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即興overture
彼女は無口な人だ。
クラスでも探さないと、何処にいるか分からない。
いや、自分の席にいるのだけれど、存在感が希薄なのだ。
それでも友達がいない訳ではないようで、小さく笑う彼女の姿を何回か見たことがある。
その数少ない笑顔が印象的だった。
それに僕自身、決して目立つ方では無い。
当たり障り無く、そこそこの友人と馴れ合いながら過ごしてきた。
それが当たり前の日々。
彼はどこにでもいるような人。
どのクラスにも、彼のような人はいる。
取り立てて目立つ事も無く、かといって孤立しているわけでもない。
いつもおだやかな微笑みを浮かべて、皆と接している。
誰とでもそうできるのは、ある意味で羨ましいとも思える。
私は、そんな風にすることが出来ないから。
無口で愛想の無い私に話しかける人なんて、ほとんどいないもん。
そう、思ってた。
ほんの些細な気まぐれ。
そこから日常が変わり始める。
その音はたしかに響き、心のどこかに干渉してくる。
いくら心に膜を張り、壁を作っても、その音は響いてくるんだ。