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シャルム  作者: エイエンノ・チュウニビョウ
序章
3/13

堕天使ベリアル

この世界では天使の位がたかければたかいほどそれは人が想像する天使の姿からかけ離れていく。逆に位の低い天使は人間に似た見た目をしている。理由として上位天使らは下界へ出向く必要がないため下界の一般的に生き物の姿形がわからず結果として文献でのみしった下界の生き物の色んな部位を組み合わせ己の姿を形成している。逆に位が低いと人類とかかわることがおおく彼らから少しでも親近感を得るために人に近い姿をしている。

「おい天使、いつまで寝ている。」

そんな声が私の耳に届いた。眠りから覚めると、周りの環境がぼんやりと明るくなっていくのを感じた。そして、肩を強く揺さぶられた感触が私を現実に引き戻された。揺さぶる手は粗暴で、私は一瞬呆然とした。しかし、その後、意識がはっきりと整理された。

「あなたは…っ!?」私は思わず声を荒げた。

思わず身を起こそうとしたけど、その瞬間、激しい痛みが彼の体を襲った。その痛みは瞬く間に彼の全身を支配し、私を苦しめた。ベリアルはそんなわたしを気にもせず優雅に着地した。

私は急速に記憶を辿る。ミカエルとガブリエルによる裏切りの策略、神聖ザフィール国での儀式、そして何かが解放されたあの瞬間。

「くっ、ふふふふっ。あっははははははははは!」

これまでの事を思い出せば出すほど口から零れる笑い声は次第におおきくなっていった。奴隷の如く働かされる日々、それでも一生懸命頑張っていた。いつか認められるようにと、主が帰ってきさえすれば上座で偉そうにしている上位天使にこき使われることもないと。

昔読んだ本に書いてあった。

かつて、この世界は神人族によって統治されていた。彼らは、今でいう天使たちの先祖であり、神々しい力を持っていた。しかし、その中にも階級が存在し、上級神人と下級神人に分かれていた。下級神人たちは、上級神人の欲望のために馬車水のように働かされていた。

ある日、全てを見通す主が舞い降りた。主は、怠惰を貪り、下級神人を虐げる上級神人たちに怒りを示し、罰を与えた。これに激怒した上級神人たちは反乱を起こし、世界は戦争の渦に巻き込まれた。下級神人たちは、圧倒的な力の前に敗北を重ねたが、主は彼らに助言を与えた。「下界の民を巻き込むのだ」と。

やむを得ず、下級神人たちは下界に降り立ち、人類を戦いに引き込んだ。上級神人たちは侮っていたが、下界の民は驚異的な発展を遂げており、彼らの力は天界の者たちに匹敵するものだった。

そして始まったのが、「天と地の戦い」。この戦いは次第に激しさを増し、ついにハルマゲドンの戦いへと発展した。この戦いは、一瞬にして長きにわたる争いに終止符を打ったが、その代償は大きかった。天界と地界も大きな損害を受け、人類は一度滅びた。

戦いが双方に利益をもたらさないことを悟った神人族は和解し、主を神として崇めることを誓った。彼らは自らを「天使族」と名乗り、主に永遠の忠誠を誓ったのだ。

しかし、主がこの世界を去ってから既に数万年。主は未だに姿を現さず、上位天使たちは再び暴走を始めた。下位天使たちは、主の帰還を信じ、待ち続けていたが、その信念は次第に揺らいでいた。

「私は愚か者だったのだろうか」と、思わず独り言を呟いた。もう数万年も姿を見せていない主が、いつか再びこの世界へ戻り、全てを正してくれると信じていた。しかし、それはただの幻に過ぎなかったのかもしれない。そんな疑問が、私の心を重くするのだった。

そんな私の姿を見て彼がおかしそうに笑った。

「面白いやつだ、独りでに壊れた。」

天と地を結ぶ空の中、堕天使ベリアルがその存在を示していた。彼はかつての高位な天使であり、そのためにおぞましいほど異形の姿をしていると思われていた。しかし実物は全く違った。

ベリアルは、想像とは裏腹に、驚くほど人間に近い姿をしていた。一般的に、人間の顔は一般的に卑しさを象徴する。天使や神に媚びる彼らの姿勢が、その表情に反映されているのだ。しかしベリアルの顔には、そんな卑屈さのかけらもなかった。


相変わらず彼の顔は、気高く上品で、周囲を圧倒するカリスマ性を備えていた。堕ちた天使である彼の瞳には、かつての栄光と堕天の悲哀が混在しているようだった。彼は天使としての地位は高かったはずだが、その位の高さがもたらすはずのおぞましさとは無縁の、人間のような容姿を保っていたのである。

