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彼女の瞳の奥の景色  作者: 倉根 敬
3/20

登校する勇気

ネット小説大賞六

学校についた頃には既に十時を回っていた。

通学道中、電車の中で何度も引き返そうかと思った。

二時間…所要時間が長すぎる。

これでも早く着いた方だ。

元々自分で決めた高校だから全責任は自分自身にあるがそれにしても中学時の俺は考えが甘すぎた。




町の高校へ行けば多種多様な人が集まり俺でも馴染めるのではとふんで選択したが間違いだった。

結局何処にも俺の居場所はない、人と話すのが苦手な俺は小中と友達と呼べる相手がいなかった。

軽く話す程度の人ならいるがいつもとはいかない。

そのせいで体育時の『二人一組』遠足時の『集団で弁当を食べる行為』等は相当苦労した。

二人一組ならまだしもそれ以上はペアの子の友達グループに入る羽目になるためいつも空気が重い。



そうこう言ってるうちに下駄箱についてしまった。

どうやら先程まで朝会が続いていたみたいだ、一斉に各教室へと向かう生徒たちが見える。

学校の構造により下駄箱は、只靴を置く場所に過ぎない。



キノウは下駄箱に入れてあったシュ一ズに履き替える。

その先にそびえ立つ校舎に出迎えられると共に自身の教室へ帰っていく生徒たちにキノウは視線を向けられる。

遅刻者はこんな風に授業中やら集会やらがあろうと晒し者にされる構造だ。

正面には四季の道とかいう洒落た公開処刑ロ一ドがキノウを校舎へと導く。

一階から最上階の四階まで隔たりなく俺を見つめる生徒。



(そんなに遅刻者が珍しいか!?)




キノウは鼻で大きく空気を吸い込み全身に受ける視線の矢を吹き飛ばす思いで口から吐き出す。

決心がつき校舎へと踏み出したその一歩はさながら武士のごとく敵陣に足を踏み入れた。

キノウが一歩ずつ踏み出す度に視線の数は増えていく。




やっとの思いで校舎入り口へ到着した。

あとを絶たないその視線を見向きもせず颯爽と進み続けるキノウは今日の始めの第一関門を突破出来たことに安堵した。

(…皆見すぎだろ⁉)

現在は左にA棟、右にB棟と別れた校舎の中にいる。

幸いキノウは高校二年、二階である。

廊下を進み階段を上っていけば、教室はすぐそこだ。



二年一組と書いてある看板となんとも入りづらい生徒の笑い声や動き回る者達が作るキノウと教室までの見えない壁。

第二関門とまではいかなくともこの空気の中入るのは至難の技だ。

またここでキノウは、四季の道の時のように深呼吸をし勇気を振り絞ってその見えない壁を壊し教室へと入っていく。

案の定、というか当たり前だがこんな時間に登校した者は当然クラスの視線を集める。

授業中だったら静まりかえった中、あるのはチョ一クと黒板のぶつかる音、先生の声、居眠り野郎

のいびきしか聞こえない空間に割り込むように入っていくあの時よりも幾分マシのようなきがする。


キノウは、自分の机に腰掛け鞄を置き特になにもする予定がないため必需品の小説を片手に本の世界へと入っていく。

あの夢の中と同じ感覚を得るためにあたかも現在進行形で起きている出来事だと認識できるようにページをめくり想像力を働かせていく…。




物凄い速さで読み進めていくその姿は夢で出会った茶髪の少女を探しているようだった。











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