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クレストル王立第一軍学校第68期 ファントム・ブラッド2

 

 ―――クレストル王国王都ゴダール館(王宮・通称御館)―――


「―――という訳で今回の事件は非政府主義者達の内の過激分子達の暴走によるものの様です」


 閣議室に集まった首脳達を前に宰相ゲルト・ボーデンハウス侯爵が第一軍学校で起きた王女暗殺未遂事件の概要と背後についての調査結果を明らかにした。


「宰相殿、それは非政府主義組織PCP(power of common people、庶民の力)本体によるものではないという言う意味ですか?」


 質問したのはクレストル王国軍参謀部副議長カーラ・ボルデンハイム侯爵。二十年前にクレストル王国がデミルズ地方を統一した時の『統一三傑』の一人で宰相ゲルト・ボーデンハウス侯爵の実姉であり、ライデンとリンネの母ミアナ・ポンフォス・サーガの側近である。


「はい、『闇の目』の報告では王都のPCP支部では上を下への大騒ぎで、王都支部を閉鎖して逃亡する事も検討されているようです」


 ゲルトが答える。


「ふむ、昨夜の今日で随分と早い手回しですね。それで事前に察知する事は出来なかったのですか?」


 この発言は参謀部議長アンヌ・タヌルバルド侯爵のものだ。カーラと同じく『統一三傑』の一人で『魔女アニー(アニー・ザ・ウィッチ)』の異名を持つ切れ者の軍略家だ。


「残念ながら先ほども言った通り主流派ではなく、はみ出し者たちの暴走であった為に情報が掴めなかった様です。元帥殿、御息女を危険な目に遭わせてしまいました、申し訳ない」


 ゲルトが頭を下げた。


「いやいや、『闇の目』と言えども全知全能の神ではない、致し方ありますまい。それにあの子たちには幼い頃からみっちり刀術を仕込んでありますので、そんじょそこらの刺客風情に遅れはとりませんよ。それよりも息子の方が騒ぎを起こしたそうで・・・」


 そう言って頭をかいたのはクレストル軍元帥リキ・サーガ侯爵、『統一の大英雄』・『統一三傑の筆頭』などと言われ、将官時代は『幻影(ファントム)』とあだ名された名実ともに世界最()の将であり、ライデン・リンネの父親でもある。


「いえいえ、ライデン様が何かした訳ではなく一緒にいた者が窓を破って女子寮に侵入したのですよ」


 ゲルトがそう言ってリキを宥める。


「しかし入学初日から騒動を起こすとはさすがはリキの息子です。血は争えませんね」


 そう言って笑うのは財務大臣セイア・レシゲネ男爵(女性)だ。彼女もまたミアナ元女王の側近で、主に政治方面で高い知見を発揮する。

 するとカーラがセイアを(たしな)める。


「おいセイア、一応正式な閣議だ。元帥と呼んだ方が良かろう」


 しかし、リキがそれを否定する。


「まあいいだろう、御前会議という訳じゃないんだから。ここには気心の知れたヤツしかいないんだし、俺もその方がやりやすいよ」


「ふふ、そうですね、いいではありませんか姉上」


 ゲルトまでもが賛成に回った。


「はぁ・・・仕方がないな。で、リキどうする?警護の人員を増やすか?」


 カーラもあきらめて口調を改める。


「いや、必要ないだろう。さっきも言ったが、あの子たちは刺客なんぞに遅れはとらんよ。逆にあの子たちの手に負えない相手ならば護衛では役に立たんだろう」


 そう言うリキにアンヌが意見を述べる。


「ライデン様とリンネ様はそれでよいかもしれませんが、リィナ様はどうなのですか?むしろそちらの方が心配なのですが」


「リィナに関しても問題ない。あの子も剣は使うし、何よりもリィナの側にはドリスがいるからよっぽどの事がない限り心配ないと思うぞ」


 リキとミアナの長女、王位継承権第二位のリィナ・パルディオス・サーガには護衛としてドリスという剣士が常に付き従っていた。その実力は国内でも有数のもので、過去二年間の軍学校対抗戦でも無敗を誇っている。


「そうだな、軍学校の方はそれでよかろう。問題はPCPの方か・・・」


「リキ、どう思いますか?」


 カーラのつぶやきを受けてゲルトがリキに尋ねる。


「う~ん・・・あまり大騒ぎをするのもいかがなものか・・・」


「なぜです?」


「あいつらはさ、ノイジーマイノリティなんだよ。ほとんどの民は王家の統治に賛成してくれているし、不満もないんだ。騒いでいるのはごく一部の人間で、奴らの狙いは騒ぎを起こして自分達に注目を集め、その主張を民に訴える事なんだ。だから騒げば騒ぐ程奴らの思うつぼって訳なんだよ」


「私もそう思います」


 意見を述べたのはセイアだ。


「元々PCPは政治思想団体、一部が過激化しているものの主流派はあくまで穏健に政治的権利を獲得する事を目指しています。ここで騒ぎを大きくして非主流派を勢い付かせるよりも、粛々と犯罪者を検挙し裁く方が良策だと思います」


「私もセイアの意見に賛成だ」


 カーラが賛意を示す。


「それが良いでしょうね」


 アンヌも同意の様だ。

 司会役のゲルトが意見を集約する。


「それではPCP本体への手入れはせずに、今回は実行犯のみに留めるという事でよろしいですか?」


 ゲルトの問いかけに一同は沈黙を以て肯定する。

 こうして臨時に行われた王国首脳による閣議は結論を出して終了した。



 非政府主義者達によるリンネ暗殺未遂事件があった日の翌朝、デルニオが目覚めると既にライデンの姿は部屋から消えていた。


「早いな、もう起きているのか・・・」

 

 デルニオが身支度を整えて中庭に出ると、ライデンが三人の学生と共に鍛錬を始めていた。


「よう!」


 デルニオが声をかけるとライデンは手にした奇妙な形をした長い棒を降ろして振り向いた。


「おう!おはようデルニオ。お前も朝練か?」


「ああ、ライデンも?それでそちらは?」


 デルニオはライデンと一緒に鍛錬をしていた三人の方に視線を向けて尋ねた。


「紹介するよ。こちらがヨハンさん、昨日俺達の指導上級生として会っているから知っているだろうけど67期生でボーデンハウス家の長男だ。ボーデンハウス侯爵家は知っているよな?宰相ゲルト・ボーデンハウス殿のご子息だ」