空を見上げた私は、その姿に恐れと畏怖、そして奇妙な憧憬を抱いた。彼らはベリアルの存在に翻弄されつつも、彼の持つ不思議な魅力に引き込まれていった。相変わらず堕天使ベリアルは私を見て微笑んだ。その微笑みはまるで私の心を翻弄するかの如く鋭く私の感情をかき乱した。

ベリアルは私を見据えているようでいて、その深遠な瞳はまるで私を捉えていない。彼の姿は余りにも魅力的で、私の心を混沌とさせている。彼の存在は、私の内なる感情をかき乱し、一種の嫉妬の炎を灯している。私は彼のようになりたいと願い、彼のような漆黒の翼を持ちたいと切望している。彼の気高さ、彼の傷にさえ憧れを抱く。

しかし同時に、ベリアルの存在は、私の内なる海に静かに波紋を生み出している。彼を見るたびに、その波紋はやわらかく広がり、私の心を未知の領域へと導く。彼の姿は、私の心の奥深くに潜んでいる何かを、静かに呼び覚ます。それは春の花が開くように、静かでやさしいものだ。

だけど、その願いと同時に、彼に対する憎悪の感情もある。自分の惨めさは自分自身のせいだと知りながらも、彼のせいで、その惨めさがより一層際立って見える。彼の光が、私の闇を余計に深く見せている。

苛立った私は声を荒げた。

「誰のせいだとおもっているのよ!あんたのせいで自分がみじめに感じるわ!?」

するとベリアルは不思議そうに首をかしげた。

「おや、それは可笑しい話だ天使よ。なぜ私のせいになるのだ?」

その言葉をわたしが理解できなかったのを見てベリアルは言葉を続けた。

「そなたが自分を惨めに感じるに至った経緯は知らぬが、完結にまとめるとそなたはかなり自己評価が高いのだな。」

自己評価が高い、そういわれて思わず胸が苦しくなった。ベリアルはわたしのことなど気にしないまま話を続けた。

「要するに天使よ、そなたは自分より身分の低い者どもを下に見て軽蔑していながらどうやら、自分より身分の高いものどもに不公平を感じている。しかし身分の違いを理由に精進することを諦め、できて当たり前なことをこなした自分を無意識に高く評価したのだ。そして生まれさえ良ければと永遠に責任転換を続けている。」

「黙りなさいよ……」

私は彼の言葉を遮ろうとした。しかし、私の心は彼の言葉によって混乱していた。私は自分の感情を整理しようともがきながら、彼を見つめた。

「結論として……」ベリアルは静かに続けた。

「黙りなさいと言ってるでしょ!」

正論を言われ続けられたわたしはとうとう現実逃避をするかのようにベリアルの言葉を遮ったが、内心では彼の言葉の意味を探っていた。私は彼の言葉に反論しようとしたが、心のどこかで彼の言葉に一理あると感じていた。私は混乱し、言葉を失った。

ベリアルはそんなわたしを見ると興味を無くしたかのように背を向けてきた。

「時間を無駄にした、お前もくだらない存在だったな。」

ベリアルは翼を勢い良く広げ飛び立とうとした瞬間、わたしは思わず彼を呼び止めた。

「待って!」

その言葉にベリアルは反応して飛び立つのをやめたが相変わらず背をこちらに向けている。彼は何も言ってこない。暫くの間沈黙が流れて気まずい空気が漂った。ベリアルは相変わらず背を向けたまま何も言わない。

「あ、あなたはなんで堕天したの…?」

「…愛を知ったからだ。」

愛、それはおよそ天使とは無縁に近い言葉。わたしは益々わからなくなった。

「あい…?」

「そうだ、愛だよ!」

勢い良くこちらに振り向いてきたベリアルは話を続けた。

「その日、わたしは愛を知ったのだよ。不思議なことだろう、天使が愛を知るなどと。」

ベリアルは面白おかしそうに笑った、しかしその表情にわたしは見とれてしまった。

「いつか君も知ることになるさ、どうやら君の本質は私たちに近いようだからね。」

そういうとベリアルは再び翼を広げて空を羽ばたいた。宙を舞うその姿はまさしく悪魔そのものだった。上位天使とはまた違ったベクトルの恐ろしさを感じたが不思議と嫌悪感はなく、しかしなぜか見とれてしまう。

「ではさらばだ天使よ!」

「あっ、待って!!」

去ることは知っていたがなぜか呼び止めようとした、しかしそんな言葉はまるで届いていなかった。


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