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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

月の姫と雪女

作者: 蛇いちご

吹雪の中、1人の女が居た。豪奢な着物を着たそれはそれは美しい女だ。

吹雪いてきた為帰ろうとした狩人の与作は山に似合わない着物を着た女に驚いた。

「この女は物の怪か?」与作がそう思った。

女が睨み付けてきた。与作はいよいよ命の危機を感じた。しかし女から発せられた言葉は意外なものだった。

「何をしておる。妾を助けるのじゃ」

その時与作はやっと彼女が物の怪では無く人で命を奪おうとしてるのでは無く遭難して助けを求めている事に気付いた。「はいはい待ってくださいね。今おぶってあげますから。」そう言って女をおぶった。女は当然と言えば当然だが物凄く重い訳でも物凄く軽い訳でも無かった。与作は女をおぶりながら家へと帰った。

家に着いた。「家の者は」女が訪ねてきた。「父親は俺が幼い頃に死んで女手一つで育ててくれた母親もつい最近亡くなったよ」「所でお前の家族は。そもそも何で雪山に居たんだ」「妾は月の姫なのじゃ!」「はぁ!」思わず叫んでしまった。当然だ自分は月の姫なんて珍妙な事を目の前の女は言ってるのだから。「可哀想に寒さで頭がおかしくなったんだな」「本当じゃ。本当に妾は月の姫なのじゃ。」

その女が言うにはこういう話だった。自分は月の王月読の娘だったが月で罪を犯してしまい。罰として地上に流刑となってしまったというらしい。もちろん信じては居ないが否定するのも面倒臭いので話を合わせる事にした。

「そういえば名前は俺の名前は与作だけど。」「千古じゃ」「そうか素敵な名前だな。宜しくな千古」すると彼女は頬を赤く染めながら「当然じゃ妾を何だと思っておる」と言った。どうやらかなり面倒臭い性格らしい。

千古との生活は大変だった。まず女なので狩りが出来ない。そして料理を任せようにも料理も出来ない。農作業にも文句を言う。更には母の形見の着物を着せたらこんな貧相な着物は嫌だと言う。

ある日我慢が出来なくなって出ていけと言ったら涙目になりながら料理をした。正直言って不味かったが彼女のお詫びの気持ちを無碍には出来ないと思い一生懸命食べた。

その日以来我儘な性格は相変わらずだが料理も農作業もする様になったし、着物にも文句を言わなくなった。料理も最初は不味かったが段々と上達してきた。農作業も最初はおぼつかなかったが今ではしっかりと出来ている。

与作は「もう俺も婚期だし千古が嫁でも良いな」と思い始めていた。

そしてある日「千古お前に嫁に来て欲しい。」ときりだした。千古は困惑しながらも「無礼者、当然良いぞ♡」と答えた。そして2人は夫婦になった。

2人の間には沢山の子宝に恵まれた。しかし不思議な事にどれだけ年月が経っても、そしてどれだけの子供を産もうとも千古の姿は若いままだった。

いつまで経っても若いままの千古に村人は「あの女は物の怪では無いか」の疑いの目を掛けたがその度に与作が庇っていた。しかし与作も年老いてついには千古に看取られながら死んでいった。

「無礼者!妾を置いて死ぬなんて」そう千古が叫びながら泣いていると外から物音が聞こえた。戸を開けると外には松明を持った村人達の姿があった。「与作さんは年老いて死んだのに何でお前は若いまんまなんじゃ」村人の1人がそう叫んだ。そして別の村人が松明を千古へと向かって投げた。「物の怪め!燃え死ね。」

「ぎゃああ熱い!」千古はそう叫んだ。やがて火が家に燃え移り子供達も燃えていった。「ああ子供達が。」千古はそう言ったがしかし助ける事も出来ず助けられる事も無くただただ燃えるしか無かった。

「千古よ聞こえるか?」燃え盛る千古に声が聞こえてきた。不思議な事にその声が聞こえた途端火の痛みが無くなって居た。「その声はお父様!」千古の父の声だ。「千古よ。お前を月に戻す事は出来ないが、代わりにお前に復讐する力を与えよう。」すると千古に着いていた火があれよあれよという間に消えていった。子供達に着いていた火も消えたが子供達の息は既に途絶えて居た。「許さぬぞ!お前らを。」

千古の手から冷気が出た。そして冷気で村人を1人残らず凍死させた。

村を壊滅させた後、千古は与作と出会った雪山へと向かいそこで暮らす事にした。やがて千古はこう呼ばれる事になった。

「雪女」と



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