 ライデンに紹介されたヨハンは軽く頷いて目礼を交わす。


「こっちがダニエル・ワイズ、通称ダニーだ。ダニーはピアース・ワイズ子爵の次男でヨハンさんともども幼い頃からの知り合いだ」


「ダニエルです、”ダニー”と呼んでください」


 ダニーはデルニオに手を差し出し握手を求めてきた。


「デルニオです。自分は庶民の出ですがよろしくお願いします」


 次にライデンはもう一人の槍を持った男の方に向き直り、


「彼はバーノウ・ファン。キィル・ファン男爵の長男で彼も俺達兄妹の幼馴染だ」


「バーノウだ、よろしく。自分の事も”バーノウ”で構わない」


「デルニオです。よろしくお願いします」


 デルニオが頭を下げるとバーノウが、


「君がデルニオか、昨夜のことは聞いているよ。いきなり女子寮に侵入したそうで、初日っから随分派手にやらかしたな」


 と言って冷やかした。


「えっ?いやっ!それはですね、おい!ライデン、皆さんに何て言ったんだ?」


 デルニオがライデンに向かって問いただす。


「事実を言っただけだぞ?お前が女子寮の窓を破って侵入したと」


 ライデンがしれっと答える。


「そこに至る経緯があっただろう!あのですね!女子寮に侵入者がいまして、そいつらを取り押さえていたら室内から悲鳴が上がったんです。それで緊急事態だと思って飛び込んだんですよ!」


「「えっ?そんなことがあったのか!?」」


 ダニーとバーノウは驚きの声をあげる。


「ヨハンさんは気付いていましたよね?」


 ライデンがヨハンに尋ねる。


「ああ、あれだけ気配をまき散らしていればな。ただ、リィナ様にはドリスがいるし、お前達が動いているのもわかったから俺が出るまでもないと思っていた」


ヨハンは木剣の切っ先を地面につけて笑った。


「そうだったのか・・・。女子寮で騒ぎがあったのは知っていたが、ライデンの説明では侵入者の話はなかったからとんでもないヤツが同期にいるなぁ、と思っていたよ」


 バーノウは苦笑いと共にそう言った。


「ちょっ!!違いますよ!あくまで俺は侵入者の制圧のために女子寮に入ったのであって、やましい気持ちは一切ありませんよ!!ライデン!!!一番大事なところを飛ばすなよ!!」


 デルニオがライデンに食って掛かっているとヨハンが、


「ライデン、ここしばらくお前とは仕合ってなかったな。やるか?」


 と言ってきた。

 ヨハンとはヨハンが軍学校に入学して以来会う機会も少なくなって、仕合自体は一年以上やっていない。


「よろしくお願いします」


 ライデンは即答した。


「お互いどれくらい腕を上げたのか楽しみだ」


 ヨハンが木剣を正眼に構える。

 ライデンは奇妙な長い棒を立てかけ、持ってきていた木剣を構えた。

 二人の間に緊張が走る。



 ―――学舎を隔てた女子寮側の中庭―――


「!!!」


 リンネが体をビクッと震わせる。


「これはヨハンとライデン様ですね。ここまで殺気を出すとは真剣勝負の様です」


 傍らにいた黒髪長髪の少女がさらに隣のブルネットの髪をした少女に告げた。

 ブルネットの少女の名はリィナ・パルディオス・サーガ。ライデンとリンネの二つ年上の姉で、王位継承権第二位の王族でもある軍学校の66期生だ。

 黒髪の少女はドリス・リュウ、ユウ・リュウ騎士爵の娘で同じく軍学校の66期生。リィナの護衛を兼ねた側近で、まだ学生ながら剣の腕は国内屈指の戦士。

 全土に六つある軍学校での対抗戦、武術大会でも過去二年間他を寄せ付けぬ圧倒的な実力で無敗を誇っている。


「姉様!見に行きませんか!?ヨハンさんの戦いを久しぶりに見てみたいです!」


 リンネがリィナに提案した。


「でも男子寮よ?」


 リィナが少し戸惑って答える。

 するとドリスも、


「中庭なので問題ないでしょう。私も興味があります。いけませんでしょうか?」


 と言ってリンネの意見に賛成した。


「もう、しょうがないわね。いいわ、今朝はこれくらいで切り上げて見に行ってみましょう」


 とリンネ、ドリスに加えてレイア、ルシャも連れて男子寮の中庭へ向かった。



 男子寮の中庭ではライデンとヨハンが対峙していた。

 ヨハンは木剣を正眼に構え、ライデンは大上段に振りかぶり、身じろぎ一つせずににらみ合っている。

 どちらも相手に隙など無いと理解している。故に互いに見合ったまま動けないのだ。

 その場にピリピリとした緊張感が漂い、到着したリンネ達も息をのんで二人の立ち合いを注視する。


「――――――、っ!」


 一瞬ライデンの表情から緊張がゆるんだと思った刹那、ライデンは一気に踏み込み大上段に構えた木剣をヨハンの脳天めがけて振り下ろした。


≪バキッッ!!!!≫


 ライデンの振り下ろした木剣はヨハンにかわされて地面を叩き粉々に砕け散った。


「それまで!!勝負あり!勝者ヨハン・ボーデンハウス!」


 男子寮の中庭にドリスの声が響き渡った。

 ヨハンはライデンの剣をかわし、ライデンに対して抜き胴を決めていた。


「「・・・」」


 ライデンとヨハンは互いに黙礼を交わして下がった。


「「「わぁぁぁぁぁl!!!!」」」


 途端に周囲から歓声があがった。

 見てみれば男子寮の窓から大勢の学生が顔を出してライデンとヨハンの立ち合いを見守っていた。


「さすがヨハンだ!ドリス以外には負けなしの第一軍学校実力ナンバー2だけの事はある!」

「でもあの一年の気迫も凄かったぞ、何者なんだ?」

「馬鹿!あれはサーガ家のライデン王子だ!」

「元帥閣下のご子息か!?道理で・・・」

「見ろ、リィナ様とドリスもいらっしゃってる」

「じゃあ、あっちはリンネ様か?」


 見物人たちのざわめきが大きくなってゆく。そこへ、


「こらっ!!お前達騒がしいぞ!!」


 教官が顔を出した、ゴン教官である。


「またライデンか・・・、今朝は何なんだい?」


 ゴンは額に手を当ててライデンに尋ねる。


「申し訳ありません。自主鍛錬の一環でヨハンさんと立ち会ったのですが、いつの間にか見物人が増えていたようで・・・」


 ライデンがバツ悪そうに答えた。するとそこにヨハンが、


「ライデン、平気か?」


 と声をかけてきた。

 木剣とはいえまともに胴を撃ったのだ、ましてや軍学校でもドリスに次ぐ実力者のヨハンによるもの。さらにライデンはヨハンにとっても実力的に手加減など出来ない相手だ。


「いえ、大丈夫です。痣にはなっているとは思いますが骨までは行ってないでしょう。父やシャクリーンさんとやるときはもっとボコボコにやられていますから」


 ライデンが苦笑いをしながら答える。


「確かに。俺も母(ヨハンの母ティア・ボーデンハウスは元軍人で、先々代女王ミアナの護衛も務めた事もある国内でも指折りの剣士である)に稽古をつけてもらう時にはボロボロになるまで叩かれたよ」


 とヨハンも苦笑いを浮かべる。


「はぁ・・・、ライデン、昨日の今日であまり騒ぎを起こさんでくれよ。そうでなくても君らは目立つんだ」

 

