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子供のグルメ  作者: 原作 晶(あき) キャラクターデザイン・構成 榊 凡太 文章 麦巻 橙
4/8

4円 個性焼き

「神楽の店でも〈もんじゃ〉はできるのか?」


タカはそう言うと口にココアシガレットをくわえた。


「当然よ!では今日、おばあ様の店で待ってるわ!」


綾葉の後ろ姿を見送ると、ふいに猛が現れて恥ずかしそうに言う。


「あ、あのよ、タカ。俺も行っていいか?」


「あ?ああ、好きにしなよ。」


簡単に言うタカに小さくガッツポーズをする猛。


まあ、タカにとって都合の悪い話しではないから当たり前の反応だ。


放課後、タカとユウキそして、猛と吉彦はいつもの駄菓子屋に集まった。


綾葉のおばあさんがすでに、もんじゃの用意をしていた。


「いらっしゃい。」


おばあさんはニッコリと笑った。


吉彦がいきなり上ずった声で手土産を渡した。


「あ、あの、いつもお世話になってます!今日、1日よろしくお願いいたします!」


タカもユウキも唖然としていたが、一人猛は気に食わない様子で吉彦を睨んでいた。


ここで、もんじゃを知らない人に説明しよう。


小麦粉を水に溶いたものにソースと出汁などで味をつけ、キャベツなどの具材と混ぜて焼く食べもの。


下町庶民のおやつである。


お好み焼きよりはるかに水分気が高いため、ドロリとしたやわらかい食感がたまらない!


それから…


タカが冒頭でくわえていた、ココアシガレットについても説明しよう。


タバコを模したパッケージデザインの

スティック状の白い菓子。


ラムネよりはるかに固く、ココアの味のする菓子。


大人しく座っていたユウキ達だったが、綾葉がこないのを少し不安気に思いはじめた。


そんな中、猛が口を開いた。


「あの、おばあさん。神楽は?」


綾葉のおばあさんはちょっと寂しそうな顔をして言った。


「綾葉は病院に行っておる。終わったら来ると思うがね…。」


猛が更に聞こうとしたのを吉彦が制した。


ちいさな声で二人が揉めている。


「だって、気にならないのかよ?」


「タケちゃん、そう言うのは、話してくれない限りは聞かないのが常識だよ!」


「じゃあ、俺が常識はずれだといいたいんか?」


そんなやり取りが続く中、ユウキが口を開いた。この雰囲気を何とかしたいと考えたのだろう。


「あのさ、このもんじゃのタネにあとはべビースターを入れてさ…。」


「違うわ!若園君!」


「か、神楽さん!」



皆が心配する中、現れたのは綾葉だった。


「いい?皆!若園君がヘビースターを入れると言っていたけど、良く考えて?」




「考えるって?」


ユウキが少しひねた様に言う。


「そう、私達のお小遣いは限られてるのよ。このもんじゃのタネはトータルで50円なの。1つの物にしては高額よ!」


タカが頷いて、綾葉のつづきを続けた。


「うむ、ユウキの考えも悪いわけではない。しかし、タネで50円、ヘビースターで30円、しめて80円。これはどうだろう?」


「残金は?君達はそんなに小遣いがあるのか?100円でより豪華に!そう、ここではラメックを!ラーメンは10円ですませるのだ!」


「他にはラーメン屋さん太郎。この辺りも捨てられない。」


※ラメックは現在発売されてません。

当時の10円ラーメンを模した菓子である。


「そ、そうだね。」


ユウキがやや、押され気味に応えた。


「確かに神楽とタカの言うとおりだな。おれはメイン具材にイカの姿フライ30円を入れて100円にする。」


と猛が続く、すぐに吉彦も続けた。


「僕はイカそうめん20円とラーメン屋さん太郎とラメックのブレンドを入れる。残りの10円はチーズおやつさ!」


「皆、それぞれ良いチョイスね!私はラメック、イカの姿フライで佐伯君と同じね!」と綾葉が言うと猛はニヤニヤして喜んだ。


「俺はキツめにガッツリ、どーん太郎10円。和風出汁のきつねうどん風の味がよくマッチする。それとヤングカルパスは外せない。そして決め手はタラタラしてんじゃねーよ!30円!すこし辛めの大人味さ。」

とタカが自信満々な顔をして言う。


※ヤングカルパスとはサラミ、ドライソーセージの小さいやつである。


チーズおやつは同じく10円の小さなチーズである。


「かなり個性的ね!」綾葉が嬉しそうにそれに答えた。


皆がユウキの方を注目した。


「僕は…。」


「無理に個性を出さなくていい。ここは1つラメックで手を打ってみてはどう?」


綾葉が言い聞かせるように言う。


「僕は…蒲焼きさん太郎を細かくして、あとは海老せんだ!」



おおっ!


皆が驚く。




こうして決まりのない自由な発想と低価格な御馳走。


今のおしゃれな店で食べるもんじゃではない。


あくまで駄菓子屋さんのもんじゃ。


これが私達の常識だった。







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