景色が好きな少年の話
僕は、車窓から見る景色が好きだ。
学校の窓から見る景色が好きだ。
ビルの屋上から見る景色が好きだ。
山の頂上から見る景色が好きだ。
街の景色も田舎の景色も好きだ。
走っている時流れていく、そんな景色も好きだ。
もうすぐ冬だというのに、寒さを全く感じさせない部屋の中で、カーテンが開かれる。
僕は陽光の眩しさに、目を細める。
最上階にいるのだから、その窓からの眺めは最高だろう。
僕は首を少し傾け、カーテンを開けた桃色の服の誰かに、何かを言おうとして、しかしその口は、何かを紡ぐことなく閉じられる。
口の動かし方がわからない。
諦めて瞼を下ろす。
僕は静かに眠りにつく。
少年の部屋に飾られたマリーゴールドが、その花弁を散らした。