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プロローグ

な、なんだこれは。

この力はどこから湧いてくるんだ。


軽く力拳をつくると、うっすらと拳を包む液体の様なものがみえる。

その拳を振りかざすと分厚い大岩すら破壊できた。すさまじい音と共に。


今度は思いのまま念じてみる。

その液体の様なものは剣に変形する。

サッサと振り回すと、周りの岩はキレイに真っ二つになった。今度はスパッという音と共に。

すごい力を手にいれた。

俺はこれで世界を、この汚れた世界を救える力を得たんだ!!




「チュンチュン」

緑の小鳥が朝を伝える様に鳴いている。



「ん、んあ?」


「あっ朝か。あーー。。。」

何かの夢を見ていたはずなのに、覚えていない。

すごいいい夢だった様な、悪い夢だった様な。

覚えていないが少しの高揚感は身体に残っていた。

それが男性特有の朝に起こるものかどうかは判断がつかなかった。


時間を確認する。

お昼の13時を過ぎた頃だった。

お腹が空いたので、一階のダイニングへ降りる。

俗世間ではブランチと言うが、俺にはただの昼飯だ。

そんな昼飯は今日は作ってくれてないみたいだ。

たまにオカンが飯を作って机の上に置いておいてくれている事もあった。


ニャ〜という声と共に猫が寄ってきた。

我が家で飼っているオリエンタルという品種のメスだ。家に来て3年になる。


「なんだ、アスナもまだご飯食べてないのか。」

猫用の餌を取り、ザラザラと音をたてて、お皿に注いだ。

凛々しい顔つきが特徴の猫だが、意外と人懐っこかった。

そして食べ方はあまりキレイとも言えない。勢い余って皿からよく食べ物をこぼすくらいだ。


「さて、今日は何をしようかな。」

毎日昼過ぎに起きては、特にやることもなく、ダラダラする事が多かった。

概ねネットに時間をつぶし、月額1,000円程度で見放題のオンライン配信の動画を見たり、

極稀に散歩をしたり、寝たりの繰り返しだ。


いつからこうなったんだろうと思う時がある。

決まって思い出すのは会社を辞めた時だ。あそこが俺のバッドターニングポイントだと思っていた。

いちお大学を卒業して、いちお会社というところへ就職した。

特にやりたい事があったわけではない。

ただパソコンが好きという理由から、消去法的に SystemEngineer という職業についた。

大学は理系だったが、プログラム講義の単位を落とすほど興味は薄かった。それも原因だったのかもしれない。


入社後、早速別の会社に売り飛ばされる。ドナドナとはよく言われたものだ。

もちろん大学のプログラム講義を落とすほどの俺だ。いきなりプログラムを組めだなんて言われても組めるわけがない。

叱られる。凹む。また叱られる。また凹む。もっと叱られる。もっともっと凹む。


「やめます!」

と言えたのは、入社して半年が経たないくらいの時期だった。

周りからは根性なしとレッテルをはられていたがどうでもよかった。いや、実際はどうでもよくはなかった。

ただ、もう怒られないという安堵感からそんな蔑まされる言葉なんて怖くなかった。

しかし身体は意外とダメージを受けていた様で、流行りのうつ病と診断される。

休職する事もなく、すぐに退職した。


親に謝る。親は優しく迎え入れてくれた。

これが何より嬉しかった。その日は号泣した。

オカン曰く、

 ”仕事はまた探せばいい。病気になって最悪自殺する人もいるんだから、

  また気持ちが落ち着いたらゆっくりとまた始めたらいいんじゃない。”

ここでも号泣した。

どんな事があっても、親は俺を見捨てない。

捨てて欲しいとは思わないが、その優しさにすがって生きている。

”いつまでもあると思うな親と金”ということわざが嫌という程、耳に突き刺さる。

いや実際は聞いていないだから、脳に刺さるとでも言うのだろうか。



だが、こんな優しい親のおかげか、自分自身の弱さが原因か俺は再就職をできずにいた。

実際は、できないというより試みてもいなかった。

毎日、ネット・動画・ダラダラ・寝るの繰り返しだ。

生きている意味なんてわからない。いやもう意味も考える事もなくなった。

昔あった哲学的な要素はもう毎日死別する脳細胞と共に消え去った。


そして、今日もダラダラ過ごした後、ベットに潜り込む。

簡単には寝付けない。疲れていないからだ。

睡眠薬を口にする。20分後くらいだろうか、少しボォ〜っとする。

この時に歩くのが俺は好きだ。まるでヤク中の様な感じがするからだ。

実際には麻薬には手を出していないからわからないが、なんとなくそんな気がした。


睡眠薬が完全に効き始めた頃、やっと眠りにつく。

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