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彼と金と  作者: オト
4/11

4

「ありがとうございました」

「ありがとうございましたぁ」


現在午後3時、コンビニでバイト中。そろそろ上がりの時間だ。


「ねぇねぇせんぱいしってます~?なんと私、あの王子と同じ大学なんですぅ!」


知らん。どの王子だ。興味もない。

などと言えるわけもなく、情けなくも2歳も年下であり後輩である理香ちゃんに最大限気を使いながら言葉を返す。


「えっと、どこの国の王子様かな?あと、一応まだバイト中だし私語はあんまり、」

「え~!?先輩、王子のこと知らないんですかぁ!?」

「えっと、こ、声が大き」

「大体、どこの国の王子様?、ってなんですかぁ!笑わせないでくださいよぉ~!本物の王子様なわけないじゃないですかぁ!比喩ですよ、ひ、ゆ!通り名みたいなもんです!」

「…」


バイト中にも関わらず大声をあげてお腹を抱えて笑う理香ちゃんを、バレない程度に横目で睨む。今は幸いお客はいないが、信じられない程態度が悪い。まぁいつものことだけれど。一回バシッと言ってやりたいところだが、それは出来ない。この女は、こんなでもこのコンビニグループの社長の娘…社長令嬢ってやつである。ぼんくら息子ならぬぼんくら令嬢。逆らったり怒らせたりしたら、私の首は一瞬で飛ぶ。


「王子はぁ、すっごい綺麗でぇ、かっこよくてぇ、いつも笑顔でぇ、優しくてぇ、とってもお金持ちなんですぅ!」


王子はなにやらすごい人なようだが、私は王子よりも理香ちゃんのしゃべり方と語彙力の方が気になる。まずその語尾を無駄に伸ばすしゃべり方をやめろ。


「へぇー。そんな完璧な人がいるんだー」


「あー!先輩王子のこと軽く見てますねぇ!ほんとに王子はすごいんですよぉ!ちょっと待っててください!」


そう言うと理香ちゃんはゴテゴテにデコってある最新機種のスマホをスイスイと慣れた様子でいじり始めた。そんなゴテゴテで重くないのか。


「ほらぁ!見てくださいっ!これが王子です!」

「っ!」


理香ちゃんの見せてきたスマホの画面を見て、思わず息をのむ。液晶には、確かに王子と称するに相応しいとんでもなくきれいな男の人が映っている。


「先輩?どうしたんですかぁ、固まって」


が、しかし、問題はそこではない。


「あ!もしかして、王子の美貌にやられちゃいましたぁ?」


そこには…、昨夜公園で出会った青年が映っていた。







「王子、かぁ…」


三つのバイトを終え弟を寝付けた後、寝そべりながら昼間のことを思い出す。

あの後、私が王子に惚れたと勘違いした理香ちゃんは、ご丁寧に王子――…朝霧飛鳥のことを事細かく話してくれた。話してくれた、というよりも、たぶん自分が王子の情報をたくさん持ってるということをひけらかしたかったのだと思う。


それにしても、イケメンで金持ちで文武両道ってどこの少女漫画のヒーローだ。そんな人生イージーモードな人この世にいるのか。私の生まれた境遇とは天と地くらいの差がある。


「はぁ…。お金…」


金がない。


溜息をこぼしながら何気なくテレビをつけると、なにやら修羅場らしき場面のドラマが映った。


『あなたみたいな卑しい身分の女が傍にいると、雅人さんの輝かしい将来の邪魔になってしまうの』

『っお義母様…』

『馴れ馴れしくお義母様だなんて呼ばないでちょうだい!!汚らわしい!』

『…っ』

『とにかく、雅人さんの傍から消えてちょうだい。もちろんただでとは言わないわ。私だって鬼ではありません。それ相応の対価は用意してきたのよ。中村!』

『はっ』

『!な、なんですかこれ!こんなにたくさんのお金…!』


「(金…)」


『ここに1000万あるわ。これで雅人さんから手を引いてちょうだい』

『っ!こんなものいりません!!!雅人さんの将来の邪魔になるのなら私だって潔く身を引きます。でも、こんなお金はいりません!私は雅人さんの為に身を引くのであって、こんなお金につられたからではありません!!お引き取りください!』


「(え、えぇぇぇえええ!!?1000万!!1000万だよ!?なんでもらわないの!?いらないなら私にくれ!!)」


『ふん!!どこまでも生意気な小娘ね!中村、行くわよ!』

『はっ』

バタン

『うっ…うぅ…、雅人さん…。さようなら…』


そこまで見てテレビを消した。主人公の女の子にイライラしてしまう。


「(なんでもらわないの!?どんなお金も金は金じゃん!世の中にはお金がなくて死ぬほど苦労している人がたくさんいるのに…。私とか…)」


1000万もあれば借金をすべて返しても釣りがくる。その後も数年は弟と二人で穏やかに暮らしていけるだろう。私だったら、絶対に突き返したりはしないのに。


……私だったら…?


「そうだ…」


これ、いいんじゃないか?

金持ちの男に近づいて、恋人になって、手切れ金をもらう…。


「いい!これいいじゃん!」


あ、でも金持ちの男なんて周りにいないわ…。毎日毎日バイト三昧だし…。

ていうか、私に男をひっかけられるほどの手練手管はない。経験も胸もない。金もない。


無理じゃん…。

あまりにも穴だらけな計画すぎた。


「はぁ…。金持ち…金持ちぃ…はぁぁぁ」


ん?金持ち…

そういえば最近その単語を聞いた気が…、そう、最近、めっちゃ最近…



あ!!!!




「朝霧飛鳥!!!」










主人公はちょっと(?)性格歪んでます。あとちょっと(?)アホ。

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