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「さて、と。じゃあ出発するね。シートベルト付けた?」
「あ、はい。大丈夫です」
私がそう言うと、朝霧飛鳥はエンジンをかけかっこよくハンドルをきった。いやー、イケメンは何やっても様になるね。うらやましい。
ポツポツと他愛ない話をしながら走り続けること数分。車は都心の高級ホテルの地下駐車場で止まった。
...いやいやいやいや。まじ?
確かに王子のオススメの店とは言っていたけれども。私にはあまりに敷居が高くないか?今日着てる服、近所の古着屋のバーゲンで買ったやつだよ?こんな格好でこのホテル入ったら、あまりにも場違いすぎるでしょ。公開処刑...
呆然とホテルを見上げることしかできない。
「どうかした?ここじゃ気に入らなかったかな?」
私の表情から嫌がってると思ったのか、王子は少し眉根を下げ、申し訳なさそうに聞いてくる。
「そんなことありません!ただ...私のこの格好で大丈夫なのかな、って心配で」
っていうかホテル側に嫌がられそうだわ...。追い出されたらどうしよ。
「なんだ、そんなことを気にしていたの。大丈夫だよ、個室だから安心して」
個室!さ、さすが金持ち...。
「それに、今日の格好も可愛いよ。みゆちゃんはどんな格好しててもとっても可愛い」
「!!?」
な、ななな、何を言ってるんだこの人は!不意打ちすぎる!やばいやばい、絶対顔赤くなってる!そうゆうの免疫ないんだからからかうのや〜め〜て〜!
「さ、行こっか」
顔を真っ赤にしてあたふたしている私を見て小さく笑った後、王子はエスコートするように私の腕と腰を優しく引いた。
エレベーターで20階まで上がると、扉が開いた先にスタッフさんがいた。
「朝霧様、お待ちしておりました。いつもの席をご用意してございます」
「ありがとう。みゆちゃんこっち」
「は、はい」
高級感溢れる空間に怯みながらも、なんとか王子について行く。
一際豪奢な扉を開け中に入ると、生まれて初めて見ような、ここはどっかのお城かってくらい煌びやかな空間だった。お、落ち着かないんですけど。
前菜やらメインやらスープやらパンやらが順々に運ばれてくる。そのどれもがとんでもないくらい高級なモノなんだろうけど、もはや緊張で味なんてよく分からない。
なんとか食べ終わり、朝霧飛鳥に家(と偽ったマンション)まで送ってもらった。
朝霧飛鳥がなんか色々言ってた気がするけど、食べるのに必死でよく聞いてなかった...。
っていうか、もう、...無理じゃね?
今日一緒にいて、朝霧飛鳥とは生きている世界が違うと嫌という程感じた。こんな男を惚れさせるとか、無理。無理だ。
「楽しかったね。また一緒に出かけよう」
朝霧飛鳥は爽やかに笑ってそう言ったけれど、ろくな反応も返せなかった私といて楽しかったわけがない。絶対社交辞令だよね。
「はい、ぜひ...」
そんな日は来ないだろうけど。
「ほんと?じゃあ明日も一緒に遊ぼう?」
「え」
「だめ...かな?」
え、ええ!?マジか...。社交辞令じゃなかったの!?
「いえ!大丈夫です!明日オッケーです!」
「そっか、よかった」
...分からない。こんな私と一緒に遊びたがるなんて、一体何が目当てなんだ。美人に飽きたとか...?たまには珍味も食べてみるかって感じなのか?
でもまぁ好都合っちゃ好都合。よし!これをチャンスにがんばるんだ!
明日がんばるぞー!!




