化け物現る
体育館の中の盛り上がりは最高潮に達していた。なんてったって今日は文化祭なのだ。たくさんの生徒達が舞台の上でダンスを披露し、音楽を演奏した。櫻井のぞみはそれを楽しそうに眺めて、手拍子を叩いていた。
ふと、彼女は手拍子をやめて天井を見つめた。彼女の視線の先を見ると、なんとなく天井が揺れているように見えた。
次の瞬間だった。天井に穴が空きそこから黒く太い大きな手が彼女を捕まえようとする。
とっさの判断だった。僕は彼女に向かって走りだし、大きな化け物の手から彼女を守った。
「あなたは・・・」
「今は話してる場合じゃない!走るぞ!」
体育館の中は逃げ惑う多くの生徒とその悲鳴で混乱が起きていた。
僕は彼女の手を握って走りだし、他の生徒が見落としている小さな非常口から外に出た。
学校の敷地の外まで走り、後ろを振り返る。
そこで目にしたのは体育館を粉々に破壊する黒く、まるで大きな影の塊のような化け物の姿だった。
「なんだ・・・あれは・・・」
目は一つしかなくとても大きい。他の顔のパーツははっきりしていない。手はあるが足のようなものは見受けられない。確かにこの世のものではない。そう感じた。
次の日のニュースは昨日の化け物の事でいっぱいだった。すぐに警察や自衛隊なども出動したようだが、化け物に武器という武器は全く効かなかった。
体育館のガレキに当たった生徒が何人か怪我をしたらしいが幸い死者は出なかったようだ。
化け物がさらに多くの被害を生むことが予想されていた。しかし、化け物は学校の敷地内に居座り続け、体育館を完全に破壊して以降活動を止めてただひたすらたたずんでいた。
次はいつ活動を始めるか人々が心配するなか、全く動く様子のない化け物に人々は疑問を持った。もう事件から1週間も経っている。
まだ当然ながら休校状態であったため、僕は家にいた。
ピンポーンとチャイムの音が鳴り、ドアを開けるとそこには彼女が立っていた。
「どうして僕の家を知ってるんだ?一体何の用?」
「矢継ぎ早に質問しないで。とりあえず外出自粛令も出てるんだから、中に入れてよ。話はそれから。」
僕は彼女を渋々家に入れた。
家に入るなり彼女は僕の部屋を勝手に探し出し、入っていた。
「おい、勝手に人の部屋に入るなよ。」
「別にいいーじゃない。なんか見られたら困るもんでも置いてるの?」
彼女はいたって強気だ。
「とにかく、本題は何だ?」
「化け物の事よ。一応この前助けてくれてありがとう宮部凛君。」
「名前まで知ってるのか、あの時が初めて会話だろうに。」
すると彼女はムッとして強気な態度をより一層強めた。
「どういたしましてとか言えないの?あと、別にクラスメイトなんだから名前ぐらい分かるでしょ。」
そんなものなのだろうか。僕はほとんど知らない。
「あぁ!もういい!とりあえずこれからが一番大事な話。あなたに頼みたい事がある。私と一緒にあの化け物を倒して。」
ここから僕と彼女の戦いが始まった。