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彼女の瞳の奥の景色  作者: 倉根 敬
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新たなる友人たち

一一一一秘密を伝えると予想通り四人全員唖然としていた。

無理もない、正体を知りたいとは言ったがまさか人間だったなんて想像もつかないはずだ。

沈黙に沈黙が重なり合い、お互いに顔を見合っている時にキノウが話題を変えようと四人に自分達の名前を聞いてみた。

この四人の中でリーダー的存在である、ピンク髪の女の子が総括して皆の名前を言い出した。。




『私の名前は西岡 春雨【ニシオカ ハルサメ】。』



『は、はるさめ!?……』

キノウが思わず聞き返す。



『そうよ、文句あんの?』




『いいや、全然。』



『そして、後ろにいる二人の焦げ茶色の髪をした方が北浦 寒天【キタウラ カンテン】』



(二人続いて食べ物か……。)




『もう一人の男が東条 豆腐【トウジョウ トウフ】』



ハルサメはそう言って、後方の紫の髪の物静かな青年を指差す。

紫のク一ルな雰囲気を醸し出す青年一一トウジョウ トウフは自分の名前に不服そうな顔をして、一言付け加えた。




『トウジョウで結構だ。トウフなんて呼ばないでくれ。』




『何で……こう、食べ物の名前が続くわけ?』



『開発部が愛着沸くようにってふざけた名前をつけたのよ。』



少し恥ずかしそうにピンク色のポニ一テールの女の子一一ニシオカ ハルサメが返答する。



『何だそれ?……まぁ、人の名前を馬鹿にするもんじゃねえよな……、それで、どうせ君も下の名は食べ物何でしょ?』




とキノウは水色のセミロングの子に話しかける。

少女は不思議そうに自分の名を申す。



『私は南 深雪【ミナミ ミユキ】だよ。 』



『そこは、食べ物で来いよ!』




意表を突かれ、つい声を張ってしまった事に後悔した。

異様な空気に押し潰されそうな時、質疑する焦げ茶色の髪一一キタウラ カンテン。



『そんなことより……これは事実なんだよね?』



さっきまで見ていた、学校にいるいつも見ているカノンが止まり、ベッドに寝ている女性に移るのを目の当たりにしたのだから当然こんな質問がされてもおかしくない。

目が細く、どこを見ているのか検討もつかない筈なのにしっかりとカノンの方を一一本人の方を見てることはすぐに分かった。




『それにしても、不思議な事もあるものね、誰も知り合いがいない学校を選んでおきながら同じ小学校だった子でしかも、再開はロボットでの姿だなんて。さぞかし驚いたでしょう?』



同情の意を込めてくれたのは、ピンクの髪の長身ポニテ一一ニシオカ ハルサメ。



『その……ニシオカだっけ?、気にしてくれるのは嬉しいんだが、俺自身はその時まだカノンと幼い頃に会ってたとか知らなくてまず、素直にカノンがアンドロイドじゃなくて生身の人間なこと事態にビックリしたからさ。』



『何だ、あとから気づいたのね。』



『そういうことだな。』



ふと、キノウはカノンの方をみた一一正確にはカノンの横顔を見た。

今朝の時ほどの仲ではないことは確かだが、決して今だ良好とは言えない状態だった。

キノウからカノンに話しかけるのは教室を出てから最初の一言だけしか交わしていない。

そのため、カノンがどうすれば今まで通り接してくれるのか、また、どう対応すればいいのか、自分のどこに原因があったのかかなり悩む必要があった。

しかし、彼女を好きなことになんの疑いもない。




『それで、目的のオオサキさんの正体を知るということに関しては俺たちは知れたことだがこれから俺達の関係はどうしていくわけだ?』



口を開けたのは、紫の髪をした長身の片目を隠した青年一一トウジョウ トウフ。

それには、カノンでもなく、キノウでもない、ニシオカ ハルサメが答えた。



『トウフ、私達は約束したのよ、正体を知れたらもう関わったりしないって……約束通りもう私達はこれでオオサキさんには一切関わってはダメよ、それに……こんな事情があるなら、なおさら邪魔してはいけないわ。』



