通学電車
いつもの通学電車。
ぼくはニ人席で、綺麗な女性と向かい合って座っていた。
ああ、かわいいな。
こんな人と相席するなんて、ぼくはなんて果報者なんだ。
ドキドキと胸を高鳴らせながら、しかし視線が合うと気まずいので景色を眺めて目的地に着くのを待った。
外では雨がやんでいた。
ニ、三駅を通りすぎるとその女性は眠ったようだった。
そうっと正面を向いてみる。
彼女はまちがいなく眠っていた。
やった。窓をみてると首が痛くて大変だったんだ。
ぼくは顔を正面にやったが、またしても問題が発生してしまった。
へんに視線を戻すと、吊革に捕まっている女子高生と目があってしまうのだ。
人間万事塞翁が馬。好事魔多し。といったところか。
ぼくは終始、横を向いたままで居続けた。
電車は終点にさしかかった。乗客がどんどん降りていくなか、正面の女性は眠ったまま起きる気配がない。
これは起こすべきか、それとも起こさぬべきか。
ぼくの脳内は、起こすor 起こさないで議論が白熱していた。
起こそうか、起こすべきだよな。
でもなんて声をかけたら良いんだ?
うわー、やっぱり無理。
恥ずかしい。
けど、どうしよう。
一人であれこれ戸惑っていると、女性は都合よく目覚めてくれたようだった。
ぼくのことをいぶかしげに見つめてから、下車してしまった。
「…………」
傘わすれてますよって、言うべきか。言わぬべきか。どうすれば良いんだ?
ぼくは彼女の忘れ物に気づいたせいで、またもやモヤモヤすることになってしまった。