日常の終わり
エレナの前には三人の男が正座していた。左からグレン、ヒューイそしてヘラクレス。いつもダンジョン攻略の時は頼もしかった三人の背中がこの時だけ蟻のように小さく縮まっていた。
小一時間ほどエレナの絶えない説教は大の男三人を萎縮させるほどの厳しさと迫力があった。
「エレナ、もうそれくらいでいいんじゃないの……?ほら、もう三人とも深く反省してるようだし……」
ヘレナの言葉にエレナはため息をついた。
「ヘレナ……あなたは甘すぎるわ!でも、そうね、私も疲れたからこのくらいにしてあげる。もう朝から騒ぐのはやめてよね!」
エレナの気迫に有無を言えなくなった三人は右手を頭に当てて敬礼した。
「「「イエス、マムッ」」」
「全くもうッ」とプンプン起こりながらエレナは階段をに昇って部屋に戻った。
「みんな大丈夫?立てる?」
ヘレナはそう聞きながら一人一人を立ち上がるのを手伝おうとした。長時間の正座で足が痺れて自力では立ち上がれないと慮ったのだろう。
しかりグレンは「俺は大丈夫だ」といい自力で立ち上がり同じく階段を上がる。ヒューイは浮遊魔法を使って自分の体を二階の自室に運んだ。
ヘラクレスだけが自力で立ち上がれなかった。
ヘレナは自分の華奢な肩をヘラクレスに貸して階段を上るのを手伝った。
「ありがとうヘレナ、もう大丈夫だよ」
部屋の前に到着したヘラクレスはヘレナにお礼をいう。
「本当に?昨日あんな大怪我を負って地面に一時間くらい正座してたんでしょ?」
「いや、本当にもう大丈夫なんだ。その……これ以上は勘弁してくれないか?」
ヘラクレスは体に押し当てられるその感触を気にせずにはいられなかった。
ヘレナは首を傾げて「何のこと?」と訪ねた。
「いやっ、わかってないならいいんだ!全然ッ」
逃げるようにヘラクレスはヘレナから離れていく。あのまま姿勢でいたら理性は失われていたのであろう。
ヘラクレス達は数日間パーティー活動を休むことにした。
それはヘラクレスの体の状態を考慮してのことだった。このまま怪我した状態でダンジョンに挑むと本来の連携力は発揮できない。それはヘラクレスだけでなくみんなに危険が及ぶとエレナは結論を出した。