当初の交わした約束でいくと、その通りになる……だが、その事に対して一言物申したいことを言うためにある人物が話し出す。



『あの~、確かにそんな約束をした覚えはありますけど、せっかく知り合えたんですよ、お友達となっても言いと思うんですが。』



その提案をしたのは当然のことながらカノン本人であった。



『カノン自身がそうおっしゃるなら構わないけど、私達……というか、私は貴女に危害を加えさせた張本人よ?、それでも仲良くしたいと思うの?』



ハルサメにはその事だけが心残りというか引っ掛かる所ではあったが、それに対してもカノンは物申す。




『それはもういいですって、私も悪いとこ、ありましたし。お互い様ですよ。』



『そう……ありがとうね。』



ハルサメが安堵の声を上げたことに病室内の一同全員がそれを見ていた、やはり相当あの行動にしては後悔したことなのだろう、仕切りにカノンに謝ったことによってその反省の気持ちが見てとれる。



『そうとなれば、是非とも協力させてほしい、残りわずかしかない命なんだろ、大事に生きないとな。嫌な思いはするだけ虚しくなるだけだ。』




『そうね、私達にできることがあれば何なりと言って、全面的に手を尽くすわ。』




『皆さん、ありがとうございます。』



この厚意に感謝するカノン一一しかし、それを複雑な思いで捉えるキノウ一一二人の間にはドンドンドンドン亀裂ができているのではないかと気にしているのはただ一人のようだった。




『カノンさんは、小学校五年生で生まれて初めての学校だったそうだけど、学校行事なんかは参加したの?』



ミユキのいきなりの問いにも冷静に答えるカノン。

常日頃、考えていることだったということだろう。




『いいえ、初めてといっても病院にいるときの方が長かったですし、体が弱いってことからあまり参加できませんでした。』



答えは、質問には的確だが、どことなく解答者からは寂しげな感情も混じっているようだった。





『なら、今回が学校行事に参加できる最後の年なのね。それは沢山の事に挑戦しないのね。』



と前向きな言葉を掛けてくれるミユキはこれからの学校生活に大いに心強い友達になるだろう。




『はい。いっぱいやりたいこと満喫してやりますよ。』




そんな期待が浮上するなかでキノウだけが不安に押し潰されそうになった。

恐らく、自分の存在価値が分からなくなってきたのだろうか。



『よし、そうと決まれば早速何からするか計画を練らないとね。』



『そうですね。』



『私も頑張って協力するわ。』



『俺も全力を尽くそう。』




『俺もその計画に混ぜてもらえるかな?』




ミユキとカノンの二人以外にもハルサメ、カンテン、トウフと食べ物三つの名前をつけられた三人が仲間に加わった最中、ひとりが現実へと引き戻す言葉を投げ掛ける。



『盛り上がってるとこ悪いがお前ら、テストが近いこと忘れてないか?』





『テスト……ですか……。』



カノンがその言葉を何度か反芻する。

居眠り常習犯の最大の山場一一定期テストという言葉だけでカノンの脳内がこんがらがっていた。



『特に、カノンは今回かなり危ないじゃないのか?毎度毎度、寝ていたんだし。』



『危ないどころか、記憶から抹消していましたよ、テストのことなんて。』




まともな会話の成立にキノウは心の底から嬉しく思った一一今朝からほとんど口を利かなかった関係が崩れ去った瞬間だった。

だが、そんな幸福な時間をニシオカ カンテンが直ぐ様消し去っていった。




『あら、ならあんたの家で泊まって勉強会でもすればいいじゃない?別にいいでしょ?』



『えっ?んな突然に。まぁ、問題はないけど。』



唐突なハルサメからの提案に答えられるキノウ一一一一それには悲しい理由があった。



『よし、そうと決まれば、すぐにでもあんたの家に行くわよ。』



『えっ?今から?』




『当たり前じゃない?善は急げよ。』




『急ぎすぎだろ……。』




『私、お着替えとか持っていきますね。』



カノンが慌てふためいて一人テンパっていた。




『何言ってるの、ロボットの体になればいいじゃない。』





『そうですけど……あの……キノウ君、本当に良いんですか?今日行っても。』




カノンの気遣い、心配はキノウにとって、何者にも変え難い嬉しさに満ち溢れる行為だった。



『うん、構わないよ。』




(とは言ってもな……カナハに怒られるのは避けられないだろな。すまん、カナハ。)




そういことで、カノンとキノウの二人に新たに四人のアンドロイドが加わった。



『オオサキさん、大丈夫?先行ってるわよ。』




病室の外からハルサメの催促の声が聞こえた。


『は一い。』






それだけ言うと病室の明かりは消えた。






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