異世界行ってもテストです!
楽しんでくれたらいーねー
私は人間をやめたい。そう思うほどこのバイトは屈辱的でした。
「わぁ〜可愛い。似合うじゃない」
どこがですか?! こんなフリフリメイド服を着るなんて聞いてないですよ〜!
「はー」
リアちゃんのお母さんのエリーさんにこの家においてもらっていることに感謝はしているのですが……。
「流石にこれは無理ですよ〜」
自分のフリフリメイド服を見てさっきからため息ばかり。
「こんなんじゃダメです! ヒカリ! 元気になれ!」
……自分で自分を励ますってこんなに寂しいのですね。でも落ち込んでても仕方ない。とっとと後片付け終わらせちゃいましょう!
「……あれ?」
テーブルの上に一枚のビラがありました。お客さまの忘れ物でしょうか? えーっと、なになに?
「……スナイパー募集中?」」
スナイパーって狙撃手のこと? あ、分かった。しゃげきのバイトか〜。てゆーかこの国こんなバイトあるんですね。暇人が多いのかな?私はしゃげきがうまいと言われるので少し興味を持ちました。
「おっ意外と給料高い。」
スナイパーかー。エリーさんに相談してみようかな?
「え? スナイパー?」
エリーさんがビラをマジマジとみています。なんか緊張するー。
「……いいんじゃない? 給料もそこそこだし」
やっぱりお金を見ますよね。まあいっか。
「すみません。フリフリがどうしてもダメで……」
「えー似合ってたのにー。まあでも、バイトは反対しないよ」
「……! ありがとうございます」
「いいのよー。でもたまには手伝ってね?」
「……はい」
「アハハハ」
「もーからかわないでくださいよー」
「うふふ。ごめんね。しゃげきのバイトかー。楽しんでね」」
……! はい! まあ、そんなところで、私はスナイパーになる許可を得ました。
「ここがバイト先かー」
ビラの地図に書いてあるとうりにたどっできたのですが……。
「意外と大きいですね。」
中に入りずらいです。助けて! 入り口の門をキーッと睨んでいると……
「あんた邪魔」
「ふぇっ!」
急に声をかけられてビックリ! おそるおそる声のした方を見てみると……
(わー、綺麗な子……)
そこに立っていたのは、肌が白くて艶のある髪で右目が隠れている、小柄の美少年でした。
「ほえー」
「……聞いてる?」
「はっ! すみません!」
「……別にいいけど」
これはいけない! 通行人の邪魔になっていました。急いでどこうとすると……
「アァーッ!」
ビクンッと男の子が肩を震わせました。
「なっなに? 急に大声出さないでくれる?」
「そっそのビラ……!」
「えっ……ああこれか」
なんと! 男の子はスナイパー募集中のビラを持っていたのです!
「もしかして、ここの方ですか?」
「……受付に来ただけ」
「よかった〜」
「は?! なにが?!」
私はにーっと笑って、男の子の手を握った。
「私も同じですよ! 一緒に行きましょー!」
「えっ?! ちょっ?!」
男の子が言い終わらないうちに、私は男の子を連れて走りました。
「おい、何してる?!」
「スナイパー志望です! 受付に来ましたー!」
はー。警備員に怒鳴られてしまいました。でも分かってくれたみたい。
「いやー1人じゃ心細くて〜」
「だからって俺を巻き込まな! ちょっ、一回止まれ!」
「嫌です止まりません」
そんなこんなで階段をのぼったりおりたり、バタバタしているうちに、なんとか受付にたどり着きました。
「ふー、やっと着きました」
「バカ。入ったところのすぐ隣にあっただろ」
「ふぇっ?!」
マジですかー。
「まっまー、とりあえず、受付しちゃいましょう」
「はー……」
私は受付の綺麗なおねいさんに声をかけました。
「すみませーん。スナイパーのバイトをしたいのですが……」
「バイト? ああ、そういうこと」
おねいさんは一瞬キョトンとした顔をしましたが、すぐに笑顔に戻りました。
「ちょっと待っててね」
「はい!」
女の人は受付の奥に引っ込んできました。その時、鋭い視線を感じました。
「え?」
視線の先は男の子。うんざりした顔で、「お前大丈夫か?」とでも言いたげそう。「なにがですか?」と聞こうとすると……
「おまたせ」
あっ女の人が帰ってきました……両手に長いおもちゃの銃をもって……。
「あの、それは……」
「ん? 銃よ」
それは知ってますよぅ!それをどうするのですかぁ?!
「ええ、今からテストをしてもらいます」
……テスト?
はー。まさか異世界に来てもテストがあるなんて。てゆーかたかがしゃげきのバイトでしゃう?なのにどうしてテストなんかあるのでしょうか?
そんなことを思っているうちに、準備完了。なんかまわりは権力者っぽい人がいっぱいいるし、しかも自衛隊の人みたいな服を着せられたんですけど?!
「えーまずここのボタンがですがね……」
さっきの女の人の説明も耳に入らず……。
「……というわけです」
あっ終わったっぽい。
「どちらが先に受けますかー?」
「……じゃあ俺から」
おっカッコいい! よ! 日本?1! 男の子は銃を構えて鉄の的に向かって……
ドンッ
……へ? え? なになに? 何この大きい音は。
「ふうー」
「お見事」
男の子の銃の弾は鉄の的の真ん中に当たって、落ちた。え? どういうこと? なんか銃の先から煙出てるし……。 まさか、これ……
「次はあなたですよ。本物の銃を持ったことないなんて言わないでくださいね」
持ったことないです! てゆーかやっぱり本物の銃?!
「何してるのですか? 早くしてください」
「あっはい! すみません!」
どうしよー。でも今更引き返せないし……。私は仕方なく銃を構えました。
「自分のタイミングで始めてくださいね」
「はっはい!」
えーい、もうどうにでもなれぇー! 私は目をつぶって、できるだけ力を込めて、的に向かって打った。
パァン!
ひえー振動がヤバイよー。手が痛い〜。私はおそるおそる目を開けると……弾は大きく的の中心から外れて、大きな穴が開いていた。
(はーやっぱりかー)
こうなるとは思っていたけどね。ううっやっぱりダメかー。あっあれ?なんでみんな黙ってるの?え? 私が下手くそすぎるから?
「……はっ!」
女の人がハッとしてる。そんなにダメだったかなー。
「はっはい! これでテスト終了です。結果は後ほどお伝えいたしますので」
はーもう絶対落ちてるー。まあでもちょっと楽しかったし、まあいいか。
「ありがとうございました」
「……」
ふー疲れたー。あれ?あの男の子は?先に帰っちゃったのかな?
「……さっきの子。どう思いましたか?」
「……目を疑いましたよ」
「私も」「わしもじゃ」「わたくしもですわ」
「……ええ。まさかな『名前のない国』1番頑丈な岩石で作った板にあんなにあっさりと穴を開けるなんて」
「普通の者なら腕が折れているぞ」
「どういうことだ?あの子は一体?」
あたりが騒がしくなる。
「皆様今決断してください。あの子供、ヒカリを我が国の『スナイパー』にするかどうかを!」
ありがとね