現在
ヘラクレスが扉を開けるとそこには女性が立っていた。金色の髪を後ろで結っていた。そして唇の横には小さなほくろがある。
「大丈夫ヘラクレス?大きな声がしたんだけど………」
ヘラクレスは平静を演じて答えた。
「大丈夫だよ、ただゴキブリが出てびっくりしたんだ」
そういうと金髪の女性は呆れた顔をする。
「全く………ヘラクレスって本当に虫が苦手なのね。男のくせに」
そう言われてヘラクレスは笑って誤魔化すしかなかった。
「ハハハ、ごめんね。ところで、ヘレナみんなはもうもしかして……」
女性の名前はヘレナ。彼女は腰に手を当てて唇を尖らせて答える。
「みんなもう準備出来てるわよっ、早く着替えて降りてきてよね!」
そう言ってヘレナはスタスタと宿の階段を下りて行った。
あの日から十年、ヘラクレスは十七歳になった。ヘラクレスは今ルクサエテルナ王国で冒険者をしている。冒険者とはダンジョンを攻略したり、依頼者の依頼をこなすといった職業だ。
というのも冒険者という職業はここ数年に誕生した。ラファエルの反逆以降、世界に魔物が蔓延った。そして人類には魔物に対抗するため十分な備えが当時なかった。国家の軍隊は容易に動かせないし数は多くない。
なぜなら元は動物から人を守るためだけに作られた。この時代狩人以外の職業の人類は基本的に戦いの素人であり簡単にライオンなどの肉食動物に簡単にやられる。
しかし軍人の給料は高くなく、そして訓練は厳しいため誰もなろうとしなかった。なので軍人というのは基本的に親を無くして育ててくれる人がいない子供が生きるためになる職業となった。
軍人はほとんどが子供の時から訓練し、共に育つためその絆は固い。しかし欠点として孤児は少なく、そして軍人は結婚をすることはあまりなく二世軍人も中々いない。
そのため魔物が下界に来た翌年、人類は対策を考えてできたのが冒険者組合。冒険者という職業は非常に自由度が高くそして依頼によって報酬は高い。その上ダンジョンを攻略すると宝が沢山あったりする。
このダンジョンというものはかなり不思議なものであり、ある日突然として現れた。中にいるのは魔物みたいな魔物もどき。その魔物どもは倒すたびに増え続けるが、ダンジョンよりあふれ出たりしない。そして宝をゲットできる宝箱のシステムが実に不思議だ。
ダンジョンなるものはまるで、人類が魔物に対抗するために作られた訓練施設のようなものだ。しかし当然魔物もどきにやぶれると人は死ぬ。しかし魔物と違い心臓を食べようとしてきたりしない。おまけに魔物は死ぬと実態が消えて魔石なるものを落として、それが何かしらの資源となり売れる。
ヘラクレスは顔を洗い、服を着ると階段を下りて食堂に向かった。食堂には既にパーティーメンバーがいた。
ヘレナ以外のメンバーはグレン、ヒューイそしてエレナがいる。
ヘレナは素手での肉弾戦が得意の前衛でとても頼りになる。
グレンは筋肉隆々の顎髭を生やしてる大柄の男で大盾と剣を使い、基本的には魔物を挑発して注意をひいたり、味方を守ったりする。
ヒューイはローブの帽子を深く被っている男性にしては華奢な人で主に魔法を使い味方のカバーをする。例えば回復魔法で味方の傷を小回復したり、魔術を飛ばして味方の援護や物理攻撃が効かない魔物を攻撃する。
エレナは露出激しめな服をきているじょせいで、パーティーのリーダーである。基本的に魔法以外のことは全部そつなくこなせる。リーダーなので基本的に後衛にいて指示を飛ばしたり、後ろの警戒をしたりする。
あれから十年たったヘラクレスはグレンほど筋肉があるわけではないがかなり鍛えられた体をしている。主にダンジョンでは罠の警戒やマッピングをしたり、そして斥侯をして情報を得ている。戦いでは前衛のカバーをするような役割に徹している。
ヘラクレスに気付くとエレナは責めた。
エレナが宿の食堂で足を踏み鳴らしていた。「もう、ヘラクレスったら遅いわよ!いつまで寝てるの?」
ヘラクレスは小走りに近づき、微笑みながら両手を合わせて謝罪した。
「ごめん、ごめん。ちょっと寝坊しちゃって。遅刻した分は、今日の任務で余分に頑張るから。」
エレナは顔をしかめつつも、小さくため息をついた。
「全く、次はないからねっ」
グレンはヘラクレスの肩を抱き歩き出した。
「全く、エレナもそんな怒らなくていいじゃないか。危ないところはいつもヘラクレスに助けられて感謝の一つもないたぁ、冷たい女だよなぁ」
ヘラクレスはエレナを庇う。
「まぁ、遅刻した俺が悪いんだし。エレナはただ天邪鬼なだけで俺は気にしてないさ」
「そうか?お前がそういうんならいっか」
そういうとグレン「ガハハハ」と笑った。
ヒューイは特に何もしゃべらなかった。彼は基本的に無口で必要な時にしか言葉を発しない。
そんな感じでヘラクレス一行はダンジョンへ向かった。