カイボウニガテ
体育は苦手でも乗り切れる!数学だって苦手!でも大丈夫!でも、解剖は…?
うちの高校は、スーパーサイエンスハイスクール指定校なのもあって理科実験に力を入れている。
1年の2学期は生物関係のことをやるのだが、来週からは2週連続で解剖をやることになった。1週目は豚の心臓の解剖で、2週目は鳩の解剖だ。私からしたら、解剖は苦手だ。無理というほどではないけど、怖い気持ちがある。
そんな矢先、クラスでは後ろの席から
「あたし、解剖って結構好きなの!楽しみなんよね」
「へえ、すごいなー」
と意気揚々に仲のいい男女グループが話している声が聞こえた。このグループの中には、カップルだっている。俗に言う「リア充」という感じ。彼らがすごく大人で、イキイキ人生を謳歌している人たちに思えた。解剖を怖がるって、高校生にもなったら子供過ぎるのかな。
瑠美は
「大丈夫、千咲は体育でちゃんと走ってるし、水泳も苦手と言いながらちゃんと泳ぎ切ったし、球技大会だって乗り越えたじゃない、数学も苦手と言いながら課題は出してるし。苦手でも、最初からやらないって決めない方がいい。解剖なんて2回だけの辛抱だから」
と励ましてくれた。この言葉だって、かなり苦し紛れに言ってた。いくら親友といえど、悩んでうじうじしている私になんて言ったらいいかわからなかったんだと思う。
体育をなんとか乗り切ったのと、解剖は全然違う。走るのは遅いけれど、怪我や体調不良がない限り走れないことはない。水泳だって得意とは言えないけど、小学生の時は家族で海やプールに行った経験はある。それに休んだ分は、夏休みに補習もあったから曲がりなりにもやり切れた。
球技大会はバレーボールに出たけれど、スタメンではないから試合の一部分しか出ていないし、その一部分しか出ない試合ですら私のところにボールはほとんど回ってこなかった。それに、たまたま私に来たボールも運良く隣のコートに打ち返すことができた。数学だって、苦手は苦手だけど授業についていけないとまでは思わない。私は理科が大好き。理系しかないとすら思う。だから、一度躓いたら取り返すのが大変な数学という科目に向き合えているだけだ。受験に数学は使うから。
ああ、解剖のことを考えると動悸がする。心拍数が速くなる。どうしたらこれを解消できるだろうか。気づけば、豚肉や鶏肉を食べるのも嫌になっている。中学のときは大体のものは好き嫌いなく食べられたのに、お弁当に肉が入っていると残してしまうようになった。
「肉を食べないことは、ダイエットにならない。エネルギーが出ない。痩せたいなら、甘いものを控えたほうがいい」
と瑠美もお母さんも言うけど、ダイエットとかそんな理由で肉を食べられないわけではないのに。誰か、この気持ち、わかるのかな…。