 ゴンがため息交じりにこぼすと、見物していたリィナが、


「ゴン教官、良いではありませんか?講義中という訳でもありませんし、良い立ち合いを見て皆も興奮したのでしょう」


 と笑いかけた。


「その通りです。レベルの高い立ち合いを見る事は己の鍛錬にとって非常に有益です。かく言う私にも得るモノがありました」


 リィナの横に侍るドリスもリィナの意見に賛同した。


「まぁそうなんだけどね。騒ぎがあったとあっては教官として立場上僕としては一言いわなければならないんだよ。それで立ち合いはどうなったんだい?」


 ゴンの問いかけに、


「ヨハンさんが勝ちました!!ライデンの打ち下ろしを躱して!流石はヨハンさん!見事な体捌きでした!!!」


 リンネが興奮して答えた。

 それを聞いたライデンはバツ悪そうに苦笑いをして頭をかいた。


「とにかくそろそろ食堂が開く時間だから、ぼちぼち切り上げて講義の準備をしなさい。特に一年生!今日は予定がいっぱい詰まっているぞ!」


 ゴンに促されて今朝の朝練はこれで切り上げになった。



 部屋にもどり、リィナとドリスが二人で語りだす。


「どう?ドリスから見てあの二人は?」


 あの二人とは勿論ライデンとヨハンの事だ。


「さすがですね。一度本気で仕合ってみたいものです」


 ドリスが答えた。


「?、去年は本気じゃなかったって事?」


 ドリスとヨハンは昨年四回立ち会って四度ともドリスが勝っている。


「いいえ、私が立ち会いたいと言ったのはライデン様の事です」


「でもライデンよりもヨハンの方が強いんじゃないの?ヨハンはライデンの打ち下ろしを見事に避けて見せたでしょう?」


 リィナ自身も幼い頃から父リキ・サーガ元帥から剣の手ほどきを受け、そこそこの実力を有している。そのリィナから見てライデンとヨハンではヨハンの方が格上に見えた。しかしドリスは、


「先ほどの勝負、ライデン様がヨハンに勝ちを譲ったのです。もっともヨハンは気付いていないかもしれませんが」


「そうなの?」


「はい。ライデン様の打ち下ろしは確実にヨハンの脳天をとらえていました。しかし、そのまま打ち下ろせば最悪ヨハンは死んでいたでしょう、地面を撃ったライデン様の一撃を見たでしょう?木剣が折れるのではなく粉々に砕け散っていました、物凄い威力です。あのままヨハンを撃つのは危険と判断したライデン様は、悪い言い方をするなら手を抜きました。それ故ヨハンは避ける事が出来たのです」


「そうだったの・・・」


 剣に関しては父リキも世界最強と言われるフェリシアの母シャクリーンも認めるドリスの見解だ、リィナは疑うことなく受け入れた。


「しかしライデン様はなぜ勝ちを譲ったのでしょう?寸止めにして勝ちを主張する事も出来たでしょうに」


 するとリィナは、


「・・・恐らくライデンはお父様の言いつけを守っているのでしょう」


 と言った。


「どういう事ですか?」


 ドリスが尋ねる。


「お父様は普段から、”常に奥の手は隠し、実力の底を読ませるな”と仰っているから。ライデンは愚直にお父様の教えを守っているのでしょう」


「なるほど、ライデン様の本気を見るには殺し合いをするしかないって事ですね」


「ちょっとドリス!怖い事言わないでよ」


 リィナは軽く窘めたが、ドリスの表情は真剣そのものだった。



 翌日ライデン達一年生は午前中は校内の施設の案内と講義・実習の説明、寮生活にあたっての注意などを聞かされ、午後からは実戦テストが行われた。

 士官学校と統一される前には適性検査というものがあり、指揮官、一般兵、支援兵などに分けられていたが、現在では一般兵や支援兵などは軍事訓練所で養成され、軍学校へは試験を通過した者のみが指揮官、参謀などを目指す事になっている。それ故に現在の軍学校では以前に比べて貴族の子弟の割合が高くなっている。


 ライデン達は午前中の行事を終え、リンネ達と合流して食堂で昼食をとり、午後の実戦テストに臨んだ。

 実戦テストは模造武器を使った一対一の対戦形式で、名前を呼ばれた者達が何か所かに設置された試合場で対戦する。基本的に男子同士、女子同士で対戦し、二戦目以降は初戦の勝者達から個々の実力を判断し、対戦相手が決められる。

 試合の前に教官から【錬氣】が使える者は申し出る様にとの話があった。


 【錬氣】とはこの世界で使われる〈能力〉で体内で錬られた『氣』を様々な用途で利用する〈能力〉のことである。以前は武器にまとわせたり、肉体に作用させて身体能力を上げる、という様な用途にしか使えないと思われていたが、近年ではその常識に当てはまらない〈能力〉も散見されている。基本的に一人一種類の使い方しかできず、複数の使い方(ダブルキャスト)が出来る者はほぼいない(歴史上複数使用者(ダブルキャスター)は四人しかおらず、その一人がフェリシアの母シャクリーン・ペスカニ将軍である)。

 数万人に一人と言われる希少な〈能力〉で、現在軍でも数十人しかいないとされている。


 手を挙げたのは一人、デルニオだった。

 デルニオ曰くその〈能力〉は『心肺能力強化』というもので、それを使えば数十分息を止めていたり、数十㎞全力で走ったり出来るそうだ。


「シア、あなたは手を挙げなくていいの?」


 リンネが隣にいるフェリシアに尋ねた。

 するとフェリシアは、


「うん。私のはあまり戦闘に役立つものではないし、軍や政府にはもう報告してあるから把握しているでしょうしね」


 と微笑んだ。



 そして実戦テストが始まり、ライデンの対戦相手は五班の学生だった。先に述べた通り軍学校に入学してくるものは試験に合格した者のみなので、武術に関しても全くの素人というのは少ない。ライデンの相手も剣術の経験者だった様だが、ライデンとではやはり比較にならない程に実力差があり、余裕で初戦を突破した。

 その他デルニオ、ダニエル、バーノウ、ノヴァルド、ベナレス。女子でもリンネ、フェリシア、レイア、ルシャなども初戦を勝ち抜いた。


 ライデンの二戦目はバーノウだった。バーノウは祖母スラウ・ファン元将軍やその部下でクウリュウ現将軍に鍛えられた槍使いだ。


「ライデン、胸をお借りします」


 バーノウは迷いのない表情で槍を構えた。


「おう!!!」


 ライデンもそれに答えて木剣を正眼に構える。


「うっっ!!」


 バーノウが思わず声を漏らす。


(凄い圧力だ!全く隙などない!それどころか目の前にいるはずのライデン様との間合いが全く測れない。ど、どうなっているんだ!?)


