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シャルム  作者: エイエンノ・チュウニビョウ
第一章 
7/13

消えたジェシカ(2)

村へ帰ると噴水広場で人だかりが出来ていた。不思議に思ったジョンとヘラクレスは人だかりへと足を運んだ。人だかりが出来てにたどり着いたが人が多くて何があったのか分からなかった。そのためジョンは野次馬の一人に聞いた。


「あの、どうしたんですか?」


ジョンがそう聞くと振り返った男がジョンとヘラクレスの姿を見ると大声でいった。


「ジョン⁉それにヘラクレス⁈お前たちどこへ行ってたんだ?ジェシカが倒れているぞ!」


二人は急いで人をかき分けるとそこにはジェシカが倒れていた。しかしそれはいつものジェシカの姿ではなかった。


そこにいたジェシカは、足の体の所々が黒ずんでおり、顔はとても苦しそうな表情だった。


「ジェシー⁉」


「ジェシ姉ちゃん⁈」


二人はジェシカのそばへ駆け寄った。しかしジェシカからの返答はなかった。それどころか、目を開けすらしない。普段明るく元気なジェシカが、今では病弱で苦しそうな姿になっていることに信じられない悲しみを感じた。


野次馬の男は続けた。


「丁度森へ入った木こりがいい感じの木を探してた時に見つけたんだ。森の中間のところで見つけて急いで連れ帰って来たんだご覧の有様でな……」


ジョンとヘラクレスはジェシカの傍に駆け寄り揺さぶった。


「ジェシー……どうして?」


ジョンは膝から崩れ落ちて、ただジェシカの手を握るしか出来なかった。


「ジェシカ姉ちゃん?起きて……起きてよッ」


そんなヘラクレスの悲しみをよそに、ジェシカは一向に目を覚まさない。


二人の傍にはジェシカの母親がおり、膝を地面に付けて無気力な様子だった。彼女は両手で口を抑えていて、嗚咽が聞こえた。


ヘラクレスは未だにそんな現実を受け入れられずにいた。


「そ、そんな……」


ヘラクレスは地面に叩きつけるようにして泣き崩れ、「まだ姉ちゃんに謝ってないのに…」という自責の念に苛まれた。その瞬間絶望、無力感、そして自責の念が入り混じり、ヘラクレスの心は感情の嵐にさらされていた。


ヘラクレスは手を震わせながら、自分ができることが何もない無力感に襲われた。彼はかつてないほどの絶望的な感情に押し潰されそうになりながらも、ジェシカの傍に駆け寄り、何かできることはないかと手探りで探した。


そこに騒ぎを聞きつけてジェシカの父親がやってきた。ジェシカの父親は娘の肩を揺さぶり、何度もそして何度も娘の名前を呼んだ。当然が如く、ジェシカが返答をしたり目を覚ましたりする素振りは全くなかった。


耐えられなくなったのかジョンは逃げ出すようにその場から走り去った。


するとそこへ村の神官がやってきた。


「どいてください!とりあえず彼女の状態を見ます‼」


すると母親は神官の両肩を掴んですがるように頼んだ。


「神官様!どうかッ、どうか娘を助けてください⁉お願いします‼お願い致しますッ」


「できる限りの事は尽くします、なので手を離してください!」


神官は冷静に答えるとジェシカの父親が母親の肩を抱いて引き離した。そしてただ頭を下げてお願いした。


「わかりました……どうか、娘をよろしくお願いいたします」


そして神官はジェシカの状態を見始めた。


***


あれから数日たったが未だにジェシカの容態が回復することはなかった。神官が話すにはジェシカの体を犯している病の正体は不明だ。そんな宣告を受けた母はその事実に耐え切れず、その翌日に家の台所で自らの命をたった。


一気に愛する娘と妻を失ったジェシカの父親の悲しみは計り知れない。それでも彼は自らも命をたつなどといったことはしなかった。彼は仕事を続けながら必死に娘の世話をした。いつか娘が目を覚ますかもしれないと。


ヘラクレスはすぐにジェシカの家に赴き、何があったかを話した。ヘラクレスはジェシカがこうなったのは自分に責任の一端があると話し、謝った。そしてなにか自分に出来ることはないかと聞いた。


父親はヘラクレスの謝罪を受けたがその提案を一蹴した。そしてヘラクレスに向かってこう言った。


「頼むからもう娘には関わらないでくれ」と。そして「二度と顔を見せないで欲しい」とも頼んだ。


ジェシカの父はヘラクレスを許したかったが今の娘の状態を見ると心の底からヘラクレスへの怒りが湧き出る。ヘラクレスは直接的な要因ではないのは分かっていた。理性ではわかっていたが感情の面では許せなかった。間接的な要因で愛娘がこんな目にあっただけにあらず、愛する妻まで失うことになったのだから。


謝罪は受け入れられたが、二度とジェシカへの接近を拒絶されたヘラクレスは絶望に打ちひしがれた。己の天邪鬼さ、愚かさそして無力さを呪って。


ジョンはあれ以来家に引きこもって姿を現さなくなった。あんなに社交的で優等生のような存在だったジョンがそうなったことに。ジョンの両親曰くジョンは部屋からも出てこず、部屋の外に置いた食事もとっていないらしい。

村人たちは驚きと同時に、ジョンの急激な変化に戸惑っていた。かつての優等生が引きこもりになるなど考えられないことだった。彼らは村の中で口々にジョンのことを心配して話し合い、その理由を知りたがっていた。


村人たちはしばしばジョンの家を訪れ、彼がどうしているのかを確かめようとしたが、ジョンは一度も出てこなかった。村人たちは手紙を書いたり、食べ物を置いていくなどして、彼に対する思いやりを示そうとしたが、一向に応答はなかった。


ジョンの引きこもりが続く中、村人たちは彼をどのようにサポートすべきかを検討し始めた。地域の長老たちは集まり、ジョンの心情を理解し、必要ならば専門家の助けを借りることを提案した。しかし、どれだけ村人たちが助けようとしても、ジョンはその影響から逃れているかのようだった。


一方で、ヘラクレスは自分が引き起こした出来事に対して深い悔いを抱えていた。彼はジェシカの家を訪れ、父親から受けた拒絶に耐えながらも、何か役立つことができないかと何度もまた尋ねた。しかし、父親は感謝はするものの、ヘラクレスがジェシカに接触することを一向に許さなかった。


ヘラクレスはそれでも何かできることはないかと模索していた。彼は他の村人とも話し合い、ジョンの変化やジェシカの病状について情報を集め、それをもとに何か手がかりを見つけようとしていた。


この困難な時期を通して、ヘラクレスは徐々に成長していった。彼は自分の過ちから学び、他者のために何かできることを見つけるために奮闘していた。彼の心の中で新たな決意が芽生えていた。


しかしそんなヘラクレスの努力も虚しく、事件は起こった。


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