6円 ラーメンコ?
パチーン!
ペンッ!
スパーンッ!
コンクリートの地面を叩く音が町中で聞こえるのも、珍しくなかった。
男の子のブームは数知れずあるが、学校側も持ち込みを禁止しなかった玩具[めんこ]
メンコ、面子ともいう。
こどグルではメンコとしましょうか。
メンコには大きく二つの種類があった。
長方形の角メン、円形の丸メン
何れも、表面にはカラフルな漫画の絵や特撮物の写真など、その種類も多数だ。
絵でトレーディングカードのように集めるだけでも楽しい。
一人から何人でもプレイできる優れものだ。
カードの裏には色々と書かれていて、サイコロマーク、野球の判定、軍艦から飛行機、将軍、大佐などの階級など様々なデザインが一枚に書かれている。
これを使えば、遊び幅が無限である。
正直、今のトレーディングカードより奥が深い。
先ずは公式のルールだが、場所はどこでもよい。
公園の砂場、家の座布団の上、アスファルト、土や芝生。平面があればどこでもよい。
プレーヤー人数を二人として説明すると
先ずは常識的には持ち寄るカードは角メンの勝負なら角メンで統一する。
たまにゲーム性より、楽しさで丸VS角もある。
基本、じゃんけんで順番を決めるか、裏に表記されたじゃんけんマークで順番をきめる。
じゃんけんで負けたプレーヤーは地面に自分のカードを置くのだ。
勝った方のプレーヤーは場にあるメンコに向け、叩き付けるように場に出す。
目的は置かれている相手プレーヤーのメンコを風圧などで、裏返しにする目的だ。
裏返しに出来れば、相手のメンコは裏返しにした者が貰ってよいという、苛酷なルールである。
もし、裏返しにならなかったら、場に置いていたプレーヤーが裏返しにするために投げる番になる。
これを繰り返しやるという、単純なようでかなり奥が深いゲームなのだ。
投げ方や当て方、角度や風、力加減など計算をしてやらなければ、ただ投げるだけでは勝てないのだ。
もう1つの楽しみがある。
それは…。
「すげー!タカくん!」
「えへへ、一等だぜ!」
店により、ルールは違うがメンコの裏には当たりハズレがある。
メンコは何枚か一組で売られ、中は見えないように紙の袋に入っている。
この紙の袋が束になってタヌキの台帳みたいに重なって一冊の本の様になってぶら下がっている。
これを一回20円だったか?で、紙袋を引き抜く。
メンコの裏に赤い判子で特賞から3等までが押されている。
「はい、一等はこれだよ。」
綾葉のおばあさんに渡されたのは巨大な丸メンだった。
大体、普通の角メンは名刺サイズほどだ。
しかしながら、こいつはその7、8倍はある。
我らが人気漫画のキン内マンの絵がデカデカと描かれている。
だが、なぜかこういったものの絵は
名シーンではなく、なんだかわからない場面のチョイスが多い気がする…。
いつもの様にタカとユウキが駄菓子屋にいた。
そんなこんなでタカが喜びに浸る中、猛と吉彦が現れた。
「よぉ!タカ!」
「もしかして!一等かい?」
猛が勇ましく入ってきて、吉彦はそれに続いて待ちきれんばかりに、タカの持つメンコに注目した。
「なんだ?一等かよ!俺は特賞を持ってるぜ!」
猛が自慢気に言う。
タカかまちょっとムッとしたのがユウキにわかった。
「じゃあ、今度みせてみろよ。」
「いいぜ!なんならよ、特賞と一等のメンコ勝負ッてのも悪くないな。」
猛が挑発的に話す。
そんな二人のやり取りを他所にユウキはメンコを買う。
慎重に選んだ袋を開けると!
「うわっ!二等だよ!」
ユウキがつい叫ぶ。
その声に二人の悪い雰囲気は消し飛んだ。
「マジで!」
吉彦が羨ましそうに言う。
「すげー!」
タカも興奮気味に言う。
しかし猛だけは…。
「なんだ、二等か。ユウキらしく控えめの二等!お似合いだな!がはは!」
「うん!うれしいよ!」
しかしながら、ユウキの喜びには猛の嫌味も通用しなかった。本来穏やかなユウキらしいといえばらしい。
まあ、彼のいいところだ。
「ねえ、これからメンコやらない?」
吉彦がいつもの甲高い尖った声で言う。
皆はそれに賛成し、15分後に裏の公園に集まるのを約束した。
皆、自慢のメンコを取りに帰った。
綾葉のおばあさんは、にこやかにそれを見つめていた。
公園についた一番は猛だった。
距離的には一番遠いが、両手に抱える段ボールに沢山のメンコが入っていた。
次にユウキがきた。
ユウキは輪ゴムで束ねた1つだけ。
彼は激しい遊びを好まなかったため、あまりメンコは買った事がなかった。
しかし、今はタカや猛、吉彦と遊べる喜びで一杯だ。
「なんだよユウキ?お前、情けねえな!」
猛がユウキのメンコを見て笑う。
「あ、ああ、うん。」
ユウキは元気なく答えた。
すると猛が意外な行動に出た!