 バーノウは蛇に睨まれた蛙の様にその場で動けなくなってしまった。


「ううっ!!」


 バーノウのこめかみから脂汗が一滴顎を伝って滴り落ちる。


 ―――つっ―――


 その瞬間ライデンが木剣を下げ、下段に構え直した。


「くっ!!!」


 するとそれに対してまるで吸い込まれるようにバーノウが槍を繰り出した。


 ≪カンッ≫


 乾いた音と共にライデンの木剣がバーノウの頸に添えられる。


「勝者ライデン・パーヒュル・サーガ!」


 審判役の教官がライデンの勝利を告げる。

 見ればバーノウの槍は中ほどで真っ二つに斬り割られていた。ライデンが木剣で(!)斬ったのだ。


「さすがですねライデン、まさか木剣で槍を斬り割られるとは思いませんでした」


 バーノウが驚きを持った目でライデンに語り掛ける。


「ああ、上手くいったな。でもバーノウも随分腕を上げたな」


 ライデンが答える。


「ははは・・・。全く何もできませんでしたよ・・・」


 バーノウが自嘲気味に乾いた笑いを漏らす。


「いやいや、本当だぞ?以前のバーノウならば槍を斬り割られる前に飛ばされていただろう。槍を持つ手の内をしっかり締めていたからこそ槍が斬れたんだ」


 ライデンのフォローにバーノウはようやく笑顔を見せて、


「まだまだ修行が足りません、今後とも御指導よろしくお願いします」


 と頭を下げた。



 別の場所ではデルニオがホラージョ・ケイネスと対峙していた。

 このホラージョ・ケイネスという男はケイネス伯爵家の三男で思想的に少々貴族至上主義的なところが見られ、昨日も食堂で非政府主義者のラセーナとひと騒ぎを起こした男である。

 ホラージョは木剣を、デルニオは手甲をはめて格闘技で戦う様だ。


 ホラージョは木剣を正眼に構え、デルニオの動きを注視している。

 それに対してデルニオは両腕を下げたまま立ち、一見すると隙だらけの様に見える。

 デルニオの左の手甲は拳の部分が丸く覆われており、やや珍しい形状だった。


「はじめ!!」


 教官の開始の合図がかけられるや否やホラージョが一気に踏み込み打ち込んだ。


≪カシンッ!≫


 しかしデルニオは左手の手甲の丸みを使ってそれを器用にさばく。


「くっ!!!」


 一撃必殺のつもりで打ち込んだホラージョが顔を歪める。

 ホラージョはデルニオの格闘技など所詮庶民の習い事だと甘く見ていた。

 貴族の子弟である自分は幼い頃から軍人となるべく訓練をしていて、一般人よりもはるかに優れていると自負していたし、その貴族主義的な思想からもデルニオを見下していたのだ。


「おのれっ!!」


 ホラージョは続けざまに連撃を加える。

 しかし、デルニオは焦りの色も見せずに淡々とその攻撃をかわしてゆく。


「くそっ!!」


 苛立ちを募らせたホラージョが大きく振りかぶり、デルニオの脳天に剣を打ち下ろす。


「っ!」


 デルニオはそれを待っていたかのように踏み込み、ホラージョの柄を持つ手を掴むとそのまま足払いをかけた。


「うわっ!」


 バランスを崩したホラージョが思わずデルニオの肩に掴まろうと手を伸ばす。

 しかし、それはデルニオの思惑通りだ。

 デルニオは伸ばしてきたホラージョの腕を掴むと一本背負いのような形で担ぎ上げて投げ飛ばし、その顔に向けて手甲をはめた拳を寸止めにした。


「それまで!勝者デルニオ!」


 審判の声がかかり、デルニオは組み伏せたホラージョの上から退き、下がって礼をした。

 一方のホラージョは放心状態で礼も忘れてとぼとぼと下がっていった。



 女子の方ではフェリシアとルシャ、リンネとレイアが対戦が決定していた。


 フェリシアとルシャの対戦はフェリシアの剣とルシャの弓との戦いだった。

 試合開始と同時にルシャは矢を放ちつつ距離を取った。二人の戦いは距離を取って狙い撃ちにしようとするルシャとの距離を縮めて打ち込もうというフェリシアの、互いの間合いを巡る攻防になった。


「速い・・・」


 ルシャの矢を避け、弾きつつフェリシアは心の中で感嘆していた。


(これほどの速射はお母さんかグリさん位しか見た事がない!おまけに全てが避けにくい箇所を正確に射抜いてくる!)


 フェリシアの母はシャクリーン・ペスカニ将軍、武芸百般に通じ世界最強の戦士と言われる人物だ。そしてグリとは世界初の騎馬弓兵部隊、騎射隊の初代隊長で、その射撃術は国内最高峰と言われている人物だ。

 フェリシアのルシャに対する評価は国内屈指の射撃手というものだった。

 一方のルシャの方も驚きを隠せなかった。


(シアって参謀志望じゃなかったの!?これだけ射て一つも当たらないなんて!?)


 このままいけば不利なのはルシャの方だ。持てる矢の数には限りがある、腰と背に数十本あるとはいえ一本も当たらないのではいずれ矢が尽きるのは明らかだ。


(さすがにシャクリーン将軍の娘さんという事ね、このままでは勝てないか・・・)


 ルシャは(つが)える矢の数を二本に増やして射始めた。


(二本番え!?それも二本とも別の場所を正確に狙ってきている!この子とんでもない才能だ!)


 それでも矢を避けるフェリシアに対してルシャは三本、四本と番える矢の数を増やしていった。


(だめだ!もう避けられない!強引にでも間合いを詰めなければ!)


 フェリシアは決意して強引に踏み込み間合いを詰めた。

 しかし、それはルシャにとって想定通りだ。ルシャの腰には狩猟の獲物にとどめを刺す為の短剣が提げてある。無理な体勢で近づけばその短剣をもって襲い掛かる算段だ。

 ルシャがフェリシアの体勢を崩す為の矢を放つ。


「くっ!?」


 体勢を崩したフェリシアが思わず左手を地に着く。


(今だ!!!)


 ルシャが腰の短剣(勿論木製の)を引き抜き、フェリシアに迫る。しかし、


「わっ!!」


 今度はルシャの方が体勢を崩す。フェリシアが持っていた木剣をルシャ目掛けて投げつけたのだ。


 ≪スッ!≫


 フェリシアは体勢を崩して着いた左手で地面に落ちていた矢を拾い、それをルシャの喉元に突き付けていた。


「それまで!勝者、フェリシア・ペスカニ!」


「「「わぁぁぁぁぁl!!!!」」」


 見ていた学生たちから歓声が上がる。それほどにハイレベルな戦いだった。


「負けたわ、あんな手でくるなんて」


 ルシャが晴れやかな顔でフェリシアに手を差し出した。


「どうにもならなくなっての捨て身の攻撃よ、何せ武器を手放しちゃったんだから。絶対に戦場じゃ出来ないわ」


 微笑んでフェリシアがルシャの手を取りがっちりと握手する。

 そこへリンネとレイアが現れた。


「シア!お疲れ。最後のは面白かったわね、ルシャも凄いじゃない!正直ここまでとは思わなかったからびっくりしたわ!四本番えなんてグリさんでしか見た事ないわよ!?」


「ふふふ、複数射ちは得意なのよ。でもシアには通じなかったわ、シアって参謀志望じゃなかったの?」


 ルシャが首を(かし)げてシアの顔を覗き込む。

 しかしそれにはリンネが答えて、


「そうよぅ!でもシアはあのシャクリーン将軍の娘だから。頭脳は父親のヴィクトルさんに、武術は母親のシャクリーンさんに似たのよ」


 と笑った。


 フェリシアの父親は四大貴族タヌルバルド侯爵家の出身で、先の大戦では智将として大デミルズ島統一決戦にも参戦した元将軍である。言わばフェリシアはクレストル軍の知と武のサラブレッドと言っていい。当人は知の方面を志望しているが、個人の武勇も相当なものだ。


