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アイリは『太初の鯨』から次のような文字列を発見した。 言葉の運動形式のこと
三日前から言ってたよね。
ああ、かれこれ三日ほど僕は君に言葉についてずっと聞かされていた。
それは言葉が何によって動く生命なのかということだね。
あいにくこの宇宙には言葉がいるらしい。
言葉のハビタブルな場所らしい
愛してると思ったら愛してると言えば良いらしい
そういえば山田君はサバンナに草が揺れる情景を取りに行った
生身の言葉というものを忘れてしまったんだな。
僕も思い出そうとして高校生の頃に書いたラブレターを読み返してみた。
君の机に隠してあったから読んだ。
それからだ、
君が言葉の運動形式について
疑問を持つようになったのは
打ちっぱなしのコンクリートの部屋で君はどうにかしてその答えを反響させた
どうやってもどうやっても言葉は自然発生しない
私たちは『鯨』から言葉をどうやら手にしていることを証明してしまったらしい。
ちょっと残念だったから、動物に戻った気分で泣いたんだ。それからちょっとして動物は泣かないことに気がついたけどね。
ねえ、三日前の僕が思っていたことほ書こうか
それとも、フォークソングにして歌うかい
どちらにせよ簡単が良い
オーケストラも台本もいらない
その場で生まれる何かしか信じないから
君は言った
信じられることについて言った。
だから君は信じるよりどころとしての言葉について知りたいんだね
そうだよわたしは
今日泣くための言葉が欲しい
あしたまで残るようなものはいらないから
意味が生まれるのを待ちなさい
待ちなさい
あなたが創るものじゃないから
言葉が生まれるのを待ちなさい
あなたが書くものじゃないから
言葉が消えていくのをまちなさい
そうしたらまた
書き始められる
息が止まるような行間に
なれよ私の詩の
宇宙的環世界
投げつけられた言葉をちゃんと拾って
一秒前
一秒後の私
骨は拾ってあげる
けど意味はしらないし
意義もブライドも哲学も知らない
一秒前はもう腐ってしまった世界なの
ああ
あああ
ああ
起きてしまった
開いて閉まった
またもや
まぶたが開いて閉まった
常に目の粘膜は新鮮な状態に保たれていて
そうであるのにもかかわらず脳は見たくもないものにショックを受ける
忠実に働く感覚器官に対して
私たちの精神はいかにももろく
こり固まっている
踊りたいと思ったが
体を放棄した人類は
体がなければ踊れないという事実を忘れたまま
脳内で踊り続ける
まるで耳鳴りが音と信じている人のように
花の美しさがあると信じている人のように
海と空にある線が存在していると信じている人のように
雲と光と雲と光
光と雲と光と雲
光と太陽と光
雲と光と雲と光
青い青い青い灰色の雲が走る
白いしろい
ほとばしる世界
教えてくれたから
君は何も考えないでピアノを弾く
それで世界のてっぺんに立ってみた
君は何も考えないでピアノを弾く
その歌を世界中の人が聞いていた
どうにも理解できなかったらしい
君は笑って
良いんだよと言った
言った先に
アイリは『太初の鯨』から次のような文字列を発見した。




