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ShadowSraid  作者: 鬼子
炎砂の迷宮編
11/98

1

 短剣と腕を使い深く穴を掘る。

 その穴に彼女の遺体を入れ、土を被せた。


 立ち上がり、空を見上げる。

 キラキラと小さな星が瞬いていたが、そんなものは気にならなかった。


 馬車に戻り、戸を叩く。

 馬車の中から男が出てきた。


「・・・お、お客さん」


「皇都に戻りたい。 今すぐに出せるか?」


 そういうと男は髭の生えた顎を撫でる。


「今からですかい?」


「報酬は倍払おう」


 俺は男を見ながらそう言った。

 男は一瞬だけ顔を強張らせるが、すぐに表情を戻す。


「お客さん。顔色が悪いですぜ」


「そうか? 大丈夫だ。気にするな」


 そういうと、男はめんどくさそうに馬車から降りて、操縦席に乗る。


「いきますよ」


「あぁ。頼む」


 馬車に乗り、扉を閉める。

 するとすぐに、馬車は動き出した。


 少し目を瞑る。

 意識をしなくても先ほどの光景が脳裏に浮かび、焼きつく。


 胸に怒りが渦巻き、胸焼けを起こしてしまうほどだ。

 一時的にでも忘れたい一心で、眠りについた。


「お客さん!」


 男の声で目を覚ます。


「皇都に着きましたぜ」


 馬車から降りると、確かに皇都の正門前だ。

 朝日が登り、眩しさに目を細める。


「・・・助かった」


 礼を言いながら報酬を渡し、皇都に入る。

 影に襲われてから、かなり復興が進んでいる。

 まだ倒壊している部分はあるが、あと数日も経てば完全に元通りだろう。


 まずはあの影が何かを知らなくてはいけない。


 情報屋はぼったくりも同然だ。

 脅したり殺したりして情報を奪うことも可能だが、すぐには吐かないだろう。

 もしかしたら、死ぬまで吐かないかもしれない。


 それに、情報屋を贔屓にしている冒険者もいるはずだ。 そんなことをすれば、あらゆる冒険者から敵対視されるに違いない。


 だとすると。


「酒場か」


 地方からの冒険者も集まり、情報が行き交う場所。

 誰もが知り得る情報程度なら腐るほど溢れかえる場所だ。


 酒場の扉を開け、酒を一杯注文して座る。

 すぐに運ばれてきた酒を傾けつつ、耳を澄ました。


 だが、基本は下世話な話ばかりだ。

 女がどうだ、男がどうだ。 そんな話の中に、武具や恩恵について話す人間が数える程度。


 そんな中、突然俺と同じ席に乱暴に座ってきた男がいた。


「誰だ」


「兄ちゃん。顔色がひでぇなぁ?」


 男はそう言った。

 かなり体格はいいが、ローブやフードで顔を隠していて素性がしれない。


「誰だと聞いている」


「まるで影の連中に知り合いでも殺された見たいな顔だな?」


 その言葉に、少しだけ反応してしまう。


「おっと・・・図星かい?」


「だったらなんだ」


 俺の言葉に男はニヤリと笑う。


「私は情報屋だ。あの影の正体知りたくないか?」


「知っているのか?」


 俺の質問に男は小さく首を振った。

 

「いいや、何も知らない。ありとあらゆる情報を探し、扱ったが、一ミリも知らない」


 俺は首を傾げる。


「だが・・・情報がありそうな場所を知ってる」


 男はそう言って、俺が飲んでいた酒を奪い、一息で飲み干す。


「取引をしないか? 俺がその情報をくれてやる、だが危険な地域だ。 だから、冒険者のお前さんが行って、確かな情報を俺に伝える」


「どうして俺なんだ?」


 そういうと、男は机を叩く。

 かなり大きな音が鳴った様だが、周囲の音が大きいためか、誰も気づかない。


「どいつもこいつも腰抜けばかりだ。 確かでもない情報のために命を投げてまで危険な場所に行くやつなんかいない」


 そう言った後に男は俺の顔に指を差す。


「だが、あんたのその目。 命なんか惜しくない。そんな顔だ。 死ぬ気で何かをやる奴の目だ」


 そう言って男は背もたれに深く体重を預ける。


「さぁ、どうするよ兄ちゃん。 やるか、やらないか」


 他に情報もない・・・

 コイツが言った通り、なんだってするさ。

 影の連中は根絶やしにする。


「あぁ、やる」


 男はパンと手を叩き、机に腕を乗っける。


「いいね、そうくると思ったぜ」


 ニヤリと男は笑い、近づいてきた。


「今回の襲撃では皇都もそうだが、小さな村や街がボロボロになった。 それこそ跡形もないくらいに。 噂では奴らは魔術書(グリモア)も扱うらしいじゃないか。 だが、そんな中ほぼ無傷な場所が2箇所」


「どこだ?」


 そう聞くと、男は小さな地図を開く。

 

「一つは帝都。 ここは赤等級がうじゃうじゃいる場所だ。 無傷、軽傷で済んでも違和感はない」


「もう一つは?」


 俺は男を睨み、問う。

 男は少し離れ、机を人差し指でトントンと叩きながら口を開いた。


「もう一つは『砂漠の都、オアシスグレイス』だ過酷な環境ゆえ、強い冒険者が集まると言われ、別名は英血の集会所。 赤等級もちらほらいるが・・・帝都ほどじゃない。 それに、今は隔離されていると言っても過言じゃない」


 その言葉に俺は首を傾げた。


「あそこは金等級以上の化け物がウジャウジャいやがる。 帝都からの物資は途絶え、常に貧困、飢餓状態。 魔王がいなくなってから地下にある迷宮(ダンジョン)の中の魔物は凶暴化。 死者が絶えない。 そんな中、影を退いたんだ。 気になるだろう?」


 男は地図を畳みながら話を続ける。


「兄ちゃんが行くのは、中も外も化け物がウジャウジャいるクソッタレな砂漠だ。 オアシスグレイスは砂漠の真ん中。 並の冒険者なら、1時間生き残れたら賞賛ものだ。 生き方は帝都を経由して北側。頑張れよ」


 そう言って男は酒場を出て行った。

 最初に目指すのは帝都か。


「あ、そうだ」


 去ったはずの男が戻ってきて頭だけ出している。


「帝都に行ったら、最低一人は仲間を見つけてパーティを組め。 じゃないとすぐに死んじまうぞ。 じゃあな」


 そう言って去って行った。

 帝都・・・どんなところだろうか。

 俺を治療した神官も帝都からの派遣だ。


 何か見つかるといいが・・・

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