「さて!次は私達の番ね!」


 リンネがレイアに向かって言う。


「でもさぁ、私達一斑で女子のベスト4を独占するなんて凄くない!?ルシャも凄かったけど、レイアも楽しみだわ!さあ、行きましょう!?」


 リンネがレイアの手を取って中央へと進む。まるで仲良しな友達同士がトイレにでも向かうかのような気軽さだ。


 リンネとレイアが互いに真剣な目つきとなって向かい合う。リンネは木剣、レイアは両手に一本ずつナイフを持っている。特徴的なのはお互いに数本の短剣(レイアが提げているのはナイフ)を提げたベルトを締めている事だ。


「始め!!!」


 審判の声がかかると、弾ける様にリンネが一気に間合いを詰めてレイアに迫る。


「「「速い!!!」」」


 矢のような踏み込みに観衆が驚くも、レイアはこちらも弾ける様に横に跳んだ。


「くっ!!!」


 しかし、リンネの踏み込みの速さは予想外だったようで思わず口から焦りの声が漏れる。


「ふっ!」


 それを見たリンネはほぼ直角に方向転換し、追撃にかかる。


「!!??」


 リンネの反応の速さはレイアの想像をはるかに超えている、あっという間に目の前に追いついてきたリンネが横一線に木剣を払う。

 それに対してレイアは臆することなく敢えて前に踏み出した。


≪タンッ!≫


 捉えたと思ったリンネの一撃は虚しく空を切った。

 何とレイアは空中で一回転しながらリンネの頭上を飛び越えた。


「なっ!?『跳躍』の【錬氣】能力!?」


 驚いて尋ねるリンネにレイアは、


「いいえ、【錬氣】能力ではありませン、ただの身体能力。私の経歴は知っているでしょウ?」


 と答えた。

 そうである。レイアは旅芸人一座に拾われた孤児で、一座では軽業師として働いていたと言っていた。身軽なのはそのおかげなのだ。


 追うリンネ、逃げるレイア、そのスピードと跳躍力はどちらも常人のものとは思えないものだった。

 ただ、レイアの表情には余裕がないのに対してリンネは楽しそうに笑みを浮かべている。


「ふふふ、ルシャだけじゃなくてレイアまでこれ程の力を持っているなんて本当に予想外だわ!こんなタイプは見た事がない、強いて言えば(うち)の虎に似ているかも」


 虎というのはリンネの実家サーガ家に仕えている情報収集担当の家臣(女)である。


 リンネがじわじわとレイアを追い詰める。

 レイアは防戦一方ながら見事な跳躍力と防御の技を見せ、何とかリンネの攻撃を防いでいた。どうもレイアの技術は護身に特化したものの様だ。


「ふっ」


 リンネはニヤリと笑うと突然レイアを追うのを止めた。


(必死に距離を取ろうとしているのは何か狙いがあるからでしょう、って言うか腰に提げたナイフを見れば大体想像できるけど)


 両者の間合いが4m程離れる。するとレイアはさらに跳び退(しさ)りながらリンネに対してナイフを投げ打った、それも続けざまに六本!


≪ッ!カン!カン!カン!カン!カン!カンッ!≫


 リンネは目をむきながら素早く木剣を払い、六本全てのナイフをはじき返した。


「驚いた!!両手の二本だけかと思ったら腰に差した分まで投げたのね!今のはちょっと危なかったわ!レイア、やるじゃない!!!」


 リンネが満面の笑みでレイアに語り掛ける。


「はあ・・・、こっちこそ驚きましタ・・・。一本くらい(かす)るかと思ったのニ・・・」


「もっと見せて頂戴!何だか楽しくなってきたわ!!ナイフはあと六本、どうする?」


 リンネは嬉しそうに木剣を正眼に構える。

 レイアが答えて、


「もうそんなに引き出しはないんですけドッ!!」


 レイアは両手のナイフをリンネに投げ打ちながら間合いを詰め、リンネの頭上を飛び越えながらその脳天に向かってもう一本ナイフを投げ打った。


「くっ!!!」


 全く違う方向からの三連撃をリンネは何とかはじき返した。


(頭上からの攻撃がこれほど厄介だとはおもわなかったわ!)


 しかし、レイアの攻撃はこれで終わりではなかった。三連撃を防いだリンネに向かってレイアはさらにもう一本ナイフを投げ打った。

 これに対してリンネは自分も腰に提げた短剣を投げ打ち、ナイフを打ち落とした。


「投剣術なら私も得意よ、父様に叩き込まれたからね」


 ライデンとリンネの父リキ・サーガ元帥は刀術と共に投剣術の達人でもあった。ライデンとリンネも当然その技術を叩きこまれ、特にリンネはその方面に才能を見せていた。


「さあ、どうする?」


 レイアはナイフを投げつくし、残るのは両手に持つ二本だけだ。敢えてナイフ投げにこだわるか、間合いを詰めて格闘戦に持ち込むか決断を迫られた。


(これ以上ナイフを失うのは不味イ、かといって接近戦ではリンネには歯が立たなイ、どうすべきカ・・・)


