8円 仲間と
「ジャーン!罰ゲームはこれです!」
「うげっ!それはないよー!タケちゃん!」
なにやら猛がエビ煎に何かをサンドしてある物をかざしている。
「うわー!不味そう!」
ユウキが言うとタカもニヤリとして頷いた。
メンコで対戦して負けた吉彦は罰ゲームを受ける事になったらしい。
今はもう発売していないが、梅ジャムと同じ10円でオレンジジャムがあった。
ちょうど梅ジャムと同じくらいの袋に入っていた。
それをあのエビ煎に塗りつけ、さらには…。
「酢ダコさん太郎とうまい棒めんたい味を挟みまして、さらにヨーグルで仕上げました!猛スペシャル!」
時に少ないこづかいにも関わらず、こうした無駄な事をする…。
中でも不味い組合せでオ●オとオレンジジュースを同時に食べる。
ユーホーカステラに甘いか太郎
ブタメンにねるねるねるね
うまい棒めんたい味とコーヒーなどがある。
いつもの公園で悲惨な宴が行われてていた…。
吉彦は震える手でタケちゃんサンドを口に!
「ぐあ!まず!」
ギャハハ!
予想通りのリアクションにみんな爆笑した。
「こらー!ワルガキどもー!」
その声に振り向くと綾葉がいた。
「おう!神楽!」
猛が吉彦の肩をむんずと掴まえ、歯を剥き出しにして笑った。
「あなたたちは、なにをしてるのかしら?」
「罰ゲームさ!」
タカが言う。
「おもしろそうね!でも、それはここまで、口直ししない?」
綾葉が得意満面な顔をした。
そしてヨーグルを鞄から取り出した。[10円のヨーグルトを模した食べ物。]
「なんだよ。なにを始めるかと思えばただのヨーグルじゃんかよ!」
猛が不満そうにいう。
「まあ、待って。」
綾葉はそれに何かを入れてかき混ぜた。
「さあ、召し上がれ!フフ…。」
やや、警戒気味にユウキがひとつ手に取った。
「あれ?黄緑だ。中、色がついてる。」
「こっちはピンクだ!」
タカも驚いた様子。
続いて猛や吉彦も。
ユウキが一番に口にした。
「これは!うまい!うわっ!」
綾葉はひとつ10円の粉ジュースを出すと
それを皆に見せた。
「なるほど!それかあ!」
吉彦が感心した様に頷く。
それから綾葉はバッグから紙コップを取り出すと、それをベンチに並べておいた。
「ちょっと贅沢品よ。」
紙コップに粉ジュースのメロンソーダ味を入れ、30円のビニールチューブに入ったドリンクを注いだ。
スポーツドリンク味だった。
その上によく練り込んだヨーグルを乗せた。
「なんちゃってクリームソーダの出来上がり!」
綾葉が満足そうに笑う。
「すげー!」タカが叫んだ!
タカはそれをイッキに飲み干した!
皆の満足そうな顔を見つめる綾葉は何処と無く寂しそうだった。
どこか弾けきれてない様に…。
こないだのタカの一件なのか…。
ユウキは聞けずに綾葉の横顔を見つめていた。
なぜか、この仲間と楽しい時間をいつまでも過ごしたいとそう思った。
「そうだ!」
タカが突然叫んだ。
「来週末、花火大会だよ!お花畑商店街の!」
タカは珍しく無邪気に言う。
「でも、あれって凄い混んでて歩けないって。」
ユウキが言うと猛が吉彦を指を指した。
「へへっ!こいつの家さ!」
吉彦の家は屋上があって、少し遠いが、そこから商店街の花火大会は一望出来た。
「じゃあ、バーベキューなんかやりながらなんてどうだい?」
吉彦が鼻高々に言う。
「おっ!いいね!」
タカが興奮気味に言う。
「楽しそう!私も参加させてもらうわ!」
良かった…。
綾葉が笑った…。
「決まり!」ユウキも興奮して叫んだ。
夏祭り、花火大会、縁日、色々な事に興奮し、全身で力の限り遊んだあの日。
沢山の楽しい事が待っていた毎日。
仲間と過ごした日々は色褪せない。
携帯電話やスマホ、パソコンなんて想像もしなかったあの頃。
情報は自分達で知り、調べ、そして学んだ。
不思議な事、未知なる世界、希望に満ちた未来。
ユウキ達もそうして大人になっていく。
まだまだ、遊び足りない彼らともう少し、お付き合い下さいませ。