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テレジア・ヴォルフ  作者: ササミ
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出会い

初めて作った小説です。誰か一人でも楽しんでくれれば良いなと思っています。作者の体調と相談して、週一程度で更新するつもりです。

 参った。かなり参った。仕事がしたくない。どの仕事も面白みに欠けている。だがしかし、働かない訳にはいかない。そう、あれは昨日のことだった。

『飲み過ぎだ。』

カウンターの奥から声を掛ける男は私の兄のクリスタだ。この店の主でもある。

『悪いかよ。することもないからって酒飲んでちゃさ。』

私は不機嫌に答える。

『悪いさ。酒代も払ってないだろ。次の一杯が飲みたきゃ働け。仕事選ばなけりゃ昼からでも仕事はある。頑張って稼ぐんだな。』

兄は穏やかな口調のままだが、圧がある。この一ヶ月働かずにいたことを怒っているようだ。もう粘りは効かないだろう。

『分かったよ。』

去り際に、兄が私に投げかけた言葉は、

『銃は使うなよ。』

だった。

『分かってるよ。』

そう返して、店を出た。そして、今に至った。

 道を歩く。出てきたのは良いが、仕事のあては無い。気は進まないが、広場にいって張り紙探しするのが無難だろう。ふと、通りの反対側を見ると、向かいのビルのドアの前に警備員らしき男がいた。少し疲れが見える。私は少しばかり悪心を起こしてみる。

『おい、あんた。仕事代わるよ。分け前は代わった時間分の半分の給料でいいが、どうだ。』

男は辺りを見渡して、少し考えると

『誰も見てないな、1時間頼む。』

人通りも少ない場所なので、あっさりと入れ替われてしまった私は、1時間限りの警備についた。

人通りの少なさは、警備の楽さにも繋がった。ほとんど通る人も無い中で私は考え事をする。

(しかし半分で良いと言ったのに、随分良い額面だ。こんな人気のないところで、鉄のドア一個見張ってるだけで1時間の給料がこの2倍…妙だな。あいつが帰ってきたらここを離れよう。)そう思ったその時だった、激しいベルの音と共に道路の溝からフェンスが素早く迫り上がった。(このフェンスは…もしここが内側ならまずいぞ)最悪なことにこちらは内側、フェンスの向こう側に防護壁がゆっくりと上がっていく。この街の非常線、『能力』を持つ犯罪者を逃がさないためのものだ。

参った。とても参った。フェンスはともかく、防護壁を越える方法が無い。報酬を寄越してくれるはずだった男も今は壁の向こう側。することもなく防護壁に蹴りを入れる。当たり前だがビクともしない。仕方なくポケットから取り出した端末でインターネット検索を行うと、どうやら指名手配犯が見つかったことによるもののようだ。明確な現在地点不明により、警官達による捜索が続いているらしい。私はまたしても、悪心を起こすことにした。そう、指名手配犯を見つけて、情報を警察に流して協力金をもらう作戦だ。私は警備していたドアを離れ、街の中へ繰り出した。

 実際探しだしてみれば、私の『目』の力で簡単にその痕跡は見つかったし、さらにその痕跡を追っていくことでさらなる痕跡が見つかった。

『これで、いくつだ…?5つ目だな。よし、一個情報提供するたびに300万だからこれで1500万だな!』

嬉しさのあまり声が出る。警官たちもどうやら犯人の姿を捉えたようだ。遠くに彼等の姿が見える。

『これならあと少しで少しで非常線も解除だな、帰るとするか。』

引き上げようとしたその時だった。

『助けて!』

少女の悲鳴が聞こえた。犯人が人質をとったらしい。警官たちと犯人は膠着状態に陥っているようだ。手が出せない様子だ。どうしようもない状況となっている。この状況であれば、兄も不問にしてくれる。そう思った私が『能力』を使おうとした。瞬間、遠くから見ていた私の横を誰かが駆け抜けていった。

『子供…?』

『うおおおおおおおりゃあっ!』

そのもう1人の少女は、懐から木槌を取り出して、雄叫びを上げながら力強く地面を叩いた。すると、犯人の足元から沢山の木が生え始め、あっという間に巨木になってしまった。少女もまた『能力』をもっていたようだ。

『畜生…』

巨木の枝に引っかかった犯人は不服そうにしている。少女は救出され、現場を安心感が包んでいた。2人の少女は知り合いらしく、抱きしめあっている。そんな安心に包まれた現場の中、私の目は少女の木槌に釘付けだった。何故だろうか、果てしなく惹きつけられる妙な魅力があった。

『大変だ!』

警官の大声で正気に戻る。枝に吊るされていたはずの奴がいない。

『野郎空を飛ぶ能力だ!今まで使ってなかったのか!』

『追えないぞ!』

警官たちが慌てている。そんな中で2人の少女は羽ばたき遠のく影を見つめている。まだ何かする気なのだろうか。

『あいつ逃げやがって腹立つなぁ!クソが!』

悪態をつく木槌を持った少女を、もう1人の少女が宥めている。

『追えばいいじゃん。』

捕らえられた少女が不安気な様子だったのが嘘のような自信に満ちた声色で話している。まさかとは思うが彼女も…。木槌の少女と手を繋ぐ。足に力を込める動きを見て、私は咄嗟に彼女の空いた手を握った。

『ヘ?』

『あっ』

彼女が力を抜く間もなく足が踏み切られ、私たちは圧倒的なスピードで、宙に舞い上がった。

『あんた誰だ!何のつもりだ!』

『悪い!私にも分からん!』

『邪魔するな!あんた能力持ってないやろ!』

『いや、持ってる!私ならこの位置からでも奴を撃てる!』

『だったらとっとと役に立てや!撃ってみろ!』

空中でブレる手を必死に抑えて、ホルスターから取り出した銃を構える。遠い影をじっと見据える。三発撃った。それで十分だった。羽の付け根と眉間の3ヶ所にそれぞれ当たり、犯人は地面に落ちた。

『マジで当ておった…』

地面に向かいながら、木槌の少女はこぼした。一連の出来事を見ていた警官たちが駆けつけて、犯人は拘束された。

 厳戒態勢の解かれた街の片隅で私たちはベンチに座っていた。

『なぁ、本当に何の用も無いんか?』

木槌の少女は私に問いかける。

『実を言うと、あんたの持ってる木槌が気になってたから咄嗟に手を握ったんだ。何がと言うわけじゃ無いけど、無性に惹きつけられるんだ。』

少女は驚いたような顔をして、言葉を続けた。

『ちょっとした提案なんやけど、ウチの組織で働かんか?この木槌に本当に引き寄せられとるとしたら、人材としては最適も最適。銃の腕もかなり良い。嫌やったら断ってもいいし…』

『あんたら、“そういう”仕事してるんだな。そうだな、金がちゃんと出るなら、丁度仕事も探してたところだから引き受けるよ。』

少女はにっこりと笑って、

『なら、契約成立やな。』

と言った。

『付いて来てもらうで、あんたのこと教えてもらうし、仕事のことも教える。』

『おう、よろしくな。』

ベンチを立ち、歩き出す。この仕事なら、少し面白くなりそうだ。

最後まで読んで頂き、ありがとうございます。これからドンドン面白くなる予定ですので、暇なときにでもまた読んでいただければ幸いです。

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