 レイアが思案に暮れているとリンネは、


「来ないの?じゃあこちらから行くわよ?」


 と淡々と話して無造作に腰に提げた短剣をレイアに向けて投げ打った。


「!!!」


 レイアは慌てて左手に握ったナイフでリンネの投げ打った短剣を弾き飛ばす。

 その瞬間、


≪ゴンッ≫


 レイアの額に何かがぶつかった。


「エッ?」


 地面に落ちた()()を見るとリンネが腰に提げていた短剣(勿論刃引きし、先端は丸くしてある。これはレイアのナイフも同じ)だった。


「投剣術『影』。一本目の陰に全く同じ軌道に重ねて投げ打ち、一本目に隠して投げ打つ技よ」


 リンネが片目をつぶってレイアに笑いかける。


「っ!しょ、勝者リンネ・ペアリー・サーガ!」


 あっけにとられていた審判が慌ててリンネの勝利を告げる。


「「「「うわあああああああああああああ」」」」


 見ていた学生たちが一斉に歓声を上げる。

 とても軍学生とは思えぬハイレベルな攻防、驚異的なレイアの身体能力とナイフ投げの技術、それを上回るリンネのスピードと最終的に相手の土俵でねじ伏せた投剣術。

 多くの軍学生にとってはショーを見るかのような思いだっただろう。その決着に惜しみない賞賛の拍手と歓声を送った。

 しかしリンネは、


「えっ!?あっ!?ど、どうも・・・」


 と、急におどおどして下がり、フェリシアの陰に隠れてしまった。急に注目されている事に気づき、絶賛人見知り発動中だ。



 ここまでは同時進行だったが、ここからは一試合づつ行われることになった。


 まずはデルニオとベナレス。怪力で勝ち上がってきたベナレスだったが、デルニオとの力量の差は明らかであっけなくデルニオが勝利した。


 次はライデンとノヴァルドだ。ノヴァルドは珍しく剣と盾を両手に持って戦うスタイルで防御に優れた戦い方だ。

 しかし、これはライデンとは相性が悪かった。ライデンの重い攻撃を片手で持つ盾では防ぎきれず、突きの衝撃に吹き飛ばされて敗れた。



 そして残されたのは男女とも決勝のみ。男子はライデンとデルニオ、女子はリンネとフェリシアの対戦となった。

 まずは女子の決勝が行われる。その戦いの前にリンネがフェリシアに、


「シア、薙刀でやって欲しい。全力で楽しみましょう?」


 と声をかけた。

 するとフェリシアも、


「いいわ、でも手は抜かないわよ?」


 と返した。


「勿論♪手を抜いたらシアの負けよ?ライデンの前でいい所見せないとね!」


 さらにリンネが続けると、


「ちょっ!ちょっと!ライデンは関係ないでしょ!?」


 フェリシアが狼狽えながら横目でライデンの方をちらりと見た。

 ライデンはフェリシアの視線に気づき右手を挙げて答えた。


「ほら!ライデンも応援してるわよ♪」


 尚もフェリシアをからかおうとするリンネにフェリシアが一言、


「そうね。でも他の大勢はリンネの戦いが見たいみたいよ?ほら、みんなリンネの事を見てるわよ?」


 と返すと、途端にリンネは大人しくなる。注目を浴びている事を自覚してまた人見知りが出てしまったのだ。



 両者が中央に進み出て一礼する。

 デルニオがフェリシアが薙刀を持っているのを見てライデンに尋ねる。


「フェリシアは薙刀を持っているな。さっきまでは剣だっただろ?フェリシアは薙刀もつかえるのか?」


 ライデンはそれに答えて。


「ああ、むしろシアは薙刀の方が得意だ。母のシャクリーンさんが得意なのも薙刀だしな、その技術はシアに仕込んである」


「だったらなぜ剣を使っていたんだ?」


「シアは参謀志望なんだよ。参謀は前線に立って戦う訳じゃない、護身用なら薙刀は長すぎて持ち運びに不便だ。だから剣を愛用してるんだが、得意なのは薙刀だ」


「強いのか?」


「強い。リンネでも薙刀のシアは簡単な相手じゃない、今までの様に余裕を見せているとあっという間に追い詰められるだろう・・・」


「お前の見立てでは?」


「リンネが勝つだろうな。あいつは剣に関しては天才だよ、ドリスを負かすとしたらリンネだろうな。恐らくヨハンさんよりも実力は上だ」


「ドリスって三年のドリス・リュウか?二年間無敗だっていう」


「ああ、そのドリスだ。少なくとも才能では劣っていない、ドリスは万能型でリンネはスピード特化型だがな」


「お前ならどうだ?ドリス先輩に勝てるか?」


 デルニオの問いにライデンは少し難しい表情を浮かべて、


()()俺では無理だな」


 と答えた。


()()()()か・・・」


 デルニオは何か言いたげにライデンを見たが、ライデンの視線はリンネとフェリシアの対峙に向けられていた。


 試合開始の合図がかかってからリンネとフェリシアは互いに木剣と木製の薙刀の切っ先を向け合い、身じろぎ一つせずに対峙していた。今までの試合とは打って変わって静かな立ち上がりにライデン達を含む軍学生たちも息をのんで見つめていた。

 

 開始の合図から数分、二人はまだ動かない。


(こちらから動かないといつまでもこのままね。少し様子を見てみようかしら?)


 リンネがスッと横に移動し、フェリシアの周囲を回る様な動きを見せた。

 フェリシアはその場を動かず、体を回転させて薙刀の切っ先をリンネに向け続ける。


≪カーンッ!≫


 乾いた音と共にリンネの体が外にはじけ飛ぶ。


―――ざわざわ、ざわざわ―――


 何が起こったのかわからない軍学生たちのざわめきが起こる。


「今何があったの?」


 ライデンとデルニオの側で観戦していた々一斑のウィルが尋ねた。


「リンネが踏み込もうとしてフェリシアに迎撃されたんだ。リンネは踏み込めずに外に逃げた」


 デルニオがそれに答えた。


≪カーンッ!≫


 話をしている間にも二度三度と同じ事が繰り返される。


「フェリシアは間合いの使い方が上手いな、上手くリンネをフェリシアにとっての安全地帯に釘付けにしている」


 デルニオがこぼすとライデンは、


「いや、リンネ相手に安全地帯なんてない。今はまだ様子見をしているだけだ」


 と答えた。


 いったん離れ、


「ふぅー」


 と一つ息を吐くとリンネはフェリシアを睨み、


「行くよ?」」


 と言った。


「どうぞ」


 とフェリシアも答える。


「はっ!!」


 気合の声と共にリンネはあっと言う間に間合いを詰め、フェリシアの眼前に現れた。

 フェリシアは迎撃する事も出来ずに懐に入られてしまった。


≪カンッ!カンッ!カンッ!カンッ!カンッ!カンッ!カンッ!カンッ!カンッ!カンッ!≫


 目にもとまらぬリンネの連撃にフェリシアは防戦一方になってしまう。懐に入られてしまうと長い薙刀の柄は却って扱いにくく邪魔になる。

 しかしフェリシアも打開策を考えていない訳ではなかった。


(相変わらず速い!これでまだ本気じゃないって言うんだから驚きを通り越してあきれるわね・・・、でももう少し・・・ここ!!)


≪ダンッ!!!≫


 フェリシアは薙刀の間合いまで距離を取るのではなく、前へ出て互いに手が届く距離まで詰め、薙刀を持ったまま肘をリンネの顔に叩きつけた。


「ちょっ!?」


 リンネは慌てて後ろへ跳ぼうとするも、フェリシアはそれを許さない。


≪ダンッ!≫


 フェリシアはリンネの足の甲を踏みつけ逃走を防いだ。


≪ガッ!!!≫


 フェリシアの左肘がリンネの横っ面にまともに入る。


「うぐっ!」


 リンネは殴られながらも下からフェリシアの喉元を目掛けて腰の短剣を引き抜く。


「たあ!」


 フェリシアはリンネの足を踏みつけた足を踏ん張って横に跳び、これを躱す。

 互いの距離が再び離れる。


「ふふふ、いいわ、シア。一切の躊躇がない、やる気ね!?」


 リンネがニヤリと笑う。


「本気でやらないとリンネ怒るでしょう?」


 と答えてフェリシアも笑った。


「勿論よ。今度は私の番ね、シア、覚悟は良い?」


「駄目って言っても来るんでしょう?」


「勿論♪」


≪ザッ!カンッ!≫


 リンネは踏み込んで一撃加えて距離を取る。

 再び踏み込んでは一撃加えて距離を取る。ヒット&アウェイの戦法だ。

 しかも踏み込みと離脱が恐ろしく速い。観衆もリンネの体の動きは追えても手にした木剣の姿をとらえることが出来ない。


「すごい・・・」


 デルニオが言葉を失ってただただリンネの舞う様な剣戟に見とれる。


「”蝶のように舞い、蜂のように刺す”、『スピード・スター』と言われるリンネの真骨頂の戦い方だ」


 ライデンがつぶやく。


 両者が交錯するのはほんの一瞬、次の瞬間にはリンネは薙刀の射程外にいる。そして次の瞬間にはまたフェリシアに一撃を加えている。

 シャクリーン将軍仕込みのフェリシアの薙刀も防戦一方だ、いや正確には防ぎきれていない。致命的な一撃を防いでいるだけでフェリシアの体にはうっすらと傷が刻み込まれている。


(たった一度でいい、たった一度でいいからリンネに防御の姿勢を取らせたい!)


