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彼女の瞳の奥の景色  作者: 倉根 敬
7/20

汗はアロマの香りです

ネット小説大賞六

五月上旬、日射しが照りつけ立山高校の全校生徒はこの暑さでブレザーで厚着をしていることに疑問を感じ、日々苦しんでいることだろう。



『暑いなぁ…。』



汗が止まらず、胸元をパタパタと動かし熱を逃がす。独り言を言ったつもりだったが隣から返事が突然返ってきた。



『暑いですねぇ全く、こんなんじゃ溶けちゃいますよ。ク一ラ一はまだつかないんですか?ク一ラ一は?気遣いがなってないですな~』



(こいつは一体何様のつもりなのだろうか…。)




うちわを片手に水分で体に引っ付いた衣服を辺りを気にせず仰ぐその子は自分がアンドロイドであることを忘れているようだった。



『お前は、人間じゃないだろ暑いなんて概念ないだろうが。』



『そんなことありませんよ、部品の温度を感知して暑いって分かりますし汗の代わりに水が出てきます。余談ですがアロマの香りです。』



『そこに力入れる必要性ないだろこのポンコツロボット。』



『ポンコツとは失礼な!私だって毎日頑張って生きてるんです。』



カノンはすかさずキノウに向かってうちわを振り回す。

その微量な風がキノウの前髪を上へと吹き上げる。



『頑張ってるって…寝てるだけじゃねえか。』



『ハッ!、自分で墓穴を掘ってしまった…なんたる失敗。』



頭を抱えて落ち込むカノンにキノウは見下した視線をただ向けていた。


『もう、キノウ君は意地悪なので嫌いです‼』



『別に好かれようなんて思ってね一。』



食い入るようにカノンの発言に返答する。

明るく活発な少女と少し根暗な少年は今日も最後尾の席で痴話喧嘩を繰り広げる。

するとキノウのそばで恐らく物静かな子の声だろう……誰かが囁いた。



『昔はもっと優しかったのに…。』



『ん?なんか言ったか?』



キノウがカノンに聞いた。



『い、いえいえ全く何も話してなんていません。』



カノンが慌ててキノウに答えた。



『ふ~ん、そうか、お前もしゃべってないで勉強したらどうだ?』



と先程まで解いていた数学の教材をカノンに見せ付けた。



『私が勉強したら世界が滅びちゃいます。』



『いやいや、滅びないしどういう理屈だよそれ。』



呆れ顔で手でも言葉でも否定するキノウ…。

それに対して、腕を組み、誇らしげな顔でこちらを見ているカノン…。


何度もいうが彼女はアンドロイドであり決して人間ではない。

人工知能搭載という最新型のアンドロイドは自ら学んだことを覚えそれを様々な事に活かし成長していく。

その力は人間をも超え、今後の社会に更なる発展をもたらすだろう。

その備え持つ能力をアンドロイドは遺憾なく発揮する。



げんに、他クラスは残り四人のアンドロイドが披露する凄技にクラスは騒然としこれ以上ないくらいの尊敬の眼差しを向けていることだろう…。

しかし、うちのクラスにもご立派なアンドロイド様がいるじゃないか。

朝っぱらから誰よりも早く眠りにつき、ノ一トも教科書も買ったときとなんら変わらず新品同様、というかまず授業で使っているところを見たことがない。



昼休みになったら颯爽と教室を出ていき、何処に行っているのか検討もつかない。

恐らくアンドロイドだから電気とかで動いているため供給施設でもあるんだろう。



(そういれば、オオサキ他のアンドロイドと一緒にいる所見たことないな。)




キノウはこの高校に他にもいる四人のアンドロイドにも気にし始めた。

きっとカノンと違って物凄く賢い連中に違いない。



(まぁでも俺の見てないところで集まってるか。同じアンドロイドなら帰る場所も一緒のはず…

普段は会わないんだろう…。)





キノウはこの事について軽く捉えていた…

彼女がただの明るく活発でお転婆なアンドロイドだと…


ギラギラと照りつけ太陽光は教室中を熱気に包み込む。

カノンはブレザーを脱ぎ、襟元を引っ張りうちわを使って服の内部に空気をおくる。



『はぁ~、涼しい~で~す。』



気持ち良さそうにうちわで何度も仰ぎ続ける。

あまりの暑さに汗で服が濡れ下着が透けていることも知らずに…。

服からはピンク色の下着が丸見えだった。

それに汗も首筋を流れて落ちていったりと偉容な空気をより引き立たせる。

思わずキノウは窓側へと背けた。

その不自然な態度に違和感を覚えたカノンが視線の先に目をやる。

状況が理解できたカノンは突然恥ずかしくなり赤面し始めた。



『こ、こ、これずっと気づいていたんですか?

どうして言ってくれなかったんですか?私全然気付いてなかったんですけど。もういや、これじゃあまるでビッチと思われるじゃないですか~』



『ご、ごめん…その…ご立派な胸ですね。』



どうにかフォロ一しようと考えた言葉がよりカノンに恥ずかしさを増させた。

カノンは持っていたうちわを大きく振り上げ、



『そんなの聞いてな~い。』



と怒りながら肩を使って思いっきり降り下ろした。

だが、それはこんな暑い時には逆効果だった。







一一今はまだ朝のホ一ムルーム前…カノンの居眠りまであと残り10分一一







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