1円 タカ&ユウキ
昭和50年代から平成の初年位まで
まだ当時の話し
[鍵っ子]と呼ばれる、両親が日中家に居ない家庭[共働きや、母子あるいは父子家庭]はまだ、珍しかった。
家族のスタイルが違う近年は当たり前のようになってしまった。
タカくんの胸元に光る鍵は、そんな時代の象徴だ。
この時代は原作やテレビの中でではなく、オリジナルなキャラや商品に力と勢いがあった。
後々になって、少年誌に連載されたり
テレビアニメになったりが当たり前にあった。
良い例はシール付きの菓子だ。例をあげたらきりがないが、代表格のビックリマンや、玩具で言えばミクロマンや、ダイアクロン、マシンロボなど。
メーカーオリジナルのキャラ達が溢れていた。
玩具メーカーのタカラ[現在のタカラトミー]でも、当時の超合金とよばれるロボット玩具などに並び、オリジナルのストーリーのあるロボット玩具があった。
説明書とは別でストーリーの書かれた小パンフがついていたり、設定などが細かくされていて、力の入れようはすごいものがあった。
これを見てワクワクして、子供は脳内で自分だけのストーリーを作り上げ遊んでいた。
そんな時代の主役達を完全に登場させれのは難しいですが今回、タカ&ユウキと一緒に当時の楽しさを駄菓子屋や玩具を通じて感じていただけたらと思います。
2016年某日 榊 凡太
子供のグルメ
原作 晶
キャラクターデザイン・構成 榊 凡太
文章 麦巻 橙
僕とタカくんの出会いは駄菓子屋だった。
「まてっ!コノヤロウ!」
僕は体が弱く貧弱な少年だった。
この日もイジメっ子らに追いかけられていた。
逃げ込んだ先が駄菓子屋の裏にある
空き地。
横倒しになった土管の中にもぐり込んだ。
息を潜めるも、イジメっ子らはすぐに僕の居場所を見つけてしまった。
「バカな奴だ!」「あの中だな!」
少し離れた所から声がする
「ひゃははッ!今、出てきたら何もしないぞ!」
やられるのは何時の事、ならば言う事をきいて怒りを買わないほうがいい。
僕は仕方なしに土管から頭を出すと、バラバラと頭に何か粉が降り注ぐ!
「何してるんだ?お前?」
見上げると、太った男の子が座ってお菓子を食べている。
粉はこの少年のお菓子の食べかすだった。
そのやり取りの場にあらわれた例の二人組。
「なんだ?デブ!お前も仲間か?」「用のないやつは失せな!」
二人が上にいる少年に絡み始めた。
僕はそのやり取りを情けなく、びくびくとしながら、あわよくば彼等の標的が太った男の子に向けばいいと考えていた。
太った少年は10円の菓子、うまい棒[明太子味]を握りしめ、二人組に近づいた。
そしてビニール包装をビリビリと破くと
中身を口にくわえた。
筒状のコーン菓子は鮮やかなオレンジ色をしている。
イジメっ子の一人、リーダー各の子、猛[たけし小5]に向いた。
次の瞬間、猛が悲鳴をあげて目を擦っている。
「う、うわ~!目が!」「たけちゃん!」もう一人の吉彦[同じく小5]がリーダーをやられて、震えていた。
すると、太った男の子はヒモにぶら下がるピンク色をした三角の飴を取り出した!
ヒュンヒュンヒュンッ!
飴をくるくると回し始め、いきなり!
ガツーンッ!
吉彦の頭にヒットした。
「ギャー!いてェっ!」
目をやられた猛は回復し始めたが、次にまた飴を頭に食らう!
がチーンッ!
「ぎぬああッ!」
二人は堪らず、退散していった。
「ありがとう!」
「お前、名前は?俺は加藤隆敏小5だ!」
「僕は若園ユウキ、小5。」
同じ、小5なのに見た事がなかった、
加藤君にその事を聞きたかったが、ユウキが話し出すのに躊躇しているとニヤリと笑い。
「よろしくな!明日から桃山小に転入なんだ!」
「うん!よろしく!加藤君!」
「前の学校じゃあ、エレベーターアクションのタカさんって呼ばれてた。だから、タカでいいよ!ユウキ!」
エレベーターアクションのタカさん…。
痛いな。
ファミコンの名作ソフトだ。
「じゃあ、タカくんって呼ばせてもらうよ!」
「それから聞きたかったんだけど、さっきは何をしたんだい?奴等、あっという間に撃退しちゃったけど…。」
ユウキが後半急速に小声になる。
それも無理もない。奴等にはイジメられていて、それを今日知り合った人に見られた挙げ句、助けられたのだから…。
「ああ、あれか。あれはうまい棒の粉カスを吹きかけてやったのさ。」
「明太子味は目に入ると相当痛い。あの、筒のまん中の穴をフーッて吹くと中の粉が噴射される。」
「それから、あとは飴モーニングスターだ!ヒモ引き飴を振り回して、飴を叩きつけた。あれは一撃必殺だ。でも、食べられなくなるから、あまりするな。」
※いずれも危険ですので、決してやらないで下さい!
タカくんは得意満面に話した。
「それより、腹へったよ!なんか買いにいこうぜ!」
さっきまで食べてたのに…。
タカくんの胸元にキラリと鍵が光る。
家の鍵…。
「早く!ユウキ!」
1986年 昭和61年のとある日だった。