 フェリシアはまだ諦めていなかった。


(軍人になるんだ!かっこ悪くても、醜くても勝って生き延びる!諦めてはだめだ!実力で及ばないなら知略で補う!)


 フェリシアはリンネの背後に視線を移して、


「えっ!?」


 と驚いて見せた。


「!?」


 その表情を見てリンネはキョトンとし、その足が一瞬止まる。


「やああああ!!!」


 フェリシアが選択したのは目一杯遠心力を付けての脳天への斬撃。

 実際リンネはスピードにこそ天賦の才を見せるものの、力は平均的な女子と同じで非力な部類に入る。それに対してフェリシアは怪力シャクリーン将軍の娘な事もあってか男子並みの腕力を誇る。

 脳天への斬撃で力づくで押し切ろうという目論見だと()()()()


≪カンッ≫


「へうっ!?」


 フェリシアの薙刀を受け止めたリンネの木剣には思いのほか衝撃が感じられなかった。


(かかった!)


 フェリシアは薙刀を手離し、腰に提げていた(前の試合まで使っていたものをフェリシアは腰に提げていた)木剣でリンネの胴を抜き撃った。


 二人の動きが止まる。


「見事な攻撃と発想だわシア、()()・・・、私がそれを想定していない訳がない」


 リンネは左手で腰の短剣を引き抜いてフェリシアの木剣を止め、右手の木剣をフェリシアの首筋に添えていた。


「勝者、リンネ・ペアリー・サーガ!」


「「「「「うおおおおおぉぉぉ!!!!」」」」」


 審判の宣言と共に観衆から地鳴りのような歓声が上がる。軍の将軍同士でもめったに見られないような高次元な戦いを初めて目の当たりにした軍学生たちの興奮は最高潮に達していた。


「お疲れ、惜しかったな?」


 ライデンが肩を落として戻ってきたフェリシアに声をかける。


「負けちゃった・・・」


 フェリシアがぽつりとつぶやく。


「勝敗は時の運、今日のシアは決してリンネに劣ってなかったよ」


 ライデンはフェリシアの頭をポンポンとなでて慰めたが、フェリシアは俯いたままだった。

 そこにリンネが声をかける。


「そうよぅ!さっきは偉そうな事言ったけど、シアのタイミングは完璧だった。木剣を使われるのは想定していたけど、正直短剣が間に合うかどうかは賭けだったわ。あんな手でこっちの気をそらしてくるとは思わなかった!まんまと引っ掛かったわよ!」


 リンネとしても薄氷を踏む勝利だったのだ。


「リンネは集中力に問題ありだな、父上にも言われていただろう?」


 ライデンがリンネに苦言を呈する。


「は~い。でもあれは引っ掛かるわよぅ~」


 リンネが口をとがらせて言い訳する。


「まあシアらしい人の虚をつく策だったな。ああいうのはシアには敵わない」


 ライデンが同意するとリンネは調子に乗って、


「そうよねぇ~、ライデンもシアの掌の上で転がされて喜んでいるものねぇ~」


 と言ってニンマリと笑った。


「何で俺の話になる?」

「ちょっ!転がしてなんていないわよ!!」


 二人が慌てて反論する。


「あせるところが余計に怪しいわよねぇ~、ほら、あなた達注目されているわよぅ?」


 さらにニヤニヤして追い打ちをかけるとフェリシアは、


「えっ?あっ!?・・・・」


 耳まで真っ赤になって俯いてしまった。


 それを見てさらにニヤニヤしているリンネにライデンが、


「って言うか、見られているのは今の試合に勝ったリンネだろ?ほら、歓声にこたえて手でも挙げてやれ」


 と言うとリンネは、


「あっ!?・・・うぅぅ・・・」


 とフェリシアの後ろに隠れてしまった。



 リンネとフェリシアの戦いの興奮も冷めやらぬ間にライデンとデルニオが呼び出された。男子の方の決勝だ。

 二人が前へ進み出て軽く一礼して対峙する。


「ライデン、勝てるよね?」


 フェリシアが隣のリンネに尋ねる。


「・・・わからない。あのデルニオっていう子強いよ、雰囲気でわかる。ましてや【錬氣】能力者、『心肺能力強化』というのがどのような効果を発揮するのかわからない以上予測は難しいわ」


「ライデンが()()を出せれば・・・」


「えっ!?何?」


「ううん、何でもないの・・・」



「始め!」


 審判の合図がかかる。


 ライデンは木剣、デルニオは自分の所持品である手甲(刃物でない事から使用が許されていた)・脛当てを装備して互いに向き合った。


(ライデン・パーヒュル・サーガ、『統一の大英雄』リキ・サーガ元帥の子息にして自身も双子の妹リンネ・ペアリー・サーガと並んで高い武名を誇る男・・・。その威名に偽りなしか、こうして対峙しているだけでヒリヒリとした威圧を感じるぜ)


(デルニオ・・・やはりただ者ではないな。この覇気、既に一流の武人のものだ!)


 ライデンは木剣を正眼に構えたまま、すり足でじりじりと詰め寄る。

 デルニオは左手を前に突き出す形で半身に構え、フットワークを使いながら微妙に間合いを外して動く。

 ライデンにとってはこの前に突き出されている左手が厄介だった。ホラージョとの戦いでも見せた通りデルニオは左手で相手の攻撃を捌く。その左手が前にある事で打ち込みにくいのだ。


(リンネほどのスピードがあればそれもかいくぐれるのだろうが・・・)


 ()()ライデンにはそれは難しい。


(ならば・・・)


 ライデンは正眼に構えていた木剣を降ろし、下段に構えた。


「む!?」


 デルニオが眉をひそめる。

 人体の拳の構造とデルニオの手甲の形状からして下からの攻撃は捌きにくい。ライデンは一目でその事を見破っていた。


「ふんっ!!!」


 ライデンが踏み込み、下から斬りあげる。


≪カシンっ!!≫


 しかし、デルニオは驚きの方法でこの攻撃を防いだ。斬りあげてきた木剣を脛当てで蹴ったのだ。


「マジかよ・・・、どんな動体視力してるんだ・・・?」


 斬撃を逸らされたライデンがあきれた様につぶやく。


「俺のキョクハ流は実戦武術だぜ?下段への対抗策もあるに決まっているだろ?」


 デルニオが挑発する様に笑った。



「不味いわ・・・」


 観戦していたリンネがふとこぼした。


「何が!」


 隣にいるフェリシアがすがる様に聞いた。


「武器の違い、ライデンのは木剣だけどデルニオのは鋼鉄製。今の蹴りもライデンは対処してた。ライデンの持っているのが木剣ではなくて『玄武』(ライデン愛用の刀の銘)だったなら脛当てごとデルニオの足を斬る事も可能だったかもしれない。せめて鉄製の模造刀なら足にダメージも与えられたでしょうけれど、木剣では折られてしまわない様に威力を加減しなければならない。初めからハンデを背負っている様なものだわ。もっともライデンはハンデだとも思っていないでしょうけどね、この条件で勝つ事を自分に課してると思うわ。本当融通が利かないんだから」


