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スイ
「うわぁ、きれい・・・」
煌々とさんざめく星空。
森々と静まりかえった森のなか、闇夜の底にのまれながら、黒い折り紙に散りばめたような煌めきをうっとりと見上げる。
星の光を映してまたたく少年の瞳は翠色。
「きれいだねえ、ラズ」
足元に寄りそう黒猫を優しく抱き上げれば、それに応えるように長い尻尾を少年の腕にするりとからめる。
夜色をした少年の愛猫の瞳には夜空の輝きが閉じこめられている。
眠れない夜の秘密の散歩。
月もなにも見えない夜でも、この瞳を覗きこめばそこに星空が見える。
だから独りきりで待つ長い夜明けも、スイは全然さびしくなかった。