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アイ
アイは、生まれる前から森の民の守り人になることが決まっていた。
アイの家では、祖父も父も兄も代々守り人をしている。
守り人は、森に棲む大きな獣が村に近寄らないように村の周りに柵や罠を作ったり、時には長が大事な仕事で王宮に出かける時の護衛をしたりする、村の中でもとても大切な仕事だ。
丈夫な体と強い力がないとできない。
だから、アイもアイのお父さんもお兄さんもみんな馬と同じくらい背が高いし、鹿のようにとても早く走ることができる。
アイの瞳は透き通った藍色をしていて、いつだったか翠がまだとても小さくて、何処に行くにもアイに手を引かれ歩いていた頃に、これは海の色だよと教えてくれた。
海は見たことがなかったけれど、アイの瞳と同じなら、それはとても美しい色なのだろうと、その優しい笑顔を見上げながら翠は思った。