「うん・・・でも私はライデンを信じてる。ライデンは負けないって」


「シア・・・。頑張んなさいライデン、シアはあんたを信じてるんだから・・・でも厄介よね、手数、小回りは圧倒的に向こうが上、武器の性能も向こうが上、力では上回っているけどそれを使うことが出来ない、おまけに未知の【錬氣】能力者、どうする?ライデン・・・」



 ライデンとデルニオの戦いはリンネの予想通りの展開になった。

 徐々にライデンが押され始め、守勢に立たされる事が多くなってきている。

 それでもライデンはデルニオの拳を、蹴りを、丁寧にさばき続け、ほぼNOダメージだ。


「「「おおお!」」」


 見事なデルニオの連続攻撃とそれをさばき続けるライデンの防御技術に軍学生たちから感嘆のこえが上がる。


「すごい・・・ライデン」


 フェリシアのつぶやきにリンネが答える。


「ええ、ライデンはパワー特化型に見られがちだけど技術も高いし、スピードもある。実際にはドリスと同じ万能型なのよ。でもデルニオの強さも予想外、あのライデンがさばくのに精一杯で反撃できないでいる。スピードでは私の方が上だけど、デルニオは小回りと手返しの速さで私と同レベルの速さの攻撃を繰り出している。でもいつまで体力が続くのかしら?」


 リンネの懸念通り一旦離れたデルニオは大きく肩で息をしていた。


「とんでもねえなデルニオ、これほどの連撃は同世代じゃリンネかレギウスくらいしか見た事がねえよ」


「それを簡単にさばくお前もどうかしてるぜ?」


「簡単じゃねえよ、でも負ける訳にはいかないんでな!」


「俺もだよ、それに・・・俺はお前の本気を見てみたい!ライデン!すまんな、奥の手を使わせてもらう!」


 デルニオの体が輝きを放つ、【錬氣】を行使しているのだ。


「行くぞライデン!『無呼吸連打』!!!」


 デルニオの『無呼吸連打』は読んで字のごとく無呼吸で連続攻撃を続けるというもの。普通ならば一分も続かない、ボクサーでも1ラウンド三分間連打を続けるなど不可能だ。全力疾走の限界と言われている400m走でも一分ほど。そこらへんが人間の限界なのだ。

 しかし、一分を越えてもデルニオの連打は止まらない。

 一分、二分、三分を超えたあたりからライデンに攻撃がかする様になってきた。

 五分を越えるともう攻撃をかわし切れず、ライデンは致命的な攻撃以外を躱す事を止めた。

 ライデンの体に攻撃の痕が刻まれてゆく。


「不味いわね・・・いくらライデンが体力バカでももう限界のはずよ。一瞬でいい、一瞬でいいからデルニオに隙を作らないと攻撃の機会が生まれてこない。このままだと体力切れでお終いよ、シアが私にした様に何とか虚を突かないと・・・。何とかしなさいよライデン」


 リンネが唇をかんだ。


 ライデンも当然打開策は考えていた。いくつか思いつくものはあったが、確実に虚を突けるというものがなかった。

 そろそろ体力も限界だ、賭けになろうとも決断できるうちに決断しなければ体の方がままならなくなってしまう。

 ライデンは決意し、思い切り木剣をデルニオの手甲に叩きつけた。


≪バキィッ!!≫


 ライデンの木剣が粉々に砕け散る。

 破片が飛び、デルニオの顔面に当たり、思わずデルニオは目を閉じてしまった。


≪ザンッ!≫


 その一瞬の隙をついてライデンは腰の投剣用の短剣でデルニオの胴を抜き撃った。

 その場が静寂に包まれる。


「勝者!ライデン・パーヒュル・サーガ!」


 審判の宣言と共に地鳴りのような歓声が沸き上がる。


「「「「「うおおおおおぉぉぉ!!!!!」」」」」

「ライデン様はいつの今に短剣を抜いたんだ?」

「デルニオの連打も半端ねえな!」

「リンネ様とフェリシアの戦いといい、今年の一年凄くねえ!?」

「さすがに元帥閣下のお子達だな!軍でもこれほどの人達ってあんまいねえんじゃねえの!?」

「ドリス先輩とヨハン先輩とで今年の一校は無敵じゃないのか?」


 周りの騒ぎを置いてライデンとデルニオは互いに礼を交わした。


「負けたよライデン、まさかあんな手で来るとは」


「いや、紙一重、運が良かった。たまたま破片がお前の顔へ飛び散ってくれたから上手くいっただけさ」


「よく言うよ、そうなる様に狙ったんだろ?」


「ああ、でも上手くいくかは本当に賭けだったぜ?それに胴を躱されてたらそこでお終いだった。体力も限界だったしな」


 ライデンはいまだに肩で息をしている。疲労困憊という様子だ。


「ライデン!!!」


 横からフェリシアが飛びついてきた。


「怪我してない!?殴られた所は!?」


 心配そうに顔を覗き込む。


「大丈夫だよ、デルニオもそこは配慮してくれてた」


「えっ!?」


「デルニオが本気で殴っていたら、急所でなくても骨折してしまっていただろう。デルニオはあくまで鍛錬の範囲内で戦っていたって事。そうだろ、デルニオ?」


 ライデンがデルニオに振り向くと、


「まあな、でもそれはお前もリンネもそうだろう?仲間相手に殺す気で、は無理だよ」


 と笑った。


「そりゃそうだ」


 ライデンも笑い返した。


「やるじゃない!!デルニオ!ライデンとシアの他にこれほどの人がいるとは思わなかったわ!いずれあなたとも戦ってみたいわね、面白くなると思わない?」


 リンネも加わってきた。


「ああ、そのうちな」


 デルニオが答える。


「さあ!いよいよ私とライデンの対決ね。第一軍学校68期のNo1はどちらなのか決めましょう?」


 リンネは待ちきれないといった表情でライデンに指を突き付けた。

 しかし、


「これで実力テストは終了する、整列!」


 と教官の号令がかかる。


「えぇ~、決勝戦はないの~!?」


 リンネが残念そうにぼやいた。


「お前達の実力は十分把握した、これ以上は必要ない!いいから整列しろ!それは夏の武術大会までとっておけ!」


「は~い」


 リンネは渋々従った。




「今年の武術大会は面白くなりそうですね、楽しみです」


 三階の窓際で講義を聞きながら野外演習場を眺めていたドリスが楽しそうにそうこぼしていた。


 そして二階では同じようにヨハンも楽し気にリンネ達を見つめていた。



 



 



 


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― 新着の感想 ―
[一言] 一気に読んでしまいました。次回を楽しみにしています。
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