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彼女の瞳の奥の景色  作者: 倉根 敬
17/20

自宅のご騒動

『んっは一一!わかんない、わかんないです。何故ですか一一?』


『日頃から寝てるからだ。』


半日ぶりのこのやり取りはキノウにはなぜか懐かしく新鮮な気分でもある感じだった。




『どこが分からないの?見せて。』



そう言うのは、先程からキノウの自室から拝借した漫画を読み漁ってるニシオカ ハルサメだった。



『教えてくださるのは大変嬉しいですが、どうして、勉強しないんですか?不公平ですよ。』



『だって、私達、アンドロイドだものテストなんて答え写す作業じゃない?』



『なんて、奴等ですか……まさかカンニングするつもりですか……』




『全く違うだろ。』



相変わらずのカノンの無能っぷりだ。

恐らく、今日一日が終わるまでにとんでもない数の珍発言・珍解答が生み出され続けるだろう。



『ワケわからないこと言わないで、さっさと見せて、一応オオサキさんも建前はアンドロイド何だから、何がなんでも点を取らないといけないのよ。』


『居眠りしてるくらいだからたぶん、うちのクラスの連中ならわかってくれると思うけどな。』



『それでも、一緒にされたくないわ。』


『飽くまでプライドの問題ね。』


『当然よ。』


というわけで、アンドロイドの品格を下げないためのテスト勉強が始まった。

しかし、彼等はただ授業で学んだことを完璧に覚えているだけではなく、出題傾向、また部分点をどこで取るか等事細かに分析しているためとても心強かった。



勉強を拷問と例えるあのカノンが文句も言わずニシオカの指導についていっていた。



『やったー、終わった一、これで完璧ですね一。』



『まだ半分も終わってないわよ……。』


『げっ……。』



カノンはおよそ三時間程経っただろうか、黙々と勉強に取り掛かっている事にキノウは関心していたが、どうやらやっていた時間ほど進行していなかった。


『一体、私はいつ解放されるですか……。』



『百点取れる可能性が出てくるまでかしら……。』



『ニシオカさん……殺す気ですか?』



『アンドロイドだから問題ないわよ。』



『中身ちゃんと人間やってますよ。』


カノンは少々後悔をしていた、せめてこのニシオカにだけは真っ先に真実を伝えるべきだったと。

こうも言い様に言葉の解釈をされてしまうと黙っていたメリットは微塵もなかったということになりかねない……いや全くない。

場の空気が良いと思わしくないため、キノウが気を使って話題を変える。



『そうだ、皆、喉乾いてないか?何か妹に持ってこさせるよ。』


『私達はアンドロイドよ、喉なんて乾かないわよ。』



『そっか……。』




(ヤバい、気不味い。しかも、なんか今の恥ずかしかった。)



完全に何もできないことに困り果ててしまったキノウ一一。

無意識に隣の部屋でソファ一でテレビを見ている妹一一カナハの方を見る。

カナハからは『お兄ちゃん、バカだねぇ』なんて言わんばかりの顔がこちらを見ていた。




『でも、このまま続けるのも効率が悪いわね。仕方ない、今日のところは初日ということで中断しましょ。』



『ありがたき幸せ。』



『いつの時代の人間だ……。』




カノンが大袈裟に今度は今朝とは反対にハルサメに向かって深々と礼をする。





『ちょ、ちょっとそれは反則よ。いくらなんでも酷いわ。』



『えへっ、お返しです。』



(最低だ……。)




カノンの場をわきまえない行為に彼女以外誰も笑みを浮かべてもしていない。

漸く、場の雰囲気に気付いたカノンはしょんぼりと落ち込んだ顔を見せた。




現在時刻は既に午後九時を回っていた。

今だ、夕食も済ませていないキノウはカナハにすっかり冷めてしまったカレーを一人で寂しく食べていた。

しばらくたった頃だろうか、突然、通話音がどこからか聞こえてきた。



『?……おい、誰か鳴ってないか?』



『あら、ごめんなさい私だったわ。』



と自身の電話に出たのはハルサメだった。



『はい、ニシオカです。わかりました、すぐに向かいます。』



短い電話ではあったが、それはキノウ宅の収容人数の減少を知らせる電話だった。




『どうしたんだ?』



気になったキノウはハルサメに通話内容を聞いてみた。

普通の人間ならともかく、アンドロイドとなると研究施設からなど少々興味の湧く事が起きる予感がするからだ。



『特に、大したことではないけれど私達が帰ってくるように言われたわ。』



『そうか。』



『こっちから、泊まりだなんて誘っておいて押し掛けたのにごめんなさい。』



『構わないよ。』


すると、ハルサメ以外の漫画を熱心に読んでいた三人は本を閉じ、一斉に帰る支度をする。



『急に押し掛けて悪かったな。漫画、面白かったよ。男ってエロいことばっかり考えてるんだな。』



焦げ茶色の髪の図体の良い男一一一一カンテンは感想を述べた。



『お前も男だろ……。』



『ははははは、性欲なんて大層な物、アンドロイドには無いもんでな。それじゃあ、いつかまた読ませてくれよ。』



『ああ。』



『お邪魔しました。』

と水色のセミロング少女一一一一ミユキは丁寧に挨拶をした。




最後に下の名前で呼ばれることを嫌っていたトウジョウは軽くお辞儀をし、玄関の方へと歩いていく。




『またね。』



それだけ言うと四人のアンドロイドは扉を開け出ていった。



急に静かになったキノウ宅にはカノンが奥の部屋で寝っ転がっていた。



いきなり家の人口が減り、さらには自分の好きな人と二人一一。

どう、話の出だしにキノウは悩み声を掛ける第一声を考えていた。

先に話を振ってきたのはカノンからだった。

それは振るというよりは気づいてるくせに話をしやすくするために気づかなかったようなフリをした感じだった。



『あれ?他の四人はどこに行ったのですか?』


『もう帰ったよ。誰かは知らないけど呼ばれたらしい。』


『ええ~帰っちゃったんですか?つれないな~。』


ゴロゴロと床を転がるカノンは駄々をこねるような動作をする。



『お兄ちゃん、私もう寝るね。』



突然、キノウの背後から眠たそうにし、目を擦るカナハが現れた。



『わっ、ビックリした~。おう、分かったおやすみ。』



『おやすみなさい。』



と言うと、カナハは自室に向かって階段を上っていった。



『カノン、そろそろ俺達も寝よう。』



『どうしてですか、まだ10時にもなってませんよ。夜はまだまだ長いですよ。』



『何言ってるのか分かんないけど。ほら、一応男と女だからさ、問題は起こしたくないだろ。』



『何を今更……、私達は夜を共にした中じゃありませんか、大丈夫です。私達なら乗り越えられます。』




『何をだ。そんなこと言うが、話す内容なんてほとんどないだろ。』



『ええ~、山ほどありますよ。私、キノウの事全然分からずじまいですよ、ご両親の事とか……。』



『……それは俺が話したくない。』



キノウの顔色が多少だが暗くなった。



『亡くなられたんですか?……』



『……ああ、そうだよ。…………なんか悪ぃ、シラケちゃったな、だからもう寝ようぜ。どうせ起きたら朝はくるんだ。』



『わかりました。今はテスト勉強に集中ですよね。気を引き締めます。』



『え一と、カノンは奥の部屋で俺は居間ででも寝るとするか。そんじゃあ、おやすみ。』




『おやすみなさい。』




お互い、寝る前の挨拶を交わすとそれぞれ寝床についていった。




しかし、暫くするとキノウは自分が風呂に入ってないことに気づいて疲れきった体を起こし、浴室へと向かっていった。







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