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シャルム  作者: エイエンノ・チュウニビョウ
序章
4/13

大天使ガブリエルとミカエル

翼を切り取って持ち帰るのは現在でいうと軍隊にある首にかけてる兵士のタグを回収すると同じような意味を持ちます。天使の羽に鑑定魔法をかけることでその天使の名前が浮かび上がってきます。死体を持ち帰らないのは死体処理が面倒だからです。なので天界の一般常識として生きてるうち翼は切り取られることはそいつが死んだと同じ認識です。

「ここにいたか、ラファエル」


どこかからそんな声が聞こえた。声の方を見ると、ミカエルとガブリエルの姿があった。無実の罪をかぶせられた私は怒りと憎しみに満ちた目で彼らを睨んだ。


「ごめんラファエル、僕も君が犯人ではないと信じたいけど物的証拠が多すぎる。それについさっき熾天使様から命令を受けたんだ……」


ガブリエルは目をそらしてその命令を私に告げた。


「熾天使様はこう仰った、堕天使ラファエルを見つけ次第処断せうお、と。」


ガブリエルは悔しそうに拳を握った。


「ふざけないで!堕天使ラファエルってなによ!?私は、私は堕天してなんかいないッ……」


怒りと共に、私の声が震えていた。彼らの前に立つ自分が、まるで風に揺れる葉のように感じられた。


そしてガブリエルはただ一言「ごめん、ラファエルッ」ととつぶやくと、加速して一気に私との距離を詰めた。そして、彼の手が私の胸を貫いた。ガブリエルは顔を私の耳元に近づけ、囁いた。その声泣いているようだった。


「ごめんッ、ごめんねラファエルッ……どうにもできないんだ。熾天使様の命令は絶対なんだ。きっと君と僕の立場が逆だったら、君も同じことをするさ。本当にごめんねッ……」


彼の言葉に、私は何も言い返せなかった。痛みが全身を支配していく中、私はガブリエルとの過去を思い返した。同じ大天使として、私に最初に歩み寄って來たのはガブリエルだけだった。それに続くようにミカエルは少しずつ私を理解しようとし始めたんだっけ……?


「ガブリエル……」そう呟くと、心の中で何かが弾けた。彼への感情が今まで気づかなかった愛だったことに、私はようやく気づいた。しかし、その愛を自覚した瞬間、ベリアルの顔が脳内をちらついた。それも愛?でも、何かが違う……ガブリエルへの愛とは別の、深い何か。


ガブリエルは私の胸から手を引き抜くと優しく私を地面に寝かした。そして私の手を握りしめて優しく言った。


「信じてほしいッ……ラファエルッ!?ぼくは、僕は必ず君の無実を証明して見せるからッ……きっとッ」


悲痛なガブリエルの言葉と涙によってぐちゃぐちゃになったガブリエルの顔を見て、私は微笑んだ。そしてゆっくりと視界が暗くなっていくのを感じた。


しかし暫くするとこんな言葉が聞こえた。「終わったかガブリエル」とミカエルが尋ねると、ガブリエルは答えた。


「やっと死んだよ、こいつ。本当に鬱陶しくて面倒くさい。」


そんなガブリエルの言葉を聞いたミカエルは驚いた声で聴き返した。


「驚いた、てっきりお前は彼女と仲がいいと思っていた」とミカエルが言うと、ガブリエルは「ふっ」と冷笑しながら話し始める声がした。


「仲がいい?彼女と?冗談はよしてくれ。利用してただけさ。彼女は優しいからね。いつか何かの役に立つと思ってたんだ。」


するとザグザグと私は翼を切り取られる音を聞いた。ガブリエルはもう私が死んだのだと思っているかのように好き放題話す。


「そしてこれがどうやら彼女の利用価値だったみたいだね。」


私の翼を切り取ったガブリエルがコツコツと足音を鳴らして離れていく音がハッキリと聞こえる。


「それにもし僕が君たちみたいに彼女に嫌がらせをして今日みたいなことがあったらもしかしたら復讐心で本当に堕天使になって復讐されるかもしれないからね。でも仲良くしとくと、彼女は僕との仮初の友情に縛られて許してくれるでしょ?」


言い終えると私への利用価値がもう無くなったのか、ガブリエルの翼が羽ばたく音が聞こえる。そしてミカエルは大声で笑った。


「ハッハッハッ、ガブリエルよ、お主かなりの性悪よのぉ……」


彼らの空を羽ばたく音が段々と遠のいていくのを感じる。体中が冷たさに襲われる中で、私は思った。私は、一体何なのだろう?死の間際で愛を知り、裏切りを経験し、今、死にゆくこの瞬間に、心に存在するこの言い表せない感情は一体……そして、ベリアルに対する感情は……な、に……?


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