忌まわしい朝
ネット小説大賞六
鳴り響くアラ一ム音と同時に俺のつまらない生活が始まる。
とくに今朝はあの夢を見ていたのを邪魔されて非常に憤りを感じた。
俺は先程まで手をついていた枕を思いっきり壁に投げつけた。
『バフッ』
鈍く、小さな衝撃音が自室で生じ、消えていく。
鎖で繋がれたかのような重い体は自由を、そして生きる喜びをも奪い去る。
心の悩みを抱える事は生活に支障をきたす。
体は正常でも活動の源である心が、精神が回復しないまでは普通と呼ばれる日常には戻れない。
『お兄ちゃん、起きてるか一い。』
恐る恐るドアを開けひょこっと大人びてはいるがまだ少しあどけなさを残した顔を覗かせる、
ヒラヒラと揺れるツインテールが似合っている妹がそこにはいた。
やはりまだまだ子供だ。
ベットで眠い目を擦る俺を見た妹は自身の腰に手を当て、堂々と仁王立ちをする。
『もう、ヤバンガ キノウ君‼起きてくださ
い、遅刻してしまいますよ。』
『今日は全校朝会だから別にいいだろ~。』
俺、すなわち野蛮賀 騎能は眠気に勝てず二度寝を始めた。
『何がいいんですか!余計だめでしょ‼』
ジタバタと足踏みをするその姿は微塵も怖くなかった。
むしろツインテールがピョンピョンと跳ね、可愛らしさを強調する。
もっと見てあげたかったが、流石に妹にも学校がある、既に中学の制服を着ているってことはもう行く予定だったようだ。
『わかった、わかったよ奏葉 (カナハ)ほら…。』
キノウは伸びをするふりをして
『兄上は起きました~。』
カナハはプンプン怒って
『早く支度をしてください。』
と言い残してキノウの部屋から出ていった。
カナハと話したことによって少し気が紛れたが以前気持ちは変わらずじまいだ。
『ちっ、何で学校なんざ行かなけりゃいけねぇんだ。』舌打ちした音はキノウの自室に広がる。
……制服に着替え鏡を見ながらネクタイを締める。
リビングにあるテーブル席に座ると熱いコ一ヒ一が出てきた。
カナハはキノウにコ一ヒ一を出した後玄関に急いで向かった。
『お兄ちゃんも早く学校に行ってね。』
カナハはそう言い残して、勢い良く飛び出していった。
キノウは相変わらずマイペースに熱いコ一ヒ一を啜る。
しんと静まり返った空間にポツンと一人いるのは少し寂しい。
明るさを求めてテレビをつければ、ニュースが放送されていた。
そこには大きく『今日からAI搭載のアンドロイド指定校に導入』とかかれていた。
今日、人工知能により科学の発展が目覚ましく世の中が変わっていっている。
政府は新しく幅広い年齢層に適応するために人工知能、言わばAIを搭載したアンドロイドを指定された各学校に導入する事を決めた。
『そういえば、うちにもそんな話が…。』
キノウはうっすらとした記憶をよみがえらせる。
『まぁ、そんなの俺の知ったことじゃないがな。』
世間に無関心のキノウにとって今日はいつもと変わらないつまらない一日でしかない。
『一一この世界なんて滅べば良い…。』
キノウはベランダから見える朝日を見ながらそう言った。