり、雇われる」
「雇われる? それにしては扱いが・・・」
そういうと、女は深くため息を漏らす。
「荷物持ち・・・なんて言ったが、実際はただの肉壁さ。やばいときの囮。 よく見てみなよ。大事な荷物を預けるなら、もっとマシな装備を身につけさせるはずさ」
確かに・・・言われてみればそうか。
「でも・・・一つの手段としては有用だね」
「なに?」
女が漏らした一言に反応する。
「依頼の内容によっては、人数が限定されるものもある。高難易度は特にね。 でも、報酬を独り占めしたい奴は、奴隷兵士を雇って数合わせ。 最低限の装備を持たせて出発。 死んでも構わないし、生きてたら殺せば報酬は独り占め。 ね?簡単でしょ」
そう言った女はどこか寂しげだった。
「正直、砂漠を1人で闊歩するのはオススメしない。荷物持ちでも何でも、数合わせでも、奴隷兵士を連れていくのは悪くない手かもね。 アンタ次第だけど」
女はそう言って俺の横を通り過ぎる。
「おい・・・!」
「帰るんだよ。道案内は終わった。 用は済んだだろう?」
女は手を振りながら歩いていく。
「アンタの名前は!」
「聞いてどうするんだい?」
「店によったら指名しろって、そう言ってただろ、名前を知らないと指名できない!」
そう言うと女が振り返りニヤリと笑う。
「アマンダ。機会があったら来てよ」
「アマンダか・・・感謝する!」
それを聞いて、アマンダは笑いながら歩き出す。
背中は小さくなり、いずれ見えなくなった。
さて、仲間探し・・・
先に酒場か?
ウロウロしながら街を散策して、面白そうなものがあったら見てみよう。
街を歩くと、いろいろな店があり、笑顔が絶えない。
大人から子供まで笑っている。
綺麗な草木がある広場や、いい香りが漂ってくるパン屋など、様々なものが立ち並ぶ。
「やっぱり広いな」
広い帝都内を散策していると、誰かと肩がぶつかる
「あ、あぁすいません! すいません!」
ぶつかった男はかなり焦った様子で頭を下げる。
「あぁ、大丈夫だ。怪我はないか?」
「はい、ご心配なく・・・では! 本当にすいません!」
汗を流しながら足早に去っていく男を見つめる。
だが、あることに気づいた。
ぶつかった時にはかなりがっしりとした身体が感じられた。
軸はしっかりとしており、何か過去にしていたのかもしれない。
身体は大きく、筋肉質。
しっかりと食べ、体を鍛えた証拠だ。
だが、それにしては服装が貧相だ。
髭は生え、髪はボサボサ。
指には無数の傷があり、お世辞にも清潔感があるとは言えない。
そして、何かを探す様にキョロキョロとしながら足早に動く背中。
「おい、あんた!」
何か、大切なものでも無くしたのだろうか
俺は人混みの中、男を追いかけて肩を掴む。
男は驚いた様に振り返り、俺を見つめる。
先程は気づかなかったが、かなり顔色が悪い。
「何かあったのか?」
俺がそういうと、男は血走った眼球を激しく動かし息を吐いた。




