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彼女の瞳の奥の景色  作者: 倉根 敬
6/20

居眠りアンドロイド

ネット小説大賞六

一一午後2時一一

数学の授業で先生が問題、解答、解き方のヒントなんかを黒板に次々と書いていく…二年一組の数学担当はかなり教え方が上手いと評判の先生だった。



しかし、今まさにキノウは数学の問題よりも難しい難題に悩まされていた。

それは隣の席にとんでもない居眠り少女が来たことだ。

正確には少女というよりアンドロイドの少女だ。

ここ立山高校が政府からアンドロイド導入計画の指定高校に決まったことによりうちの高校には五人のアンドロイドが転入してきた。

こいつらは人工知能が搭載されており、自らが問題解決に挑み自ら学び正解へと辿り着いていく。

この能力に関していえば人間より勝り人間よりも遥かに早く結果を出すことか出来る。

だが、今この説がキノウの中で迷信になろうとしていた。




『ぐう~~ぐう~~』



教室中に鳴り響くいびきはクラスメイト全員の注目を集めるのは容易いことだった。

『え~と、オオサキ カノンさん?』




あまりのうるささに先生がカノンを起こそうと試みる。



『ふあ~~良く寝ました~もうお昼の時間でしょうか?』

大きなあくびをし目覚めたカノン




『いやいやオオサキさん、まだ授業してますしもうお昼過ぎましたよ。』




先生が呆れ顔でカノンの珍発言に突っ込む。



『え?どうして先生がいらっしゃるんですか?まさか休み時間でもこの私を苦しめようというのですね、そうはいきません、さぁ帰った帰った~。』



教室の扉を指差してカノンが先生に向かって抗言する。

とうとう先生は教師らしい行動をとった。



『オオサキさん、そうですねぇそれじゃあ例題三から八までを答え見ずに黒板に書いてください。それが出来たら寝るなりなんなりしてください。』




先生はそう言うと教卓へと戻っていった。

因みに例題三から八までなんてまだそこまで進んでいないし時間だってあと五分で授業が終了する、つまり何があろうと解けるはずがない。

キノウは先生と同じように呆れた顔でカノンの方を見た。

カノンは一人で教科書とにらめっこ中だ。

この調子では例え時間があっても無理だろう。



(こいつ本当にアンドロイドかよ…。)



心の中でそういってキノウは残り時間を空を眺める時間に使うことにした…。



一一休み時間一一

今キノウの隣には机に頭を乗せたポンコツアンドロイドが座っていた。



『ん~~』



何やらうめき声が聞こえる。



『ん~~』



徐々にだがその音はどんどん大きくなっていく。

鼻が机に押さえられているため鼻声のようなうめき声だ。



『ん~~ん~~』



連続して言ったと思ったらいきなり

『だ~~、もう何なんですか!良いじゃないですか寝たって、アンドロイドだって寝ますよ、人工知能だがなんだか知らないけど期待しすぎですよ‼アンドロイドだって個性あるんだから仕方ないでしょ‼』



カノンは足をバタつかせ腕を振り回し机の上という狭いテリトリ一で暴れた。



『うう、胸が苦しいぃ』



その他人と比べようがないほど大きい胸は見栄えはいいかもしれないが、カノンの行動パターンのどれにもプラスにはならない、いつも動き回る者には重りまたは肩を凝るだけで行動範囲を狭まれる忌ま忌ましい物体なのかもしれない。

キノウは、またもや頭の中で考えてしまった卑猥な物に酷い罪悪感を覚えた。




キ一ンコ一ンカ一ンコ一ン






授業が始まると共に隣の席に奴は万全の形でうつ伏せになり


『それではキノウ君!お休みなさい。』


とだけいってまたもやイビキをかき出した。




(こいつ帰んねぇかな?)




キノウはお構いなしに教科書を開き、授業に集中する。



(ん?待てよ今さっきオオサキ、俺の事キノウ君って……会って数日でもう下の名で呼ぶのかよ。)



友達のいないキノウにとって上の名前ですら呼ばれるのは珍しい、いつも『君』や『ねぇねぇ』等と言われるのが普通だと感じていた。

それが一気に下の名前である、キノウにとっては違和感しか感じないのだ。




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