発動条件は用いられた剣
彼女ははっきりこう言ったのだ。
「私は神様なの。」
当然ながら「は?」というのが僕の率直な感想だ。彼女の強気な態度といい、突拍子もない発言といい、文化祭を楽しんでいた時の可愛いらしさとそこから生まれた僕の中での彼女のイメージがどんどん崩れていった。
「なぁ、神様です。って言われて、はい、そうですか。ってなると思うか?」
「なんでならないの?」
僕は間違っていただろうか?
「神様ならなんか特殊能力とか使えるのかよ。」
「あー無理。今、人間の姿だから。」
やはり神様は嘘なのだろう。
「信じきれる要素がないんだが?」
「ま、いずれ分かるから。」
やはり、信じられない。
「それで、とにかく質問したい事が山ほどあるんだが。まず、どうやってあの化け物倒すつもりだ?ってかなんで僕なんだよ?」
「とりあえずさっき言ったように今は人間の姿だから特殊能力は使えない。だから、使えるようにする。そのために君が必要なの。」
一体僕に何が出来るというのだろうか。
「一応ココ拠点ね。結界張っといたから、もし化け物が活動再開してもこの家なら安全。」
「人の家を勝手に拠点にするな!」
「はい!じゃあ早速、力を取り戻しに行こう。」
話を全く聞いてくれない。
彼女に言われるがまま僕達がやってきたのは、学校の裏山にある祠だった。
「外出自粛令も出てるってのに、学校の近くに侵入したのバレたら大事だぞ。」
「仕方ないじゃん。力を取り戻すためなんだから。あの化け物がそのまま居続けちゃってもいいの?」
まだ、彼女の神様説を信じていない僕にとって、これはただの徒労である。
「あった。」
彼女の視線の先にあったのは錆びれて全くあの化け物相手に効くとは思えない剣だった。
しかし、それを彼女が手にしたその時、剣は錆びが消え、光り輝き、祠の中を照らしたのだった。
「これが、神の力ってもんよ。」
彼女はドヤ顔で振り向いた。
「あぁ・・・すげぇな。でも、剣なんかで化け物に勝てるのか?警察とかは銃使ってたけど、全く効いてなかったぞ。」
「この剣はこの世の武器とは違いますから。あと、これは凛君の武器ね。」
「は?僕は剣術なんて知らないし、そもそも僕が戦ってあの化け物相手に勝てると思うのか?」
「大丈夫よ。私もいるし。」
何を根拠に大丈夫と言っているのかわからない。
「君は武器とかどうするんだよ。力を取り戻しに来たんだろ?」
「私が持ってる神様としての力はいくつかあるんだけど、そのうち今回の化け物を倒す為の力の発動条件はその剣が誰かの手によって用いられてる事なの。」
なんて発動条件が面倒くさいというか紛らわしいのだろう。
「私を信じてみなさい!絶対倒せる!さぁ!このまま化け物退治に行くよ!」
そういって彼女は学校の方へ走り出した。
「は!?今から!?」
彼女は走りを止めない。彼女を追うしかない展開になってしまった。
不安だらけだが、もう進むしかない。
いざ出陣だ。