「服捲れ!」「え?な、なんで?」
「早くしろ!服をこうして捲れよ!」
猛が強引にユウキの服を捲る。
イジメられていた過去を思い出す。
「早くしないと、あいつらがくるだろ!」
「あ、え?」
猛が自分のメンコの箱の中に無造作に手を入れて、鷲掴みにしたメンコをユウキの捲った服にのせようとした。
「こぼれる。ちゃんと受けとれ!」
ユウキは猛の意外な行動に唖然としていた。
「大事につかえよ!やるからよ!それ!」
お世辞にも綺麗とはいえない年期を感じるメンコの数々。
猛の気持ちが嬉かった…。
「ケンカばかりしてたな。だけど、俺は吉彦と二人がかりで卑怯だった。こんなんで許されるとは思ってねえ、ついた心のキズは中々消えない。だけど、もうユウキとは仲良くやりてえんだ。な?」
猛の言い方が好きだ。
一見、ぶっきらぼうで乱暴な言い方だ。
謝ってもいない。
しかし、イジメを[ケンカ]とあえて言った。意識して言ったのだ。
そう発言するには勇気がいる事だ。
間違って捉えられたら、余計に仲は拗れる…。
ユウキの中の男の部分、プライドをキズつけない。つまりは弱者として見ない。
あくまで対等とした言葉だった。
イジメていての責任のがれの言葉などではないのが彼の態度から伝わる。
ユウキはニッコリ笑い、その反面、猛になにかされるのでは?と警戒した態度を悪く思った。
「猛君、ありがとう!」
「いや、いい。それより、タカの実力が未知数だ!奴と勝負のは初めてだからな!」
「おーい!タケちゃーん!」
吉彦が現れた。彼は何冊もファイリングされたメンコアルバムを持ってきた。
彼らしい…。
「なんだよ!そんなに!」
猛が吉彦の持ってきた一冊を乱暴にとる。
「あ、待ってよ!タケちゃん!それはすごいレアな昭和30年代の!ユウキに見せるために持って来たんだよ!」
吉彦の理由がたとえ、自慢でもユウキは自分の趣味嗜好を共用しようとしてくれる気持ちが嬉しかった。
ザン、ザン、ザン…。
公園の砂利を勢いよく踏みしめながらタカが現れた。
座蒲団くらいの巾着袋を持って。
・
・
・
「なあ、始める前によ。なんか食わねえか?」
タカが取り出したのは、袋入りのラーメンだった。
「え?お湯も鍋も器もないのに、どうするの?」
ユウキがタカに突っ込みをいれた。
「安心しろ、皆の分もある!」
片手で食べられるラーメンモチーフ菓子は後に「ラーメンばあ」や「ガリボリ」など登場した。
まあ、これらはまた次回に説明するとして、今回は親に怒れる可能性を秘めた危険なグルメだ。
まず、袋入りのラーメンを家から拝借。
チャルメラやサッポロ一番など、粉スープのついたインスタントラーメンを用意します。
ここでチキンラーメンはご法度です!
なぜならチキンラーメンはお湯を入れる想定で作られていて麺自体に味付けがしてあるが、非常に味が濃いため、全部食べるのはキツい。
喉が大変な事になる。
まず、インスタントラーメンのスープを袋の中にぶちまく。
約、3分の1ほどが良い。
いきなり全部入れてしまうと味がキツすぎるのでダメだ。
この袋の中でラーメンを少しだけ砕いて、シャカシャカと振る。
そして、袋の開け口から少し指でスライドするように出して食べる。
手を汚さず、片手で食べられる。
もし、味が薄かったらスープを袋に足してやるとよい。
ありがたいことにスープの袋は口を折り曲げておけば、もれることがない。
そっとポケットに忍ばせておける。
まあ、あまり美味しいものではないが、昔はかなり美味く感じた。
タカ、毅、吉彦そしてユウキは日が暮れるまでメンコに夢中になった。
メンコの表側
アニメや芸能人から車や特撮物やらなんでもあり。
昔の裏側
色々なゲームができる。地域によって遊び方やルールが違う。
一等のメンコ。交換したらマジックインキで消される。
二等の当たり
※資料提供者
おもちゃdoctor